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LIVE POTSUNEN2010『SPOT』

小林賢太郎のソロライブもこれで4回目。
そして、今までの3回、俺はろくに誉めたことはなかった。特に前回の『DROP』はひどくて、虚しさを小手先の技術で誤魔化す器用貧乏といった体であった。

そんなわけで、今回は何一つ期待しないまま出かけた。
2階席だったけど、まあいーやって思った。


小林賢太郎ソロはラーメンズほどには人気はないと認識しているけれど、それでも東京グローブ座はほぼ満席だった。
客の男性率が前よりも上がっているような気がする。
フライヤーは相変わらずよくわかんない。
コバケン好みのブラックオンブラックの印刷だが、インクが変な匂い。
そんなわけでテンションもあがらないまま、舞台は始まった。

ライブポツネンはドミノ倒しみたいなものだ。
しかもドミノを並べる作業から見させられるドミノ倒し。
最初の方、つか大半は地味にドミノを並べているわけで、良く言えばミニマム、悪くいえば情報が薄い。
もはやコントだとは思っていないから、笑いどころがないのは別によいのだが(1階席から笑い声が立ちのぼっているのに、2階席は静か、ということがかなりあった。どうにもお追従笑いの客が多い)
見ているうちに眠くなってくる。
最後に向けて綿密な伏線が張られているので、物語を作る上にいろいろと目に見えない拘束があり、そのせいで情報が薄くなっているらしいと頭ではわかっているのだが。
 でも眠い。


今回のお題は「スポット」だが、スポットライトだけではなく、「すぽっ」という擬音とか、「ポット」とか、なんかちょっと苦しいものも出てきている。
また、1つ1つの技は今までとはさして変わっていない。アナグラムとか、謎の装置とか。
ハンドマイムなぞ、背景に流す映像が、手描きの一枚絵をなめ撮りしたものになっていて、技術的には後退している。

しかし、見ているうちに『DROP』とは違う気分になってきた。
・・・まあ、これはこれでいいじゃん。
と、いう気分になってきたのだ。
どの作品も一応「ないものを表現する」という方向で一致していて、全体的にまとまっている雰囲気をまとっている。

「(ないものをあるように)粧うこと」とか「(偽物が)本物のふりをすること」とかは小林賢太郎の十八番であったが、今までそれをこのように正面から肯定的にとらえたことはなかった。
この何気ない視点の変化が、何というか今までと同じなんだけど違う感じを漂わせている。
ちょうど、見慣れた小道具に当てるライトの方向を変えると、
何の意味もない影の形が象のシルエットに変わるように。


なんといってもミニマムにこぢんまりとやっているため作品自体の力がどうしても弱く、
観る方もなかなかテンションがあがらないし、相変わらずと言えば相変わらずの、なんか持って回った言い回しだしで、
今までと大きく違っているとは決していえないのだが、
とにかく俺としては
前と比べて良くなったということで、
今回は満足したのだった。




最後2つの作品は、当ブログの得意とする「深読み」的には、
彼が自分を肯定的にとらえたという点で驚くべきもの。
うるう人の話は、相変わらずひとりぼっちののラストだが、珍しく、というか、おそらく初めて見る、話として壊れた箇所がない作品。
こういう素直に泣ける作品を見ることが出来て本当にほっとした。
(この辺はまた改めて記事を書くかも)

ポツネン『SPOT』 2 うるう人の補完計画

ポツネン『SPOT』 3 ガジェット群一解釈


ポツネン『SPOT』番外編 小林さんと(ツアー前半の)お客さん
Commented by K☆SAKABE at 2010-03-30 00:56 x
penguinさん
お疲れ様です。

実を言うと「SPOT」は許せる、と言うか面白みが無いぶん破綻も無い、と言うのが正直な感想でした。
面白みがないと言うわけでもなかったんですけどね。
冒頭のポンプ式の井戸とけん玉の不具合を確認する件、上部の足場を行き来する足音や、医者と大きな患者とのやりとりに、
こちらの想像力がいい具合に刺激されて新鮮でした。

>「(ないものをあるように)粧うこと」とか「(偽物が)本物のふりをすること」
>今までそれをこのように正面から肯定的にとらえたことはなかった。
これって、こちら側の想像力をある程度信用(と言うにはまだ疑わしいけれど)して作られているような気もします。
これまでの、無いけれどパントマイムや登場人物ににすべて語らせている一方的な見せ方とはちがった作り方のように見えました。
うるう人の穴の中に下がっているロープが象徴的に見えたのは、考えすぎでしょうか。

>素直に泣ける作品
50音を並べかえた「安いたくらみ云々」に、不覚にも涙腺が崩壊したことをここに認めます。
Commented by k_penguin at 2010-03-30 12:02
SAKABEさん、おいでやす~。お待ちしておりました。

今回は、「深読み」的には興味深いけど、
ふつーの舞台としては面白いのかどうなのか自分でもよくわからなかったです。
だから記事も肯定的なのかそうでないのかわからない曖昧な感じになってしまいました。
ふつーだったら「話に破綻がない」というだけで評価したりしないのですが…。

>こちら側の想像力をある程度信用
 いままでときどき見られた、「どうせわかってもらえないんだから」という投げやりな態度が影をひそめ、比較的ストレートに球を投げてきていると思います。
「シリーズ「ない」」なんて、どストレートに「ない」ものを表現していて、
その結果ただの嘘つきになっていますが、
その嘘を隠そうとしない、という点が今までとは違うところです。


うるう人の話はワタシも涙を流しましたが、
ただ、ワタシは年をとって今ではケロロ軍曹でも泣くくらい
涙腺がダメになっていることを告白しておきます
(多分ゴムパッキンがひび割れているんですね)
Commented by K☆SAKABE at 2010-03-30 19:10 x
良くも悪くも突っ込みどころが無い、と言うのが突っ込みどころかも。

アラカン何度も引っ張ってたのには、「ケンカ売ってんのか」でした。
さすがに私の見た回では、失笑とおり越して客席「ポカン」、って感じになってました。

それから、いろんなとこでやってるらしい客いじり。
だいたい同じタイミングでやってるようなので、もしかして仕込み?
とかって思っちゃいますけどね。
私が見たときもやってましたよ。
最初の暗転で入場してきた親子連れに、
「いらっしゃいませ。今、これがここにあって・・・」てね。
あと、巨大怪獣(大きな患者さん。メスらしい)の歩く振動にからだ揺らしながら
「いっしょに揺れてる人がいるねぇ。いいよぉ。」
と、客席に向かってご満悦でした。

何なんだろう・・・?

素直に客に歩み寄ったってふうに思えないんですよね。
どこまでも客席とステージには、見えない溝を感じるし。
その次に何をしでかすんだろう?って、ちょっと心配。
Commented by k_penguin at 2010-03-30 22:17
>アラカン
 荒又ヒョウカンでしたね。たしか。
小林さんの考える「世間でうけるお笑い」のイメージって異常に古いんですよね。

>客いじり

椅子落語の「客いじり」は毎回同じこと言っているようですね。
小林さんに普通の客いじりは出来ないと思うので、
出来ないことを無理にやろうとするよりは、
ああいう「客いじった風」の処理のがよいのではないかと。
落語のアタマに客席暖めるためにはあれで十分だと思います。
多分「一緒に揺れている人」もいないしね(もしくは自主的サクラ)。

DROPで出てきた「観客問題」が今回無くなっているのですが、
それは、彼が客を相手にしないということに決めたからだと思いました。
すぽっと空いた穴の中に一人ぼっちでいるのだから、
コミュニケーションがないのは理にかなっているし。
まあ、あれら「客いじり」は
土でてきた客に話しかけているようなものでしょうね。
Commented by k at 2010-03-31 16:48 x
はじめまして。以前よりこちらのラーメンズ(小林賢太郎)についての考察を拝見させていただいております。

今回、私もSPOTを見に行ったのですが、見せ方の手法は、相変わらずの上手さがありました。でも味とは言え、やはり個々のネタのオチの弱さを感じました。
全体的なまとまりとしては「ライブ ポツネン」は、こう。みたいな枠の中で収めようとしてるというか。ネタに目新しさも感じなかったので、予定調和の中での小林賢太郎、中間報告と言った印象でした。
ただ、ラスト2本のネタ、うるう人と王様の部分ですが、一人穴の中でとじこもる、うるう人と、1坪の箱庭の中で国を栄えようとする王様の対比が印象的でした。
あと最後に王様がいった「これでいいのだ」 の一言。そこに完璧主義の呪縛から解かれた小林氏の結論を見た気がします。この一言があったおかげで、次の公演でどうなるのかが楽しみに思いました。
Commented by k_penguin at 2010-03-31 18:54
kさん初めまして。コメントありがとうございます。

今回は、teeveeのオープニング映像もなく、全部「一人で作った感」がありますね。
1坪王国物産展なのだから、そうしたのでしょうが、
見に来る人は、そういう事情まで関知しないので、
そうすると、国としての規模の小ささがそのまま作品の規模に反映してしまうのが
マイナスになってしまいます。
ただ、ミニマムなものを扱うこと自体はテーマとして「あり」だと思うので、
あとは、見せ方でその辺はカヴァーできるのではないかな、とか思います。

うるう人と王様の比較は興味深いですね。
ワタシは、ラーメンズやめる気かなってちょっと思いましたけど
ま、それはおいといても、
完全に引きこもっているうるう人に対し、
王様は一人でも、ポットの貨幣価値の上がり下がりとか一応気にしていたりして、
国際社会の中でやっていく気があるんですよね。

>「これでいいのだ」
 この一言は大きいですね。
惜しむべきは、その大きさが一般には伝わらないであろうことですが、
まあ、それは今後の展開を待つ
と、いったところでしょうか。
Commented by K☆SAKABE at 2010-04-01 02:04 x
>客を相手にしないということに決めた
エアーコミュニケーション(言葉あってます?)みたいな感じ?
>土でてきた客
それすら居ないのかも。
コミュニケーション(みたいなもの)すら台本どおりなんでしょうね。

>うるう人と王様の比較
>改めて記事を書くかも
言いたいこと我慢して待ってますね。
Commented by k_penguin at 2010-04-01 13:00
うるう人とか王様とか
記事を書くと言いつつ、実はどう書くか悩んでいるので、
SAKABEさん何か発言ありましたら
ここで書いていただけた方が
ワタシとしてはありがたいかも・・・。

>エアコミュニケーション
 エアギターのコミュニケーション版のような感じでしょうか。
「客いじり」というものは
本当に客とコミュニケーションとりたいと思ってやる訳ではないので、
エアコミュニケーションでいいとワタシは思います。

ただまあ、客がみんな「これエアコミュニケーションだ」と思い出したら、
客席と演者の距離を縮めるという「客いじり」の本来の目的も達成できないけど…。
Commented by K☆SAKABE at 2010-04-03 10:08 x
えーーーーーー、書かないんですかぁ?
penguinさんの記事を拝見してからと思っていたので、「お先にどうぞ」と言われると緊張するじゃないですか。
でもまぁ、そういうことなら遠慮なく。

>うるう人
うるう人=はみだした人=小林
穴を掘り続けること=世間からあぶれないための手段=舞台にこだわり続けること
垂れ下がったロープ=地上に戻る手段=まわりからの助言、意見、救いの手
落とし穴の中=うるう人の居場所=小林のポジション
のように見えたんですが、実を言うとこのネタふさいだ印象がなくて、外に向かって開かれているようにさえ思えたんですよね。
うるう人は最終的に自分の状況を受け入れたように見えました。
(個人的にここ、小林がようやく見せた心栄え(弱いですけど)に見えて、そこのとこに泣かされたと思ってます。)
穴の中でうなだれて膝を抱えますが、その彼の頭上には青い空が広がっている。
決して扉は閉ざされていなくて、ぽっかりと「穴」が開いているわけです。
そこが救いというか、現状打破のきっかけであってほしいと願うんですが・・・
Commented by K☆SAKABE at 2010-04-03 10:08 x
叫んでも届かない。
穴が掘られていることにも気づいてもらえない。
誰も来ない、誰の目にも触れない場所に落とし穴。
これを、誰も目指さない、誰も評価しないと読むのは無理があるかもしれませんが、「うるう人」が小林だとした場合、「ここ」の位置づけとして個人的には「露出しないこと」と読みました。
「ここ」にこだわってきた理由は小林にとって必須条件みたいなものですから、そこを自ら否定するなんてことはありえないのかもしれませんが。
こう見ると小林特有の自虐ネタなんですが、これまでに無かった「このままじゃ終わらないゾ!」っていうプラスαが加味されているように見えるんですよ。
「無人島の男」は魔法使い頼みだったけれど、ロープに手が届かない今となっては、うるう人は自分を信じるしか救われる道は無いわけですから。(今はその気持ちが弱いだけ・・・だと思いたい。)

>「王様」
=片桐
なんだろうなぁ、くらいの印象でしたね。
penguinさんのような、危険な臭いを感じ取るには至りませんでした。
私としては、「片桐への憧れ」なんだと思っていました。
Commented by K☆SAKABE at 2010-04-03 11:04 x
あ、突っ込み所をひとつ。
落とし穴の土って何処にいったんでしょうね。
地上にほおり出せないでしょうから、穴は掘り進められないはずなんですよ。
それはきっと、スタッフが「うるう人」にはわからないように、何かしら手段を講じているんでしょう。
ファンはそれを、見なかったことにする。
「うるう人」は一人で穴を掘り進めていると思い込む・・・
Commented by k_penguin at 2010-04-03 14:43
SAKABEさん、ありがとうございます。
参考になりました。これから記事書きます。

うるう人の解釈、大筋はワタシと同じですね。
SPOTは、「真上にある丸い光」がメインのイメージのようです。
けん玉の球も小林から見て「真上にある丸」になりますし、
ハンドマイムも最終的に垂直に穴を上り、輝く「王様」と出会います。
うるう人も真上には穴が空いているのでしょう。
また、うるう人は、穴の中で「落ち着いている」そうですから、その状態を受け入れている点も同意です。

ただ、「このままじゃ終わらないゾ!」部分は、うるう人からは感じず、
その部分は「王様」が担当したと考えました。
また、「穴を掘る」ことの意味はSAKABEさんとやや違うように考えています。
どちらにしても、小林さんが表現したいと思っているイメージは
2人とも大体同じく感じ取っている様です(イメージの解釈が違うけどそれは個人差の範囲)
Commented by k_penguin at 2010-04-03 14:44
>王様
彼は「一坪王国」の主なので片桐ではなく、小林さん本人だと思います。
一坪王国物産展が、ライブポツネンです。
王様それ自体には、特にワタシは危険な匂いは感じていませんが、
(あ、ラーメンズやめるつもりというのが「危険」ならば、危険なのかもしれませんが、ワタシ個人的には、あんなものもう止めちまえと思っていますので)
王様のやる気がいつまで続くのか不確定だなとは思います。

落とし穴の土
あれは多分多くの方がつっこんでいると思いますが、
それはもう「たとえ話だから」ってことで、ワタシはなしってことにしておきました。

うるう人の話は、後ろのスクリーンに縦にまっすぐの一条の光の帯がはしっていて、
穴を掘る小林のマイムが光の中にシルエットとして映り、
ちょうど穴の底で土を掘る人のように見えます。
ロープは気がつかないうちに少しずつ上に引き上げられているのですが、スクリーンだけ見てると、逆に穴がだんだん深くなっていくように見えます。
(ロープの持つ意味ってワタシはそこしか考えませんでした)

多分あの落とし穴はそーゆーよーに深くなっていく原理なんだ。
 と、いうことでワタシは処理しました。
Commented by k_penguin at 2010-04-10 12:49
もしも『SPOT』について、批判的な意見持っている方とかいらっしゃれば、
意見聞きたいな、とか思っています。
今回うちは余り文句つけていないので、
否定的だけどコメ書きづらいと思ってる方がいたら、
もったいないな、
とか思って。

普通に見て、批判が出てもよさそうなのですが
もう客は、あーゆーのに慣れちゃったのかなー・・・
Commented by yuma at 2010-04-28 20:59 x
SPOTは観てないので見当違いかもしれませんが・・・

そういえば、「閏」という漢字は「一坪王国の王様」っぽいですね。
Commented by k_penguin at 2010-04-28 21:43
そういえば、「うるう」って、漢字があったんでしたね。
小林さんが意識したのかしてないのかは分からないけど、
なるほど、
なんか引きこもってる感ある漢字で、
ぽいですねー。
by k_penguin | 2010-03-27 23:55 | エンタ系2(ライブレビュー) | Trackback | Comments(16)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin