篠山紀信の家宅捜索と朝日のルーティンワーク
篠山紀信が2008年夏に青山霊園(東京)などの屋外で女性モデルのヌード撮影をしたことが、公然わいせつに問われて家宅捜索されたそうで、
で、それ自体には特に意見はなかった。最近の写真家はともかく、昔は写真家ってアングラな部分があったし、69歳の篠山紀信は確実に「昔の写真家」の部類にはいる。
家宅捜索くらいで芸術魂がゆらぐわけはなく、だったら大したニュースではないのだ。
ネットの反応も薄かった。篠山紀信の屋外ヌードは昔からのものだったから、「何で今さら」くらいのものだった。

そしたら1週間ほどしてから、朝日新聞の文化欄にこの件に関する記事が載った。
「表現の自由」関係に警察の捜査が入ると、とりあえず文句つけるのがマスコミなのは分かっていたけど、こーゆールーティンワークみたいな記事出されると、別の意味で表現の自由がヤバイかも、と思ってしまう。
東京都写真美術館の笠原美智子事業企画課長は「作品をわいせつと判断していないのに、それを写す行為をわいせつだと取り締まるのはおかしいのでは」と指摘する。

一読しておかしいと思うのは、撮れた写真のうちの1枚がわいせつではないから、撮影行為もわいせつではない、という理屈は成り立たないということだ。
撮影行為は、写真集に載せる1枚をとるためにシャッターを1回切って終了するわけではない。
いろいろなポーズの写真を撮って、その中のわいせつと判断されない1枚を写真集に載せた。
と考えるのがふつーだと思う。指摘は確実にずれている。

さらに(ノ∀`) アチャー なのが、篠山紀信へのインタビューから
「ロケ現場ではモデルにガウンを着せ、周りに見張りを立てたうえで、辺りに人がいない瞬間を見計らってガウンを脱がせ撮影した」
という部分を引用した上で
 
都市を背景に撮ろうとする以上、モデルを完全に囲って隠すことはできない。発言からは、人目に触れさせまいとの意識がうかがえる。

と、述べている部分だ。
仮に裁判になったとしたら、これはこのまま検察側の、篠山紀信は撮影行為をわいせつだと十分認識していた。という故意の証明に使える。
悪いことだと思っていたから見張りを立ててこっそりやったんだろう、ということになるのだ。
記者はどうも、一般の人に迷惑をかけないように注意を払ってやったのだから、公然わいせつにはあたらない、と言いたくてこの文を書いたらしいのだが、どうにも説明不足が過ぎる。
公然わいせつの成立は実際に人が見ていたかどうかとは関わりなく・・・なんて法律的な解説をする気にもなれない。それ以前の話だもの。
この人達、あんまり表現の自由を守る気がないんじゃないかなー。

唯一まともなコメントが、写真評論家の飯沢耕太郎氏のもので
90年には問題にならなかったのに今回は家宅捜索された。社会の空気の変化を感じて、ほかの写真家が自己規制しかねない

というものだ。

要するに、表現の自由の弾圧とかいう話ではなくって、社会の空気が変わったのだ。
90年と言えば、バブル全盛期。
ヘアヌードもそろそろブームになる頃だったかなあ。アートはもてはやされていて、「まあ、ゲージュツならばいいんじゃないの」って雰囲気だった。
それに比べれば、今は確かに、「芸術」というのは免罪符にはならない雰囲気がある。
店舗のシャッターや公共物を汚すストリートアートやダギングの類がこれに一役買っていることは間違いなかろう。
街の中で素っ裸の撮影なんて、慶応の学生だってやるようなことだし、発表の場も写真集から無料のネットに移っているし、もう芸術は特別扱いされることではなくなりつつあるのだ。

今回件が起訴になるかどうかはおいといても、篠山紀信というビッグネームへの家宅捜索が一般に対する警告の意味を持っていることは確かだろう(果たしてニコ動に投稿する人たちなんかがこれで抑制されるかは疑問だが、警察もちょいちょいやり方がずれているからなあ)。

ある意味アートが一般に浸透してきたと言うことかも知れないね。
by k_penguin | 2009-12-04 22:25 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(16)
トラックバックURL : https://shiropenk.exblog.jp/tb/13146595
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by smashige at 2009-12-05 11:01
確かに朝日の記事は中途半端な印象を受けましたね。
速報じゃないんだからもう少し頭のいいやつに書かせろよって思いました。

PC、インターネットのここ何年かの進歩というのはすさまじいですからね。。。
90年代は今考えれば、ゲージュツは結構力があった時代だったんだなって思いますね。
まだ岡本太郎もいたし、いわゆる巨匠たちが力持ってましたもんね。。
篠山紀信なんて、巨匠とは呼べないし、そういう人を養護して、警察とかに文句を言う人がいなくなってきたってこともありそうな気がするんですがどうでしょうね。。
Commented by k_penguin at 2009-12-05 13:29
ネット以前の時代では、一般大衆に向けて情報を発信すること自体、
選ばれた人でなければできなかったから、「エライ」ってイメージがありましたねえ。
今はネット規制に対してはみんなうるさいし論議もするけど(まあ、ネットで他人の意見みているんだから当然なんだけど)
ネット以外の場での表現の規制についてはだんだん不寛容になってきていると思います。

ちょっと前に最高裁で葛飾区の坊主のビラまきに対する住居侵入罪の成立に関する判決が出ましたが、
表現の自由よりプライバシーを重視して考えるのが一般の流れのようです。
意識の底に「そーゆー活動ってネットでやれば十分じゃん」という感覚があるように思います。
あの最高裁判決には少々問題があると私は思いますが、
マスコミの紋切り型の批判をみていたら記事書く気が失せてしまったので、
記事書いていません。
表現の自由表現の自由っていっぱい繰り返しておけば記事として成立すると思ってるんですかねえ・・・。
Commented by uneyama_shachyuu at 2009-12-06 15:24
ワタクシは、ちょっと違う部分…つまり人間性の問題も感じました。
「故意」を自白している部分がありましたよね。お山の大将の方って、弁護士とかをバカにしているのか、自分で独走してこーゆー「自爆」をよくするよな~、というのが第一の感想でした。うちにもあるんですよ~、おんなじような主張して平気という相手方。相手のサイトを荒らしておいて、文書で「好意で(変更)してやった」という自白したバカ(笑)。刑事事件になりつつあります。
Commented by k_penguin at 2009-12-06 18:20
そのサイト荒らしの事件、面白そうですねえ。
他人のサイトを変更したってことは、アクセス法違反やってるんですかね。
もめ事の相手方がみんなそんな感じなら、やりやすいんですがねえ・・・。

篠山紀信の「自白」は家宅捜索よりもかなり前のインタビューでの発言のようですから、
どういう文脈で言ったのかはわかりませんが、
まあ自爆にせよ、家宅捜索なんかあまり気にしないんじゃないかって気がします。なんとなくですけど。

お山の大将といえば(?)松本零士先生がマッキーに謝って和解しましたね。
まともな決着でめでたしめでたし。
Commented by k03 at 2009-12-07 22:11 x
横から失礼します。

文学史の本で読んだので詳しくは知りませんが、伊藤整のチャタレイ夫人は「芸術だからわいせつじゃない」だったのに対して、大島渚の愛のコリーダは「わいせつの何が悪い」だったとか。これはじゃあアウトなんですね…「自爆」? あと野坂昭如の四畳半襖の下張とかの、わいせつかどうかで揉める話では、検察官とか裁判官とかわいせつ判定を下す人に対して「へー、マジメなカオして裁判してるけど、こーゆーのでいたずらに性欲を刺激されちゃうのね…」とか余計な感想しか浮かびません。
Commented by k_penguin at 2009-12-07 23:53
そーいえば「愛のコリーダ」が裁判になったのはおぼろに知ってるけど、内容は知らないなあ・・・と、ちょっと調べてみたら、
なんと、無罪判決をとっていたんですね。
「わいせつ物」に当たらなかったらしいですが、めずらしいですね。

でも「猥褻がなぜ悪い」という主張は裁判所に完全に無視されたとか。
まあ、彼の論は芸術論みたいなもので、わいせつ物販売罪の違憲の主張もしていないので、
法律専門の裁判所が「発注違いです」と無視するのも
当然だと思いますが、
それでも、法廷で言いたい放題の監督は、面白い方ですねえ・・・。
Commented by smashige at 2009-12-09 21:04
どうでもいいんですが、大島渚ってまだ生きていたんですね。
もう鬼籍の方かと勘違いしておりました。。
なかなか味のあるいい方ですよねー。。
最近テレビとか出てんのかなー?
Commented by k_penguin at 2009-12-09 21:43
えっ、生きてるんですか。ワタシも勘違いしていました。
確か寝たきりみたいになったというニュースは覚えているのですが。
・・・と、Wikiを見てみたら、リハビリ中とか書いてありました。

大島渚って、本人の顔は見たことあるけど、作品見たことないんですよねー(そういう人多いと思うけど)。
あ、「戦場のメリークリスマス」は見たことあります。
Commented by smashige at 2009-12-10 15:38
ああ、戦メリは良かったです。好きでした。何度か見ました。
坂本竜一の音楽がよかったですよね。
たけしとデビッドボウイもいい味出してました。

って、「戦メリ」しか知らないんですけどね。。汗
すんません大島さん。。
Commented by k_penguin at 2009-12-11 17:55
戦メリ自体はもう知らない方も多いと思いますが、
坂本龍一のテーマソングはこの時期になると1度は耳にしますね。
ピアノバージョンの方が有名みたいですけど。

大島渚について持っている情報はそれ以外にはなぜか
シルクのパンツしかはかない、と言っていた。
というものだけです。
だから大島渚と聞いて私が1番初めに連想するのが、シルクのパンツなんですよね・・・。
Commented by パール at 2009-12-11 23:20 x
大島渚監督といえば、野坂昭如さんに殴られた映像を思い出します。

詳細をおぼえていないので調べてみたら、
監督の結婚30年記念パーティで、
野坂さんの名前を読み忘れ、
酔っていた野坂さんに殴られ、
監督は持っていたマイクで殴り返した
というものでした。

お祝いの席で災難なことです。
Commented by k_penguin at 2009-12-12 00:32
その出来事は知りませんでした。
野坂さんも大島さんも、血気盛んな方なので、
そのエピソードには「ほほえましい」という印象を持ちました・・・。

今の時代の文化人の方々にはもうこーゆーキャラは見あたりませんね。
かろうじて北野武が引っかかるかなってとこかな。
Commented by :: at 2010-01-02 10:37 x
じゃあ、お笑い芸人が性器を露出しているのも逮捕しろよと言いたいですけどね。
Commented by k_penguin at 2010-01-03 17:03
モザイクなしの露出なら当然逮捕でしょうね。
Commented by Penguinchan at 2010-01-24 02:00 x
Nudeで露出が過度だったという認識、ペンギンはNudeで逮捕されないが人だと若い女性が公園で脱ぐと夜でも立件・起訴される可能性。
 サルに似た毛の多い女性だとどうなるか?

 篠山さん これで有名にしてくれるという事件というわけでないだろう。
 大人気ないことをどうしてなさった。

 山のなかでのヌード撮影をとは何故なさらない。

 お金を貰っての撮影ならそれを依頼をしたところはどうなるか。裁判を注目したい。
 小沢さんとちがって検察横暴という人はすくない?
 小沢さんや篠山さんの件って、迷惑したひとは誰なんだろうか?
Commented by k_penguin at 2010-01-24 18:09
篠山さんは昔からこういう街中での撮影をしていましたし、
自分なりの芸術論に基づいているのでしょう。
山の中のヌード撮影もしていたと思いましたし。

小沢さんと篠山さんを同一に扱うことは出来ませんが、
少なくとも篠山さんの撮影は、近所から数件の通報があったと聞きますよ。
ご近所迷惑だったんじゃないでしょうか。
<< 埼京線内に防犯カメラ 『カールじいさんの空飛ぶ家』 >>


法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新のコメント
ブログパーツ
カテゴリ
タグ
以前の記事
検索
リンク