裁判員裁判で検察側が初の控訴
裁判員裁判で検察側が初の控訴 覚せい剤無罪判決

興味持ったのでメモ。
成田空港があるため、千葉地裁は、覚醒剤営利目的輸入についての裁判員裁判事例が多い。
薬物事犯については、裁判員による裁判も厳しい処罰をする傾向がある。

今回は覚醒剤をチョコレート缶に隠し、マレーシアから持ち込んだとされるもので、客観的事実に争いはなく、
缶の中身が覚醒剤と知っていたかどうか、つまり故意の有無が焦点。

新聞によれば被告人は「缶は土産として他人に渡すよう預かっただけ」と述べる。
その一方で、同じボストンバッグで偽造旅券を営利目的で運んだことは認める。

無罪判決が出たときに裁判員の1人が語った「この人がやったと言い切れる確実なものがなかった」ため無罪、という無罪推定原則そのままのコメントに一種の感動を覚えた。
ある意味当然のことながら、プロの裁判官はなかなか言えない。
それを言うことは、つまり
「調べたけどボクはわかんなかった。」
と、言うのと同じであり、それで給料もらっている人が言うようなことじゃないからだ。
で、なんかプロっぽいことをいうとなれば、どうしても無罪より有罪の方が「仕事した」感がある。

そのへん、最初から素人ならば何の気兼ねもなく検察に
「それだけじゃ(有罪かどうか)わかんない」
と、言えるというものだ。

覚醒剤所持、輸入関係では、故意が認められなくて無罪になるケースは珍しくない。
そして今回の事例は個別事例としては、プロでも有罪無罪の判断が分かれて良いビミョーなものらしい。
だとすると、控訴審での判断に、事実認定が裁判員による裁判でなされたものであるということが影響するかどうかがどうしても焦点になるだろう。

ここは俺としては、せっかく導入した裁判員制度なので、相応の尊重はして欲しいと思う。
検察によって何らかの新しい証拠が出されれば、ひっくり返っても仕方がないこともあろうかと思うが、特に何も新しい手がないのであれば、原審の判断を維持して欲しいと思う。


なお、判例時報2073-2074に裁判員制度の量刑の動向についてまとめた記事があった。
印象に残っているのが、裁判員は「道具型」の共謀共同正犯理論に感覚的に納得しないらしい、道具役については(せいぜい)幇助犯的にとらえるらしい、ということ(幇助犯「的」と書いたのは、あくまでも量刑の話で犯罪事実認定の話じゃないから)。
そういえば、今回のケースも、覚醒剤については、一方的に利用されただけととらえることが出来る。
プロも裁判員も基本的に、
ある程度犯罪に関わる行為をすれば処罰は必要である、という発想をすると思うが、
どの程度の行為が「犯罪と関わった」と判断されるかの感覚は共謀共同正犯を当然ふつーの共同正犯ととらえる検察と裁判員とでは異なるのかもしれない。
by k_penguin | 2010-07-08 21:05 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(3)
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Commented by smashige at 2010-08-01 12:28
お久しぶりです。
ボクも、故意であるという証拠がなければ、やっぱり、共同正犯とは感じないですが、ある程度犯罪に関わる行為をすれば処罰は必要である、というのもよくわかりますね。
だけど、捕まってこうして裁判までかけられてる事自体、ある程度の処罰になってるんじゃないの?という感じもします。。

裁判員制度で裁判員に「それだけじゃわかんないじゃん」と言われるのは、プロの方々には「もうちょっと仕事してほしいもんですなー。。」と言われているように聞こえるんですかね?
裁判員の方々はそんなつもりではないんでしょうけど。。。
Commented by k_penguin at 2010-08-01 14:48
smashigeさん、お久しぶりです。

>だけど、捕まってこうして裁判までかけられてる事自体、ある程度の処罰になってるんじゃないの?

 これは法律家と一般の方の認識が大きく食い違うところですね。
法律上は、捕まって裁判にかけられることは、処罰の必要性を丁寧に吟味するための「必要悪」ととらえられていて「処罰」そのものではないですね。
無実の人は刑事補償が受けられます。
Commented by k_penguin at 2010-08-01 14:48
>「もうちょっと仕事してほしいもんですなー。。」と言われているように聞こえるんですかね?

 プロは有罪無罪を決めるのは集められた証拠の良し悪しであると考え、
被告人が本当に犯罪をしたかどうかという推理ドラマのような発想はしません。
裁判員にもプロの発想をすることが求められます。
「それだけじゃわかんないじゃん」と言われるのはどうしても
「あんたたちが持ってきた証拠はゴミだよ」ということと同じ意味合いを帯びてきます。

一方こういう場合には、
犯人が狡猾なやつで、うまく証拠を隠しているというケースも結構あります。
どうみても犯人なのに、証拠がなくて起訴できない場合は結構あるものです。
法廷で検察は「犯人が狡猾だから証拠がないんです」を匂わせる主張をすることがあります。
法の建前からは、証拠がゴミであれば無罪としなければなりませんが、
こういう場合は有罪にしたい気持ちになることを狙ったものです。

検察が言外に匂わせている空気を読むか、法の精神を貫くかが
裁判員の悩みどころになるのではないかと思います。
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法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。
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