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東京都マンガ規制条例の悪いとこ

今回は、改正された東京都青少年保護条例の条文をちょこっとだけ読む。
まあもう決まっちゃったことだし基本的に俺はかんけーないから、条例に賛成しようと反対しようと、ご自由にどうぞっていうのが俺の考えなんだけど、
某所で話していて、ぶっちゃけ賛成派も反対派も、条文読まないで議論している奴が多いってことに気がついたのだ。まあ、俺も含めてなんだけど。
おかげでいろいろ話がずれたり、誤解が出たり、またそれを煽ったりする奴が出るわけで、
そこでここらで1つ、条例の条文を読んでもいいじゃないか、と思ったわけだ。

・東京都青少年の健全な育成に関する条例(全文) 平成23年7月1日施行時点(pdf)

この条例には、大きく言って、2つの販売規制方法が定められている。
2つは違う制度であり、問題点も別なところにあるので、分けて考えなくてはいけない。
ところがこの2つをごっちゃにしている人がべらぼーに多いのだ。

法律的に有名なのは「有害図書指定制度」というやつだ。
検閲に当たるんじゃないかとか、行政権の濫用があるんじゃないか、とか言われる一部で悪名高いやつだ。(でもほとんどの地方自治体が採用してる)
都条例では8条以降に「指定図書」として規定されている。
指定図書というのは個別に認定されるもので、認定するのは行政、これに指定されると、青少年に売っちゃダメになり、ちゃんと客の顔見て売れだの自販機に入れるなだの、いろいろ言われ、違反には罰則もつく、という、きっついことになる。
俺はみんなが問題にしているのは当然こちらだと思っていた。

ところが
一般的にネットで「しずかちゃんの入浴云々」「ぱふぱふ」とぶーたれられているものが、「指定図書」にあたるわけはないのだ。
条文を見てみよう。
第8条(不健全な図書類等の指定)知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
一 (略)
二(略)その内容が、第7条第2号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの

(第7条第2号
漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの)

8条は、7条に比べ、さらに「強姦等の著しく社会規範に反する」という要件が加わっている。指定制度がきっついものだから、要件を厳格にしたのだ。
さすがに「しずかちゃんの入浴を覗くのびた」がこれにあたると騒ぐ奴はいないだろう。
とすると、みんなが問題にしているのは指定図書制度ではない、と言うことになる。

指定図書制度じゃない方の制度は、7条の区分陳列だ。いわゆる「成人コーナー」の設置で、こちらはゾーンニングと呼ばれる規制方法だ。

第7条(図書類等の販売等及び興行の自主規制)
図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者(略)は、図書類(略)の内容が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類(略)を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない
一 (略)
二漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

こちらの要件なら、まだ「ぱふぱふ」なんかはありえそうだ。
いや、正直俺には「ぱふぱふ」が児童買春を「不当に賛美し又は誇張」してるとはとても思えんのだが、なぜか「曖昧な表現」だからという理由でこの要件を脳内削除して適用する人が多いので、一応そっちに従っておく。
それでも「性交若しくは性交類似行為」ではない「しずかちゃんの入浴のぞき」は確実にあり得ない。

ところで、区分陳列は規制は規制でも、自主規制だ。
「努めなければならない。」と、なってることから分かるように、この規定は「青少年に売らないように前向きに頑張ろうね」と努力目標を言っているにすぎない。指定図書制度と違って罰則もない。ゆるいのだ。
自主規制である区分陳列は、指定図書制度に比べ表現の自由に対する制約ははるかに少ない。つか、「自主規制」という建前がちゃんと守られている限り問題はない。

そして、前向きに頑張る主体は出版社や本屋さん達であって、行政ではない。
つまり、規制対象になるかどうかを判断するのは、行政ではなく、本屋さん達なのだ。ここも指定図書制度と違うところだ。
だから、区分陳列に対して「行政の濫用がある」というのは基本的に間違っている。
そもそも行政が判断しないからだ。

区分陳列は柔軟性のある規制方法だと思うが、ファジーな分だけ運用のあり方に実態が左右されるという気がする。
やりようによっては規制がないも同然になるし、逆に行政指導のあり方によっては指定図書制度と変わらなくなってしまう危険もあろう。


 と、まあ、以上のように、指定図書制度と区分陳列とは分けて論じなくてはならないし、
区分陳列の要件で指定図書にされると思うような誤解は絶対に避けなくてはいけない。
しかし、これを混同してる人が多い。
単なる不勉強かと思っていたが、
ところがなんと、
都のパンフレットまでが区分陳列の話と指定図書の話を混ぜてしまっている。(Q&AのQ6だけが指定図書制度、それ以外は区分陳列を前提として答えている)
また、平成二十二年第四回都議会定例会本会議での質疑でも、指定図書制度についての判例である「岐阜県の同種条例に係る最高裁判決」を区分陳列の合憲判例としてあげてしまっているうえに、指定図書の指定の際の要件のはずである「青少年健全育成審議会への諮問」もあげている。(A4参照)。

どうも、担当者も2つの制度をごっちゃにしてるっぽい・・・。
(そして質問者もそれで引き下がってるし^-^;)
8条の指定図書は当然7条にも当たるため、指定図書については区分陳列と指定図書制度がダブルで適用されている。
ここから都の担当者が2つの制度を混同したらしいが、
これではみんなが混乱しても仕方がない。
都の連中は大した規制じゃない風なこと言いながら実はきつい販売規制をかけようとしている、と思われて、
大騒ぎにもなろうというものだ。
これは東京都の条例が悪いのではない、都の周知徹底の方法が悪いのだ。
これにはさすがに俺も呆れた。


俺としては今回の改正に「特に反対はしない」という程度の意見しか持たない。
反対を主張して次につなげるもよし、賛成してさらに厳しい規制を求めるもよし、好きにやってくれ。
ただ、当の条例を毛嫌いするだけで正しく理解しないで議論をして、ネットで無駄に不安を煽られ、それを「萎縮効果」と間違えてますます条例が嫌になる、そーゆーデフレスパイラルはやめて欲しい。

そして、条例の担当者は、区分陳列と指定図書制度の分別を徹底しろ。


追記メモ
アニマゲ丼 8月29日 都庁の人に聞いてきた 
新条例に対する、中立かつ実用的なアプローチ。
都庁の中の人の返事も、行政のものとして模範的と言える。
by k_penguin | 2011-02-16 12:28 | エンタテイメントと法 | Trackback | Comments(0)
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