人気ブログランキング | 話題のタグを見る

知らないうちに世の中は変わる

俺の母親は、親父が亡くなるまではほとんど住んでいる市内から出ない人で、電車に乗るのは数年に1度という割合だった。
昔は現金で切符を買い、改札ではさみを入れてもらって乗っていた。
あるときからオレンジカードという物が出たので、それを買った。
ところが、ちょっとしたら自動改札にイオカード、ということになっていて、そしてその次に乗るときはスイカでタッチアンドゴーだ。
改札の通り方が乗るたびに変わっているのだ。
毎日のように改札を通り、システムが変わることになれている俺にはどうってことないのだが、電車に乗るたびに改札の前でおろおろしなければならない母親には世の中の変貌はすごい負担らしかった。

自分でも気がつかないうちに意識って、変わってきている。

<ウイルス流出>大阪電通大大学院生に有罪判決 京都地裁

<虫男>女性の体触った筑波大院生、暴行容疑で逮捕

さて、この2つのニュースには共通していることがある。
適用された刑罰と、やったこととがちょっとずれてるような感じがすることだ。

前者のウイルス君は、ウイルスを流したことが問題なのに、適用されたのは著作権法違反と名誉毀損。逮捕時なんて、著作権法違反のみの容疑だった。
著作権法違反はウイルス中にアニメ画像を無断で使用したからだし、名誉毀損は同級生の名前や顔写真が表示されるようにしたから。
でもどっちもウイルスそれ自体とは関係ないよね。
一方の虫男は、女性に「触った」のに「暴行」。
ま、触るのと殴るのは、程度の問題だから、暴行といっても嘘じゃないけど、
ふつー、こーゆー場合、「わいせつ」とか「迷惑」とかがつく罪が出てくるもんだ。
なぜに「暴行」?

答えは、両方とも、直接に行為を処罰する法律がないから。
ありそうな感じがするのに意外とないのは、実は両方とも、最近になって処罰感情が生じてきた行為だから。
ウイルスについては、特定のコンピュータに向けられたものならともかく、作成、頒布自体を直接処罰する法律がない。
おさわりについては、逮捕の対象となった行為が個人のアパートの玄関先で行われたため、公然性が要求される公然わいせつとか、迷惑防止条例が適用されず、かといって、強制わいせつになるほどの強い暴行は使っていない。
しかし、両方とも「法律がないから」と放ってはおいては世間が納得しないので、とりあえず使えそうな法律を見つくろって適用させてタイーホしたのだ。

虫男の方は、路上でもやっているようなので、後でそっちの容疑を固めて刑法犯なり迷惑防止条例なりに切り替えるだろう。
いわばつなぎとして暴行を使っているから、適用法律が全くないウイルス君とは別の使い方なのだが、それでも路上であろうと玄関先であろうと、女性の胸に触る行為は処罰されてしかるべきだ、という考え方は社会にかなり浸透していると思う。
で、それは多分「性的自由」というよりも「プライバシー」という観点から考えられていると思う。
プライバシーに関する考えは、個人情報の保護の必要性が言われるとともに近年急速に変わってきている。
これというのもネットによる情報流通の発達のおかげであって、
んで、ウイルスはネット社会に関する領域の話なのだ。

つまり、ネットの発達が社会の意識を変え、法律はまだそれに完全には対応していないのだ。

対応しきれていないのは国会のせいとばかりもいえないのだが、とにかく、対応できる法律がないのなら、現場は今までの道具でやりくりしなければならない。
おかげでなんか変な感じに見える捕物帖になるわけだ。

自分でも気がつかないうちに意識って、変わってきている。
Commented by saka_hama at 2008-05-18 20:13
こんばんは。
昨年の「個人情報保護法」以来、仕事がしにくくなりました。
病院から用事でほかの病院にかけるなんて、コテコテの個人情報だから、それを「個人情報なので教えられない」と来た日にゃ仕事にならない。
尼崎のJR事故の時、ある病院がどっかの公的機関の問い合わせに対して「個人情報なので」といって情報を出さなかったために、実態把握が遅れたかなんか、そんな事も聞きました。

ところで、どちらかというと日本人は、西洋人が「神が見ているから悪事をしない」と言うのとは違って、「他人様が見ているから悪い事はしない」という民族だったのが、「プライバシーだから見ないで」と言い出したら、よけい悪い方向になっているような気がします。

基本的に日本人は「プライバシー」をきちんと理解していないような気がするし、こういうのって、日本人の風土に合わないような気がするんですよねー。
Commented by k_penguin at 2008-05-19 12:12
saka_hamaさんこんにちは。
いつも写真、楽しませていただいてます。

個人情報規制に関しては、萎縮しすぎなのではという声も出ていますね。
医療に関しては、緊急事態もあるので病院側は難しい判断を迫られるようですね。

プライバシーというのは比較的新しい概念で、実は割と漠然としています。
個人情報は「情報プライバシー」というプライバシーの一種で、
一般にイメージされるプライバシーは「平穏プライバシー」。
この記事の虫男のケースは「身体プライバシー」で、
一応問題となる場面が異なるものとされていますが、みんなあまり意識してないです。

また、今まではマナーや「他人様」の目で禁止してきたものに、
処罰を求める風潮も強いように思います。
処罰ということは警察沙汰ということで、つまり公権力による紛争解決です。
プライバシーに関することに公権力の介入を許すというのは
私としてはあまり感心しない気がするのですが、
どーもその辺もみんなピンと来ていないようです。
Commented by バイダール二世 at 2008-05-20 12:35 x
こんにちは。
女性側から言うと、例え服の上からでも胸触られたら、嫌で情けなくて、体洗いまくりだと思います。大袈裟かもしれませんが、殴られたのと同じです。
プライバシーについては、何でもかんでも侵害だという風潮が変だなぁ、とは思っていましたが、公権力の介入とかまで考えていませんでした。これから少し気にしながら、ニュースなど見るようにしたいと思います。
Commented by k_penguin at 2008-05-20 13:07
バイダール二世さん、こんにちは。

女性に「触る」行為、というのが今まで処罰の対象とされてこなかったのは
悪いことじゃないと考えられたわけではなくて、
やった証拠が残りにくいことや、男女の痴話げんかに利用されやすいなど、
運用面での問題が大きいためだと思います。
痴漢も冤罪が問題になるくらい証明が難しい場合が多いようです。
ちなみに迷惑防止条例は、痴漢を処罰対象として予定はしておらず、
痴漢がこれで罰せられるようになっているのは、運用面です。
これも適用方法がずれている例なんですね。

処罰ということは、警察がやってきて、やったかどうか証拠を集めるためプライバシーに関することを根掘り葉掘り聞きまくり、
喋ったことを書面に残し、検察、弁護士、裁判所がそれをひねくり回し、
場合によったら裁判所まで出向いてみんなの前で同じこと喋らなくてはいけない、
ということとイコールなのですが
ホントにそれで良いと思って「処罰せよ」と言っているのかな、
と疑問に思う意見がよく見られます。
Commented by バイダール二世 at 2008-05-21 09:00 x
昔は、痴漢などに合った場合、女性にスキが有るからと親にまで叱られたものでした。そして最近女性が勇気を持って発言すると根掘り葉堀り聞かれるから又傷つくというのは悲しいですね。
又、分かりやすく教えて頂きました。
なんか、私の方が年上なのに、ペンギンさんは、私の師匠みたいになってます。気持ち悪いコメントっすよね。
Commented by k_penguin at 2008-05-21 20:29
おほめの言葉ありがとうございますm(_ _)m

女性が家庭にいるのが当然だった時代は、痴漢に合うのは「スキがあるから」で済んだかもしれませんが、
勤めるのが普通の今ではもうそういうリクツは通りませんよね。

うーん、やっぱり世の中は変わっていくんですね~。
by k_penguin | 2008-05-18 16:06 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(6)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin