NHK特集「パール判事は何を問いかけたのか」

終戦記念記事。余り面白くありません。あと、セージ的な意味合いはこの記事にはありません。

安部首相が(と、書いてから「安倍」か「安部」かわかっていない自分に気がついた)靖国に詣でる代わりにパール判事の息子と会うらしい。
と、いう記事が新聞に載ったのとほぼ同じ頃にNHK特集でパール判事を取り上げたのは、事前の何かがあったのかもしれないが、まあ、いーや。
俺がNHK特集「パール判事は何を問いかけたのか」を見たのはそれとは全く関係なくて、
東京裁判におけるパール判事の意見の法律構成はすんごくめんどくさいらしい、ということだけ聞いていたので、50分でその構成が一通り分かるのなら、すんごくお買い得じゃな~い、と、思ったからだ。
つまらなかったら、途中から「リンカーン」見ればいいし。

しかし、50分で映像付きでまとめるにはやはり、理論は難しいらしく、おおざっぱに、事後法だから、の一言でまとめようとする方向だったのが残念。
事後法の禁止というルール自体が国際法上確立しているといえるのか、ということが知りたかったのに。

事後法の禁止は古くから見られるルールであり、刑事法について妥当する。大概の国の基本法に載っている。
載っているが、それはあくまでも各国の国内法のレベル。国際社会では例えば日本の憲法を持ち出してきても何の意味もない。日本国憲法の適用される地的範囲に入っていないからだ。

国際法では国際法の法源がある。慣習法と条約だ。
この場合条約はないんだから、事後法の禁止という国際慣習法が成立しているかを検討しなければならないはず。

そして、刑事法という概念は基本的に国際慣習法にはない。
それらしいことが言われるようになってきたのは、東京裁判(1946年)の後、1948年の世界人権宣言以降で、
それが、どうにかこうにか国際刑事裁判所(ICC)ってもんに形つけて発足したのが2003年であるくらいだ。
だから、刑事法についての原則である事後法の禁止も国際慣習法にはなっていない、
と考えるのが普通だと思うのだが・・・。
これが前から疑問だったんだけど、やっぱり答えてもらえなかった。

また、それと並行して、「侵略戦争の禁止」という慣習法の成立の成否をも検討しなければならない。
こーゆー慣習法が成立していれば、東京裁判(極東国際軍事裁判所憲章)は事後法ではなく、既にあった慣習を明文化したものと認められる可能性が出るからだ。
これはユース・コーゲンス(慣習法上の強行法規)の問題で、成立しているという説もありうるところだが、パール判事は成立していないという見解なのだろう。
これについては、それ的なことを言ってるとこが引用されていた。

大体において、国際社会のいわば「公序良俗」に基づいた法秩序というもの自体が存在していない中で東京裁判は行われたのだ、ということについて番組は言及していない。
国際法の世界は、国内法の感覚になれていて、日本国の憲法をあげておけばそれでOK、と思っていると、えらい目に遭うような無法地帯と言っていい。

・・・と、思ったところで、パール判事の「事後法の禁止」っていうのは、個々の構成要件だけでなく、法秩序が存在していないってことも含めて言っているのではないかなって思いついた。
番組では、連合国側による一方的な支配の否定という視点は繰り返し述べられていて、事後法の禁止は、そういう政治的思想を導く法技術的な便法のように扱われていたけれど、決して便法ではなくって、根本的には同じことをさしていると思う。

法秩序が存在していないところで人が人を裁くということは、一方的な暴力と同じことなのだ。
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Commented by 古井戸 at 2007-08-21 09:01 x
東京裁判は、ニュルンベルク裁判と同じく、終戦処理でありイワユル裁判ではない、とおもいます。戦争の一部です。

パールが裁判長でなくて日本は助かった。
http://blog.so-net.ne.jp/furuido/2007-08-15
Commented by k_penguin at 2007-08-21 12:59
私達が今親しんでいる「裁判」を基準に見れば、東京裁判は裁判の体をなしていないでしょう。
しかし、法秩序が整備された国内法における「裁判」と同様のものを国際的な紛争、
特に人道や平和に対する罪を処理する裁判に求めることは最初から無理です。

国際法においては、法は常に政治的妥協と緊張関係にあります。


なお、記事本文中に書いたように、
パール判事は別に「法」を 実定法だけに捉えていたわけではなく、慣習法の検討を行っているようです。
侵略戦争が単なる国家間の不法行為の成立要件としての違法にとどまらず、
「強行法規としての違法性」を慣習法上持つに至ったかについては、
今でも説が割れているほどです(ジェノサイドについては違法と確定している)。
by k_penguin | 2007-08-17 08:23 | ニュース・評論 | Comments(2)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin