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Winny裁判 最三決H23.12.19

先月最高裁が出ていたのに、すっかり忘れていた。
多分二審と同じ無罪だったから、同じ理屈だと思ったんだろう。
で、今日ちょっと見てみたら、判例のpdfが20ページもあったのでびっくりした。

ウィニーを公開することが著作権法違反の幇助になるかについての問題点及びそれに対する一審(有罪)二審(無罪)の態度については、以前の記事にまとめてある。
要は「包丁を売るのが殺人の幇助なのか?!」的な問題ね。

で、最高裁は、二審よりは厳しい態度で臨んでいて、幇助行為については古典的な幇助に加え
当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たる
としている。
二審が
著作権侵害行為に使われることを認識しているだけでは足りず、侵害行為をするようネット上で勧めてソフトを提供する場合に成立する
と、「違法行為をやる気」もサポートしろ、と言ってるのに対し、最高裁は
やる気のサポートは不要で、「やる気満々集団」だと知って道具を提供すればよい。
としている。この点で最高裁はむしろ有罪にした一審と同じ理屈をとっているのだ。
だから二審があげていた刑法の謙抑主義もあげてない。
そして客観的に幇助行為があったことも認定している。

ただ最高裁は一審と違い、故意を認めなかった。
これもなかなか薄氷をわたるぎりぎりな認定という感じがして、
「今回は特別に見逃してやるぜ」的なにおいがする。
このへん、幇助罪の成立を認めながらも実質的違法性を考慮した大谷裁判官の反対意見の方が理論的にきれいという感じがする(多数意見より反対意見の方が大体理論はきれいに仕上がっているものだ)。

総じて最高裁は、事件当時、ファイル共有ソフトはまだ新しい存在であったことをふまえ、ソフトの開発に過度の萎縮効果を生じさせないことを考慮したものと言える。
最初だから良いけど、次からはダメよ。
というところか。
Commented by uneyama_shachyuu at 2012-01-29 08:17
お返事が遅れて済みません。
年末から業務提携の話が幾つも入ったり、急なM&Aの話が入ったり、M&A民間資格の講座を受けたり(高いぜ;;)、依頼人がやったらアカンことをやって後始末に追われていたり…もう一月は何だったんでしょ??(汗)

さて、判決を拝見しましたが、故意論としては、何だか教科書に照らせばすっきりしない、また感覚的な問題としてもすっきりしない、ただ、ソフト開発を表現の自由並みに重要な権利と捉え、保護の観点を考えて謙抑主義に照らして要件定立をして当てはめを行った…という感じもしますね。

反対意見は、概括的故意を持ってきましたが、それだとかなり処罰の範囲が大きくなり、委縮効果が出てきてしまいがちで、反対意見の人もそこを気にしている感じがして、結局賛成に回った、というところではないでしょうか?
Commented by k_penguin at 2012-01-29 11:54
畝山さん、年明けから大変だったんですね。
でも充実しているようで、よかったです。

この事件は、ネットありきのまったく新しいタイプの犯罪なので、
教科書からすっきりしないのは仕方がないことです。
要件としては、最高裁のもので良いと思います。
感覚的な衡量としては、
行為自体は完全アウトだけど、今回だけは有罪にしては可哀想すぎ
という点で一致していて、
それをどう法律構成するかが多数意見と反対意見との違いかな、と。
by k_penguin | 2012-01-14 23:14 | 裁判(判決評) | Trackback | Comments(2)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin