CONTEMANSHIP KAJALLA#3『働けど働けど』

 カジャラも、もう3つめだ。#2が去年の3月から5月だったから、大体1年になる。
カジャラの#1はYoutubeにあげられて、#2は、一部を除いて、編集されたものがBSで放送された。
 で、まず、全体の印象を言えば、前回はKKPっぽかったが、今回はシティボーイズっぽかった。
 そして、面白いか面白くないかと言えば、
面白いけど、「すげー面白い!」わけではない。一般チケット7500円は高いと思う。でも、もしもYoutubeにあげられたら、それはお勧めできる。その程度に面白い。

 チケットと言えば、今さら気がついたのだが、一般席のチケットの値段が高い割に、学割が2500円とかなり安い。今回は横浜公演も前売りが余る日があったのだが、この傾斜配分のせいで、古いファンが観る回数を減らしたのかなって思った。 それじゃあ、高校生とかのヤングな方々に2500円で劇場でカジャラを観ることをおすすめできるかっていうと、そこまでじゃあない。
(追記 4月15日 
東京公演を見たら、横浜よりも面白くなっていた。脇を固める4人が役割をきっちり把握してくれているという感じ。メリハリがついてわかりやすくなっていた。ので、7500円は高い、と言いきるのは言いすぎかなって思って追記。まあ、自分は高いと思うけど。でも5500円くらいならまあ、良いかなってくらい)
 今回の観劇にあたり、#2を録画したものをやっと観たのだが、テレビの方が声が聴き取りやすいし、座席位置による当たり外れがない。単調な流れのところは、編集でメリハリをつけてくれている。編集されたものの方がライブより見やすい。
 熱く盛り上がるような作品は、劇場まで足を運んでリアルタイムで観にいく長所が生かされるが、比較的クールな小林さんの作品は劇場の良さはあまり体感できない。周囲の客が笑うから、大したことないギャグもなんとなく面白いように感じる、ということはあるが、俺はそれを劇場の長所だとは思っていない。
 俺が小林さんのお芝居をわざわざ観に行くのは、盛り上がるためではなく、作品の持つ微妙な空気感を正確に読み取ろうとしているからであり、つまり、深読みをするためである。




と言うわけで、本題に入る。

 前回まで、カジャラの深読みははかばかしくなかった。推論を支える客観的な情報がまるで入っていなかったからだ。「今まではうまくいかなかったけど、今度の新しい王国は一発逆転で成功させるぞ」的なことを言ってるらしかったけど、それだけじゃ何がなんだかさっぱりだ。
 しかし、今回は、客観的な情報が1つ入った。スタジオコンテナの設立、営業開始がそれだ(この事実は昨年10月に発表された)。別にスタジオコンテナは小林さんの会社では無いけれど、小林さんに実質的な決定が任されている会社らしかった。とすると、新しい王国はスタジオコンテナを指し、小林さんは大変気合いが入っている。と、いうことになる。公式コメントではスタジオコンテナを製作会社だと小林さんは言っていたので、企画製作の方を頑張るということなんだろう。
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 一方、うまくいかなかった「今まで」とはやはりラーメンズを指していると考えるのが自然だ。何がうまくいかなかったのか、まったくもって謎なのだが、それはおいといて、上手くやるためには、なにか新しい手を打たなくてはなるまい。

 今回の舞台は、何かのテーマらしいものは見えなかった。タイトルからは働くことの苦楽とか、意味とか、何かその辺のアレなのかなと思わせておいて、コント10個中4個は就職面接ものだった(オーディション含む)。まだ働く前のシチュエーションだ。コントはすべて、意味と無意味の間を浮遊している。意味がありそうな流れになるとナンセンスで壊される。
 作り方として目を引いたのは、就職フェアリーと、次のエイリアン面接。就職フェアリーは、「たかしと父さん」系の作品で、ラーメンズをよく知る人なら、もう頭の中で辻本君を片桐さんに置き換えて観ちゃうんだろうけど(で、そっちの方が面白そうなんだけどなあ、とか思っちゃうんだろうけど)、辻本君は彼なりにプリチーで、ラーメンズのこととか気にしないヤングな方々なら、それはそれで受け入れるのかもな、とか思った。
 多分、小林さんは、今までの作品を要素ごとに分解して、要素ごとに最も適していると思われる俳優をあてていったのだ。今までは、片桐さんが、父さんも、バニーボーイにつっこむ客も、おかしな犯罪を企む共犯者役も、全部一人でやっていたのだけれど、それを、重要な要素ごとに分解して、その要素をよりアピールできそうな演者に当てることにしたのだ。たかしの父さんは辻本君がやった方がよりプリチーだから辻本君にあてたのだ。
  ・・・ていうか、小林さん、父さんの重要な要素はプリチーだと思ってたのか・・・
 とすると、小林さん自身はより「小林さん」なキャラをやることになる。就職面接するエイリアンは大変日本語が不自由なコミュニケーション下手で、その意味でバニーボーイの流れを汲むものだろうと考えた。
 適材適所。これが成功の鍵。文句のつけようがない。
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 後半4つのコントには○が出てくる。洒落にならない親方の背景で月として使われた白く光る大きな円盤だ。(灯油屋コントでは、丸いタイヤと姿を見せないオ「マール」エビが○にあたる)これはポツネンmaruの○と同じやつであろう。
一人コントでは○は、作り上げた砂の城を壊す。”何度も作ったから丈夫になった土台”のせいで○が壊せないものは、小林さんが自分で意識的に壊す。それは新しい城を作るために必要だから壊すのだそうだ。小林さんにとっては、作ることこそが重要で、顧みることは重要ではない。意味を不要とする小林さんにとって、○は敵ではない。

 カジャラ#2のテレビでのインタビューで、小林さんはしきりに「20年の経験があるから」と、語っていた。
 結構なことだ。
 20年の経験を使うなら、負の遺産をも引き継がなければなるまい。俺はそう思う。捨てたつもりでも、負の形でついてくるものがあるのだ。
深読み編その2はこちら

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by k_penguin | 2018-03-10 02:50 | エンタ系2(ライブレビュー) | Trackback | Comments(11)
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Commented by at 2018-03-13 13:22 x
ペンギンさんの深読みを読んだ後に自分自身の感想を述べるのは、薄っぺらさが際立つのですが…。。

観劇していて途中で思ったことは、「メンバーが戦隊モノみたいだな」ということです。
小林さん、竹井さん、辻本さんにプラスして、「単純そうな脳みそ筋肉キャラ」と「飄々とした雰囲気の線の細いキャラ」が登場するコントが♯2のときから多いな、と。
身も蓋もないですが、「小林健一さんのキャラは、そのまま久ヶ沢さんが出来ちゃうんじゃないかな」なんて。。
一人コントのときの「働けど、働けど」と追い詰められていくような描写のシーンでの、辻本さんによる影マイクで「恩を仇で返され」って言葉に思わず反応してしまいました。
砂のお城を作り上げて自分で壊す小林さんは『うるうびと』の土で家族や親友を作るシーンがダブりました。
「この人、まだ穴の中なのかなー。」なんて。
でも、少し不気味な顔で笑みを浮かべていらっしゃったので、穴の中は居心地がいいのでしょうか。
Commented by k_penguin at 2018-03-14 00:29
「単純そうな脳みそ筋肉キャラ」は、久ヶ沢さんが適役で、しかも、小林さんも片桐さんもできないため、ラーメンズでは出てこないキャラなので、KKPには良く出てきますね。
今回はそれを小林健一さんがやったのですが、小林健一さんだと斉木しげるっぽくなるな、とワタシは思いました。
そういえば、斉木しげるがよくやる、「ノープランかつ雰囲気で課題を解決しようとする人」のキャラはラーメンズでも良く出てきていて、その「雰囲気」の部分を「筋肉」に変換したキャラが久ヶ沢さんのキャラだったんだなあ。
などと考えました。

一人コントについては、記事書いてからまた考えたんですが、
小林さんが自分で壊すのは、砂のお城そのものではなく、「砂のお城を何度も作ったため出来た土台」ですよね。砂の城自体は○が壊す。まあ、○も小林さん自身ですが。
砂の城はラーメンズの作品にあたるんでしょうが、○も壊せない(つまり、小林さんも壊せない)土台って、ラーメンズを望むファン層ってことなんじゃないでしょうか。
で、カジャラのチケットの傾斜配分は、これにつながるんじゃないのかなってワタシ的には思うのです。
ラーメンズと切り離された、カジャラというユニットを組み立てるには、亡霊みたいなラーメンズのファンは邪魔でしょうからね。
Commented by at 2018-03-14 12:49 x
「ラーメンズを望むファン層」を壊して、うら若き「ラーメンズを知らない子どもたち」にコントユニットであるカジャラを受け入れて欲しい…。
もし、本当に小林さんがそう考えていらっしゃるなら、カジャラ♯1に片桐さんを出すべきではなかったと私は思います。。
小林さんと片桐さんが同じ舞台に立つ以上は、他にメンバーが居ても「ラーメンズ」と見られてしまっても仕方ない訳で。。

「新しく設立するコントユニット、出鼻を挫く訳にはいかない。ラーメンズの2人が揃うとなれば集客が見込めて華々しくスタート出来る」
とかだったら、へこみます。。

Commented by k_penguin at 2018-03-15 00:04
ラーメンズを否定したいのなら、なぜ、カジャラ♯1に片桐さんを出したのか。
これは私も考えました。
ラーメンズの2人が揃えば集客が見込まれる、というのも無くはないと思うのですが、それがメインではない、という気がします。
小林さん自身は、カジャラ♯1の際に、ラーメンズの2人がそろったことを特に積極的に推していたわけではなかったからです(周囲がラーメンズだと盛り上がるのを制止もしませんでしたが)。

カジャラ♯1は片桐さんへの通告であった様に思います。片桐さんに見せ、演じさせるための舞台です。
しかし、何を通告したのかはよくわかんないです。
多分、「カドマツ君」がヒントになる作品です。こういう、自分の世界に閉じこもってる人が、「ステージを上がる」話は今までになかったものですから。
Commented by のりっぺ at 2018-03-23 12:36 x
はじめまして。いきなりコメント失礼します。
ペンギンさんは
深読みしすぎて独自のストーリーを作ってらっしゃる気がしてなりません。
単純に面白いと思ったものを一緒にコントやって見たいと思う仲間を集めて(そこには既に決まってるスケジュールの問題とかでご一緒できないメンバーって言うのも居ると思いますし、シンプルにコントができる場所って少ないから一緒にやりたいって言ってくれる人たちとタイミングが合えばやっていける場所を賢太郎さん自身も作っていきたいってことだろうし。)楽しんでもらえるものを作って行ってる、シンプルにそれだけだと思いますよ。
ペンギンさんが何をそこまで賢太郎さんと片桐さんとの関係性に執着されて憶測してらっしゃるのかがよくわからないです。それを考えて何か良かったことや実際に何か進展したことがありますか?
観客としてシンプルに楽しまれた方が良くないですか?
学生さんの料金が安いのは、コントや演劇を学びたい若者たちに少しでも役に立てることがあればってことでしょう。
ラーメンズを引きずってるファンを減らしたいなんて思ってないでしょう。
20年の歴史はラーメンズも含めて今まで全ての経験のことを言っているわけで
それは賢太郎さんご自身もとても大事にされてる気がしますよ。
ペンギンさんはいろいろ仰ってる割にずっと賢太郎さんの舞台をご覧になってらっしゃると言うことは、賢太郎さんの作品好きだからでしょ?だったらもっとシンプルに目の前の舞台を楽しんでください。そこにペンギンさんが作った想像上のストーリーは要らないと思いますよ。
Commented by k_penguin at 2018-03-23 17:35
のりっぺさん,率直なご意見をありがとうございます。
小林さんの舞台をもっとシンプルに楽しんだ方が良いのでは,というご意見は,今までもときどきいただいております。それに対する私のお答えもいつも同じで,私は私なりのやり方で小林さんを楽しんでいます。とお答えしております。

 記事にも書きましたが,あの作品を普通に見るのでは,チケット代ほどの価値はないと思っています。Youtubeで見られるのであれば,それで十分です。
 小林さんの作品は,深読みをして初めて面白くなる作品だと私は受けとめています。
もちろん,シンプルに楽しんでる他の方の鑑賞を否定する気はありません。むしろそっちが普通だし。受け止め方の違いです。
 私は私で,「小林さんの言うことをただ単純に面白がるよりも,こっちのやり方の方が楽しいのになあ」って,こっそり思っているだけです。

なお,「20年の経験」についてだけ,深読み的立場から言いますと,
私が引っかかるのは,その言葉を繰り返しすぎていることです。
確かにそれを彼は大事にしているようですが,その割には具体的な内容が明らかではない。経験って,それが役に立つ場合もあるけど,役に立たない事柄もあります。特にお笑いでは,経験の長さよりもフレッシュさの方が有利に働く場合も多い。
「20年の経験」を繰り返す彼から,私はむしろ自信のなさを感じます。
Commented by のりっぺ at 2018-03-24 18:26 x
深読みしていろいろ考えるのももちろんありだと思いますが
ペンギンさんは深読みする方向性が若干病んでますよ。
賢太郎さんに対する変な執着みたいなもすごく感じます。


Commented by k_penguin at 2018-03-24 22:54
うーん、おっしゃることがちょっとよくわからないですが、
あまり頻繁には記事が書かれていないこのブログだけでは、ワタシが小林さんに執着しているとは言えないと思いますよ。実際、小林さんは私の趣味のうちの1つに過ぎませんし。
「深読みする方向性が若干病んでいる」っていうのは面白かったです。
病んでいる深読みがあるってことは、病んでいない深読み(健全な深読み?)もあるってことですよね。
たとえば、どんなことが健全な深読みにあたるもので、のりっぺさんのご期待にそうものなのでしょうか。
多分ワタシはご期待にはこたえられないと思いますが、参考のために、どんなものなのか教えていただけたらな、と思います。
Commented by A at 2018-04-04 01:18 x

最近は5人コントとBS特番がメイン活動なのかしら。

k_penguin様こんばんは。
かなりしばらくぶりにお邪魔して、小林さん関連記事を読ませて頂いています。
小林さんを見たのは、ラーメンズのTOWERが最後です。9年前ってー。
あのころの中途半端な状況から、その後いろいろあったようで大した進展もないような感じなのでしょうか。
気付けば未見の演目もずいぶん溜まってしまいました。k_penguinさんの考察はやはり面白く、記事だけでだいたい満足です。
今後、万一何か起きたら見ればいっかなって感じで…。
Commented by k_penguin at 2018-04-04 23:36
Aさんこんばんは

TOWERから9年?!もうそんなですかー
それなら、小林さんの思いもいろいろ変化してきても不思議ではないように思いますが、
それでも、大した進歩も感じないのは、「基本的にコドモ(悪い意味で)」という点で変わってないせいだと思います。

小林さんの心象風景を追うのであれば、KKTVが一番コンパクトにまとまっていると思います。

近年は私も仕事が忙しかったりして、ちょっと作品を見っぱなしでほっといていたら、
急にカジャラで、また中途半端なことを言い出したみたいで、
慌ててちょっとおさらいしたりしています。

今後、万一なんか起きたのを発見できたら、このブログで報告しますし、何も起きなくても、思いついたことなどを随時書いていきたいと思っているので、
気長によろしくお願いします。

あ、スタジオコンテナの発足は、小林さん的にそこそこ大きな最近の出来事のようです。
どのくらい経営権を握ってるのかがわかんないんですけど、
少なくとも取締役ですし、「自分が動かしてるんだ」「成功させよう」という自覚は持ってるようです。
Commented by A at 2018-04-05 09:41 x
ご返信ありがとうございます。
会社設立やら、謎のベテランアピールやら、就職面接ネタやら(見てないくせに勝手に想像しますが)、
なんか「お仕事頑張るから!」みたいな。
いや頑張るのは甚だ結構なのですが…。

こちらのブログ読者としましては、小林さんの取締役兼作家兼演者としての頑張りそのものよりも、それによって引き起こされる(かもしれない)味わい深い何かに期待してみます。
記事を楽しみにしておりますので、また時々お邪魔させて頂きます。