陪審制もしくは裁判員制のイメージ

なんか自分でもややこしくなってきたので、時系列に並べる。
最初の記事はこれだ。
判決文を判りやすくしましょう、って、まあ、判りにくいよりはわかりやすい方がいーよね。うん。

で、これを受けてモトケンさんのこれ
判決を判りやすくする以前の問題として、基本的な法律概念について素人にもわかりやすく解説する方が急務だろうという趣旨で、それ自体確かにもっともなので、なんか俺の感覚とズレがあると思いつつも、余りその辺深く考えずに、コメントを放り込んだ。
ズレの感覚が具体化してきたのは、4番目、酔うぞさんのコメントからだった。
それは、一般人は自分に「法律への当てはめ」という作業が要求されているとは理解できないだろう(つまり、法律概念について説明されてもそれで自分にどうしてほしいのかもわからない)、だから、裁判員になるのであればその辺からの手当が必要だ、という趣旨で、俺もほぼ同意見だ。

陪審は事実認定に民意を反映するものだから、法解釈にはノータッチのはず、なのであるが、実際上事実認定と行っても法律要件に当てはめていく以上、法について知っている必要がある。
故意とは何かを知らずして、故意犯か否かを判定することはできないはず。
しかし、参加する裁判員の側は、「お気軽に参加を」的なことを言われ、物見遊山か何かだと思っている。法律用語を覚える気なぞ最初から無い。
おまけに、「故意とは何ぞや」とは、実は刑法学者の間でも喧喧囂囂侃侃諤諤の有様の大論点なのだ。
素人に口つっこまれるのを嫌がる人が出るのも理由があるというわけだ(そのうえ裁判員制度は参審制だ)。

ズレの感覚は、モトケンさんのレスを見たあたりで、意識的になった。
この人と俺とでは、陪審制の裁判について抱いているイメージが違うのだ。
モトケンさんは、なんというか、今までの裁判のまま、裁判官席の末席に裁判員が加わる、というイメージに近いような気がする。あくまでも純理的に判定はなされる。だから「ある程度の理論というか考え方の説明をしないと、裁判官の見解の押し付けになってしまう」ことを意識する。
それに比べて、俺のイメージは、最早「オンエアバトル」いや、「TVチャンピオン」なのだ。
検察官、弁護士が自分の見解をアピールする。「考え方の説明」はその際重要ではない。アピールになるのならそういうことをしてもいいし、逆に情で無理やり押し切ってもいい(プロの裁判官には通用しないが)。
そして、プロの判定員3個のボール(イニシャチブを握っているので多めにした)、素人さんは1個のボール。さあ、判定、お願いしますっ!

俺のイメージがどこからきたか記憶を手繰ってみると、大学時代に読んだウェルマン『反対尋問』あたりからきていると思う。
陪審制の下で豊富な事例と共に効果的な反対尋問のやり方について解説したこの書で、最も重視しているのは理論の緻密さなどではなく、実は「場の空気」だ。2ちゃんでいえば「空気嫁」なのだ。
どんな重要な証拠も、出すタイミングを間違えばあっさりスルーされる。雰囲気的に。
弁護士も相手の論の矛盾点を付くことができたからといって勝ち誇ると逆効果になる。キャラ的に。
反対尋問はまるで木刀もってストリートファイトしているよう。その代わり弁護士も証人の外国人労働者のおっちゃんもある意味対等だ。なめてかかると逆にやり込められる。


素人を判定員に入れた以上、純粋に論理的な判定は最早期待できないのではないか。
それが「民意反映」ということではないのか。

制度は国の事情によって変わる。運営してうまくいく場合、いかない場合、その国流に変容する場合、いろいろ。
すべては蓋を開けて見なければ判らない。
by k_penguin | 2005-11-10 17:22 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(3)
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Commented by 酔うぞ at 2005-11-10 20:07 x
トラックバックありがとうございます。
わたしも k_penguin さんのご意見に近いです。
どうやっても次々に決まる裁判員に今までの判例などを全部理解している水準を維持することは、いかに努力して不可能です。
に弁護人の腕前によるのかもしれませんが、個々の裁判を比較すると事実認定と情状酌量のバランスが大きく振れる、といったことになるでしょう。
そういうことを何十年か繰り返して「裁判員は法律的な常識を勉強しなければならない」といったことが社会常識として定着する、つまり振れが納まっていくのだと思ってます。
よって当初は色々な判決が出るかもしれませんが、今だって「裁判所の常識」でやっているから「ナンじゃこれは?」的な批判を受けている判決は沢山あり、裁判員裁判が別の意味で「ナンじゃこりゃ」的な判決が出たとしても、現在が「絶対的に良い」のではないのだからどっちが良いのかはやってみないと分からないのは間違えありません。

ホットな議論を続けていくことこそが一番重要なことなのでしょう。
Commented by モトケン at 2005-11-10 22:27 x
TBありがとうございます。
お返事のTBをしましたが、exciteブログにTBすると文字化けするのを忘れていました。
見苦しければTBを削除してください。
コメントの私の名前にリンクを貼っておきました。
Commented by k_penguin at 2005-11-10 23:11
> 酔うぞ さん
コメントありがとうございます。
とにかく、裁判のやり方が今までとは変わっていくのは確かですよね。具体的にどうなるのかはわからないけど。
ホットな議論を続けることが重要だと私も思います。が、・・・日本人苦手そうだなあ。日本人は愚痴は得意なんだけどな。

>モトケン さん
文字化けなので削除しましたが、TBありがとうございます。
後はそちらのブログにコメント入れます。

エキブロ、不便だなあ。


法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


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