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ジェンダーという言葉

俺は政治のことはまるで分らないし、正直興味も無いが、新聞なんかを斜め読みしている範囲では、ジェンダーという言葉はなんか政治的にめんどくさいニュアンスがあるらしい。今日の朝日新聞の文化欄の記事で、「ジェンダーフリー」は「ジェンダー」とは出自が違うらしいというのを始めて知ったが、「ジェンダーフリー」は「性的役割分業からの解放を示」すという言葉であって、「東京都教委が使用を避けている」というあたりから、なんとなく政治的な風味は分ったような気がした。

ジェンダーは「(生物学的性差とは異なる)社会的・文化的性差」を指す、と記事では解説されている。この言葉がどういう経緯で政治的にデリケートな言葉になってしまったかはよくわからない。
俺が知る限りではそれは、イヴァン・イリイチの言葉で、彼のシャドウ・ワーク理論(無償の労働が社会を発展させる、とゆーよーに覚えているが)とつながりがある(wikiではこうなっている)。
彼の理論からすれば、ジェンダーがはっきり分かれた社会の方がより発展性が見込めて(家庭内労働がシャドウ・ワーク)、DINKSのようにジェンダーが混乱した状態はよろしくない社会、だ。つまり、イリイチ的には、「ジェンダーフリー」は望ましくない状態なのだ。
また、「ジェンダー」は生物学的性差たる「セックス」の対立概念だ。
要はセックスは生まれたときに決まり、二者択一のものだが、ジェンダーは、社会の場面によって選ぶものであり、二者択一ではない、というところにある。ひとりの人が、男のジェンダーと女のジェンダー、両方持ち合わせることが可能なのだ。自分に「男っぽいところ」も「女っぽいところ」もあるな、と思ったら、それは両方のジェンダーを持っているということだ。そんな程度の話なのだ。

新聞で読んだのは、「男女平等」という言葉を「ジェンダーフリー」と言い換えることの良し悪しを論ずるシンポジウムの紹介だったのだが、「ジェンダーフリー」が「性的」役割分業からの解放を言う以上、ジェンダーという言葉を使う意味はない。ここでの「性的」とはセックスのことだからだ。
セクシュアルマイノリティーに対する視点を得るために役立つ、という意見もあったが、「ジェンダーフリー」によってそーゆー視点を得たという話は寡聞にして聞いたことがない。同性愛者に対する差別的待遇が憲法14条違反とされた判例はあるし、戸籍の性別も書き換えられるようになったが、その結論は別にジェンダーという言葉を使わないでも楽勝で導ける。つか、セクシュアルマイノリティーにもいろいろある上に、性的な自己意識はややこしいこと山の如しなので(性同一性障害なんて分りやすい方だ)、普通の人でも両方持ってるジェンダーとか言い出すと、もうわけわかんなくなるとおもうが。

「男女平等」なんて四角っぽい漢字4文字よりも「ジェンダーフリー」の方が、かっこいいじゃん。新しいことっぽくて、やる気出るじゃん。しかも、意味よくわかんないから、何の理由にもなるじゃん。
とでもいってもらった方が正直でよろしいと思うのだが。
by k_penguin | 2006-04-05 18:34 | ニュース・評論 | Comments(0)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin