人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ビラ配布無罪判決(葛飾ver)

えー、先月のエントリーに1つも法律関係の記事が含まれていないことに気がつきましたので、書きます。
しかし、だるくてのびている間に判決が出てから1週間たってしまった・・・。

軽く説明すると、お坊さんがマンションのドアポストに共産党のビラつっこんでたら住居侵入でタイーホって事例に地裁レベルで無罪が出たのね。

とりあえず、言いたかったのは、被告人側は「表現の自由」の勝利って騒いだけれど、判決は「表現の自由」にはふれていないってこと。
あちこちのブログ記事に目を通してみたら、ちょっと真面目に新聞を読んだ人なら、みんなこれは分かっているようだった。
だから、まあ、書かなくてもいいよなって思って放っておいたのだ。

次に興味があるのは、マンションの共用部分についての住居侵入の正否の判定基準。
プライバシーや不審者への意識って最近大きく変わっていて、共用部分も私的領域であるという意識が高まっている。
その一方で、住居侵入罪って、なんつーか、ヤな使われ方をするケースが結構あるのだ。
だいたい、ビラまきの住居侵入で捕まるのは必ず共産党だしね(ま、自民党はそもそもビラまかないから捕まる前提もないけど)。
昔は、住居侵入罪は「姦通罪」の代わりに使われたことがある。
戦後姦通罪が無くなったので、旦那の留守に上がり込んだ男に対し、脱法的に住居侵入罪を適用したのだ。多分奥さんの留守に上がり込んだ女に対しては適用はなかったのだろう。
そんな感じで、わりと警察の恣意的適用の危険が漂う罪なのだ。

今回のケースについて、「住民が何度も注意したのに住居侵入を認めないなんてひどい」的な意見も見られたが、こーゆー事情があるので、やはり住居侵入の適用は慎重にいきたいと俺は思う。
住居侵入罪は刑法犯。やはり人に刑罰という強い法律効果を与えるのは、最終手段にしたい。
話し合えるものは話し合って解決したいものだ(一方的な注意と話し合いは違う)。

判決の住居侵入の正否の判定基準は、
第1次的に犯罪目的や準じるような不法目的で立ち入るのはアウト。
不法目的がない場合、「共同住宅の形態、立ち入りの目的・態様などに照らし社会通念を基準として」判断。
具体的には、オートロックシステムを備えていれば部外者立ち入り禁止。
いかなる者の出入りを許すかは各マンションで自由に決められるが、その意思表示が来訪者に伝わるような外部的表示が必要。
・・・こんな感じかな。

コメント欄で、ちょっとやんちゃしてます。てへ。
Commented by aiwendil at 2006-09-04 21:00 x
こんにちは。お初にコメントいたします。

ふと思ったのですが、ビラ配りは廃掃法的観点から見たら不法投棄(16条違反)にあたらないんでしょうか(笑)?
配る側から見たら有価物でも、受け取る側からしたら無価物=廃棄物という場合もありますよね。
廃棄物の処理責任は、所有者または土地所有者にかかってきますので、受け取る側からしたらものすごい迷惑になりそう。
そういう観点で考えた例はないのでしょうか?
自分だったら、べつに立ち入られてもいいけれど、もしもいらないものを大量にポストに投函されたら実害があるので嫌だなあと思った次第です。
こんな観点から考えるほうが珍しいでしょうか(笑)?
Commented by k_penguin at 2006-09-04 22:23
aiwendilさん、こんにちは。
うちのブログでは初めまして。
積極的にいろいろ鑑賞されているようでうらやましいです。
私なんて、比較的近所のICCにもなかなか行かなくなっちゃいました。

ご質問の件ですが、
廃棄物処理法は、「生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする」法律です(1条)。
16条の対象の廃棄物の定義の中に「ごみ」とありますが(2条)、法律の目的からして、生活環境を害する危険ある程度に大量のゴミであることが必要と考えられます。
1,2枚のチラシではこれにあたらないでしょう。
また、16条については、捨てる側が「廃棄物」であると知っていることが必要です。

従って、廃棄物処理法16条の不法投棄にはあたらないと思います。

>もしもいらないものを大量にポストに投函されたら実害があるので嫌だなあ
んー、態様によりますが、程度がひどければ軽犯罪法1条27号に当たるかもしれません。
もしそんなことがあったら、マンション管理人と相談の上、最寄りの警察へGO!
Commented by うぐぅ at 2006-09-11 01:57 x
勉強になりますが、住民が嫌がっている場合はどうなるのでしょうか。
国立の自衛隊官舎への不法侵入の場合には、看板を表玄関と裏口に立てて、かつ、住民が何度か注意しても止めなくて逮捕された事例。

今回も警告を受けて止めなかった事例。ピザは捕まって居ないじゃないかと言うけれど、ピンクビラは捕まっていますよね。後、オウム信者も逮捕されていたような・・・。共産党だけじゃん!と仰いますが果たしてどうなんでしょうか?オートロックではなくても、セールスマンとチラシお断りのマンションは増えてきておりますが・・・。今後は、どうやって共産党にお帰り頂ければ良いのでしょう。
Commented by k_penguin at 2006-09-11 02:13
うぐぅ さん、コメントありがとうございます。
国立の自衛隊官舎の件については
http://shiropenk.exblog.jp/3355587
で意見を述べています。
ピンクビラは捕まってるんですか。知らなかった。

ワタシ的には、
話し合ってすむものであれば、話し合って解決して、警察は最終手段にした方がいい、という考えです。
一方的な注意は話し合いとは言いません。相手の言い分も聞いて、初めて話し合いと言います。
無責任なバイト君が蒔くピンクビラは、話し合っても収穫無しに終わるかもしれません。
オウムは問答無用の逮捕権の濫用事例として知られています。
共産党は話し合えるかどうか、ビミョーなところですので、トライしてみてから警察を呼んでもいいと思います。

なお、この記事の判決の理論からすれば、マンションの理事会で決定した事項で、「意思表示が来訪者に伝わるような外部的表示」があればお断りできることになります。
理事会で「共産党お断り」を可決して、その旨大書した掲示をマンション入り口に貼ればよいことになりますね。
Commented by 田中 at 2006-09-14 13:03 x
正直「話し合い」の意味がわかりません。

住民が止めてくれといってるのだから、そこで止めるべきでしょう。
自分の庭に勝手に入ってきてる人に出て行って下さいと注意を
促してるのに対し「出て行かない」人になんの話し合いが通じるのでしょうか。

話し合いを求めるべきは共産党の人であり住民ではないはずです。
権利を持つ住民に対して、ではどのようにすればビラをまいてもいいですか?
と住民に理解を求めるべきは共産党側であるのが常識というものではないでしょうか。
警告を無視して強行しようとした時点で住民に「話し合い」が通じる人ではないと
判断されても致しかたないのではないでしょうか
Commented by k_penguin at 2006-09-14 16:56
田中さんコメントありがとうございます。

私が思うに、「話し合い」とはお互いが自分の主張を一方的に怒鳴っていることではありません。
喋る人と聞く人がいて初めて「話し合い」が成立します。

また、「庭」と「マンション共用部分」はその範囲で保護されるプライバシーの程度において異なります。
庭に入ってくる知らない人とマンション共用部分に入ってくる知らない人では、不審の程度は異なるでしょう。
マンション共用部分に入る人には話し合いが通じないと判断するのはまだ早いと思います。

このケースについて、私が知っている事実は、「住民が止めてくれと警告した」
「坊さんが警告を無視して強行しようとした」の2点のみで、それ以外の事情は知りません。
住民が話を聞こうとしても坊さんが表現の自由を振り回して問答無用だったのかもしれませんし、
坊さんが住民に理解を求めたのを住民側がプライバシー権を盾に突っぱねたのかもしれません。
その辺が分からないので、一般論的に「話し合えるものは話し合って解決したい」と述べました。

プライバシー権というのは、権利の性質上、それを守る手段としてあまり公権力に頼らない方がいいんじゃないかと思います。
Commented by うぐぅ at 2006-09-22 06:09 x
コメント有り難うございました。僕も田中さんに近い考えです。「話し合い」で解決できるのなら「そうするべきだ」・・・・その通りですが、話し合いが通じない人が居るから警察や裁判制度があるのではないでしょうか?

警告を無視して投函を強要したと言うことは、話し合いが失敗している事例のように感じます。国立も、住人が投函中止と撤去の要求をしたのに、無視された事例でしたが。そう言ったケースでも「話し合い」で解決するべきと言う見解は、住民側に一方的な受忍を強いる結果になると思います。

>プライバシー権というのは、権利の性質上、それを守る手段としてあまり公権力に頼らない方がいいんじゃないかと思います。

ここは見解の相違ですね。企業や団体による個人のプライバシー権侵害については、事実上の力関係を考慮して、公権力に積極介入して欲しいです。
Commented by k_penguin at 2006-09-22 10:12
うぐぅさんのおっしゃるとおり、何でも「話し合い」で解決できれば、警察はいりません。
このケースにしても、「話し合いが失敗している事例」で警察がいる事例かもしれないと思います。
ただ、「話し合い」をしようとしなかった事例かもしれない、とも思っています。
投函中止要求を無視した、という事実だけでは、話し合いを求めたのを無視したか、一方的に怒鳴ったのを無視したのかが分からないからです。
Commented by k_penguin at 2006-09-22 10:12
プライバシーという権利がある側なのに、何で怒鳴りたいのを我慢して相手の言うことを聞かなければならないんだ、と考える方もいるかもしれません。
しかし、プライバシー権というのは、権利の性質上、それを守る手段としてあまり公権力に頼らない方がいいと思います。
確かに、企業や団体による個人のプライバシー権侵害については、事実上の力関係の差が大きいので、法律なども含め、公権力による後見が必要でしょう。
しかし、このケースの場合の相手方は個人だと思われます(まあ、坊さんの背後になんか団体がいる、という解釈もできそうですが、とりあえず新聞等の記事からは少なくともビラをまいていた段階では個人プレーと考えています)。
このような場合は、もう少し怒鳴りたいのを我慢して、自分で自分の権利を守るということをやってみてもいいのではないかな、と、思います。
Commented by うぐぅ at 2006-09-26 09:22 x
人命や身体のようにより重要な人権侵害事例ですら自力救済が否定されているのに、プライバシー権救済のみ自力でやるべきで、公権力に頼るべきでないというのは不可解なのですが。

どうして、公権力に頼るべきではないのですか?大声を張り上げるのではなく、110番通報しただけではないですか?個人プレーであれ何であれ、他人の人権を侵害したのであれば警察沙汰になって当然だと思います。

話し合いと言いますが、当事者同士の話し合いは大抵は口論になり有効な解決策に繋がることはほとんど無いのではありませんか。警察という第三者が介入しなければ、このお坊さんは迷惑な宣伝活動を続けた事でしょう。
Commented by k_penguin at 2006-09-26 10:23
>人命や身体のようにより重要な人権侵害事例ですら自力救済が否定されている
人命や身体に自力救済が否定されているというのは、聞いたことがありません。
正当防衛や緊急避難の要件を満たせば違法になりませんし、
その際やりすぎても誤想防衛等による刑の減免の余地があります。

>どうして、公権力に頼るべきではないのですか?
権利の性質や、歴史的経緯から、あまり警察の裁量を広く認めるに適さないと考えているからです。
詳しくは記事に書いてあります。
Commented by k_penguin at 2006-09-26 10:23
>個人プレーであれ何であれ、他人の人権を侵害したのであれば警察沙汰になって当然だと思います。
そうですね。
そのように考えることも可能ですし、あなたには警察を呼ぶ権利もあります。
それは誰も否定できません。
そして相手の方もあなたの側を「表現の自由という人権を侵害した」と考えることも可能ですし、それも否定できません。
きっと警察はあなたの側に味方してくれますが、それは別に、あなたの側だけが正しいからではなく、もっと別な理由です。
それが別に気にならなければ、警察を利用してもいいのではないでしょうか。

>話し合いと言いますが、当事者同士の話し合いは大抵は口論になり有効な解決策に繋がることはほとんど無いのではありませんか。

正直、これはやってみなければ分からない、としか言いようがありません。
双方の話し合いのスキルが乏しければ、
有効な解決策に繋がる可能性は確かに減りますね。
自分らでできなければ仕方がない、公権力を頼みましょ。
こっちは税金払ってるんだし。
by k_penguin | 2006-09-04 02:53 | 裁判(判決評) | Trackback | Comments(12)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin