人気ブログランキング | 話題のタグを見る

市橋被疑者をめぐる情報戦

ここんとこ忙しかった。あと、あまり興味ある事件もなかったのでブログ更新もご無沙汰だった。
英国人女性を殺したらしい市橋被疑者が整形を重ねて逃げ回っていたらしいが、人を殺せば逃げ回るのは当然で、なぜそれが大ニュースになるのかよくわからなかった。相手が金髪女性だからかな?未だに世間に金髪信仰ってあるのかなあ・・・?
そんな彼が捕まってもあまり興味はなかった。
そりゃ整形重ねてまでして逃げ回った者が捕まったら、がっくり来てめしも喰わなくなるだろうて。

しかし、弁護団がついて彼らがちゃっちゃと働きだしたので、ようやく俺の興味の範疇に入ってきた。ニュースが「犯罪報道」から「刑事弁護」のカテゴリに入ってきたのだ。
そしてようやく俺は彼が殺人容疑ではなく、死体遺棄の容疑で逮捕されたことに気がついた。
つまり、捜査側は殺人の容疑はこれから固めるつもりなのだ。

殺人事件の捜査の場合、死体遺棄で逮捕して、取調で殺人の自白を得る。そしてその自白に基づいて物的証拠を発見して自白の信用性を固めて起訴、有罪にもって行くというのが定石だ。
もちろんこの流れを変えてゆくのが弁護人のお仕事だ。
否認を貫くなり、犯罪は認めても情状をうったえるなり、流れを変える方向はケースバイケースだが、捜査側の言いなりというわけにはいかない。
すぐに千葉弁護士会は弁護団を送り込んだ。市橋さんにお金がないにもかかわらずだ。そして弁護団は取調で「死刑もあり得る」と言われただの「親が死刑になる」と言われただのと、先生に何でも言いつける口うるさい小学生女子のような事を言い出した。
そういうことを捜査機関に対して言うのはいつものことだが、一般に公表もした。
今まではこの手の「ひどい取調をしていますよアピール」は刑事司法や冤罪などに興味ある人に向けられることはあったが、一般に公表する意味は余り認められていなかったのでされてなかった。
それが公表されるようになったのも裁判員制度のおかげだ。
裁判員は選ばれてしまうと、法廷にでは証拠以外の情報から犯罪を判断することは出来なくなる。
だから選ばれる前の一般ピープルの段階で情報流してすり込んでおこうというわけだ。

これは別にずるいことでも何でもない。だって捜査側も既にやっているから。
市橋さんが整形して逃げ回っている情報なんかは全部警察発信だ。
情報流したり、報道機関に写真取らせてあげたり、ロープから飛び出して撮影したTBSディレクターに飛びかかったり、雨の中フードをかぶせたおかげで妙に見栄えのする写真が撮れてしまって、「ステキ!」とかいうご婦人方を増やしてしまったり、まあ、そんなことをしきっている元締めは警察だ。
だったら、警察には不都合な情報を弁護側が流しても悪いことではないばかりか、むしろフェアと言えよう。

ただ記事をざっと見た感じ、断片的に「死刑もありうるといった」という事実だけを述べて、それが不適当な取調である理由らしい理由も付けないあたり、先生に何でも言いつける口うるさい小学生女子のようなかほりがするのが気になった。
小学生はたいてい断片的な事実の報告しかしない。それがいかに不当かという説明はしない。少なくとも言葉では。
そういうことは、喋りの抑揚と鼻息の荒い妙に得意げなテンションで「ね、こーんなひどいこと言ったのよ。先生もひどいと思うでしょー、まさかそう思うよね。まともな人なら絶対そう思うわよ」と言わんばかりの目つきをすることで、すべて完璧に説明できていると信じて疑わないのだ。

相手が裁判官とかのプロなら、まあ、小学校の先生並みに忍耐強く善意に解釈してくれるが、フツーの人はふつーにしか聞いてくれない。
しかも後々文章にされれば、言葉にしないことは伝わらない可能性は高い。
弁護側が
現在の取調は基本は死体遺棄罪を調べるための取調なのに、殺人の自白が欲しいがために無理な取調が行われる危険が高い状況にあり、そんな状況の下で、嘘を言って脅かした(死体遺棄罪では死刑はありえない)というのは、やっぱりヤパイ感じなんじゃないの?捜査機関はもっと取調の適正を意識して欲しい。
ということが言いたいのなら、そうはっきり言わないと伝わらないと思う。

どうも弁護側のやり方は、今までの裁判官や捜査側相手の場合と同じやり方で一般人に対処している感じがある。
相手が変われば表現方法も変わるのが当然で、その辺を心得ていないと下手すれば光市の場合のような逆効果になってしまうと思う。
Commented at 2009-11-24 18:38 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by k_penguin at 2009-11-24 20:52
どうもありがとうございます。訂正しました。
・・・何で間違えたんだろう?
by k_penguin | 2009-11-23 11:31 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(2)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin