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Winny裁判 最三決H23.12.19

先月最高裁が出ていたのに、すっかり忘れていた。
多分二審と同じ無罪だったから、同じ理屈だと思ったんだろう。
で、今日ちょっと見てみたら、判例のpdfが20ページもあったのでびっくりした。

ウィニーを公開することが著作権法違反の幇助になるかについての問題点及びそれに対する一審(有罪)二審(無罪)の態度については、以前の記事にまとめてある。
要は「包丁を売るのが殺人の幇助なのか?!」的な問題ね。

で、最高裁は、二審よりは厳しい態度で臨んでいて、幇助行為については古典的な幇助に加え
当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たる
としている。
二審が
著作権侵害行為に使われることを認識しているだけでは足りず、侵害行為をするようネット上で勧めてソフトを提供する場合に成立する
と、「違法行為をやる気」もサポートしろ、と言ってるのに対し、最高裁は
やる気のサポートは不要で、「やる気満々集団」だと知って道具を提供すればよい。
としている。この点で最高裁はむしろ有罪にした一審と同じ理屈をとっているのだ。
だから二審があげていた刑法の謙抑主義もあげてない。
そして客観的に幇助行為があったことも認定している。

ただ最高裁は一審と違い、故意を認めなかった。
これもなかなか薄氷をわたるぎりぎりな認定という感じがして、
「今回は特別に見逃してやるぜ」的なにおいがする。
このへん、幇助罪の成立を認めながらも実質的違法性を考慮した大谷裁判官の反対意見の方が理論的にきれいという感じがする(多数意見より反対意見の方が大体理論はきれいに仕上がっているものだ)。

総じて最高裁は、事件当時、ファイル共有ソフトはまだ新しい存在であったことをふまえ、ソフトの開発に過度の萎縮効果を生じさせないことを考慮したものと言える。
最初だから良いけど、次からはダメよ。
というところか。
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by k_penguin | 2012-01-14 23:14 | 裁判(判決評) | Trackback | Comments(2)

尖閣映像流出は守秘義務違反か

見てないんだけどね、Youtubeの尖閣映像。興味ないし。
要するにどっちの領海かよくわかんないとこで巡視船と漁船がモメていがみ合ったんだろ?
そんなこと前から報道されてたじゃん。40分も何を見るっつーの。何の新しい情報があるわけじゃなし。

しかしこれが国家公務員法の守秘義務違反に当たるかっていうのが専門家の中でも割れてるって聞いてようやく興味を持ったので調べてみた。
普通に考えて守秘義務違反だよね。
政府が公開しないって言ったもんを(その判断の政治的当否は別として)こそこそネットカフェまで行ってYoutubeに流したんだから。
しかもこれだけ大騒ぎになって、内規上の行政処分だけってわけにはいかないよね、何か、負けたみたいになっちゃうしw

でも守秘義務違反に当たらないっていう情報法の先生はいるし、なかなか逮捕しないし。
いったいどーなんよ、その辺。

とゆーわけで調べてみました、図をどうぞ。背景は『まりあ†ほりっく』の、よなくにしゃんだよ。
c0030037_185133.gif

要は、例の流出映像が国家公務員法の「職務上知ることのできた秘密」にあたるかってことなんだけど、これを否定するにもいくつか説があって、まず大きく
「職務上じゃないよ」派と「秘密じゃないよ」派に別れる。
で、「秘密じゃないよ」派はさらに
「以前に公にされてるからもう秘密じゃないよ」派と「保護するほどの大した秘密じゃないよ」派の2つに分かれる。
というわけ。
(ちなみに「秘密」とは(1)公にされていない(2)実質的にも秘密として保護に値するものであることを必要とするというのは最高裁の固まった判例ね)
次にこの3つをそれぞれ見てくね。

1「職務上じゃないよ」派

まず最初に言っとくが、尖閣は神戸海保の所管じゃないから「職務上」にあたらない、とは言えない。
「職務上」を、職員の所管している事項と解すれば、石垣島と神戸は所管が違うから「職務上」にあたらないと解することもできるが、
一般に所管以外の秘密であっても、それが職務に関する秘密である限り「職務上」にあたり、それが職務上知り得たものであれば、同僚から打ち明けられたものであろうと偶然知ったものであろうとを問わないと解されている。
尖閣映像は確実に海上保安官の職務に関することだ。
だから神戸海上保安庁に属しているから「職務上」ではないとは言えない。

だが、もしも神戸の海上保安官の個人的な知り合いが石垣島海上保安部にいて、それが映像を個人的に渡したのであれば、それは「職務上知り得たもの」とはいえない。
警察が石垣島にある映像を神戸のネカフェで投稿した間の流通経路を細々解明して、なかなか逮捕しないのは、このへんの問題があるためと思われる。
どうも
石垣島-海保大のコンピューターの共有フォルダ-巡視艇「うらなみ」の共用パソコン-USBメモリ-ネカフェ、という順路らしいのだが、なんか映像管理がずさんみたいで、巡視艇「うらなみ」に来るまでが誰がやったのか、それが仕事の上の正規の流通なのかがよく分からない。
間に、実はやっちゃいけないデータの流通が入っていると、果たして「職務上知り得たもの」なのかが怪しくなる。

巡視艇「うらなみ」のデータが正規のものであれば、「職務上」にあたる。



2 「以前に公にされてるからもう秘密じゃないよ」派

 新聞とかで守秘義務違反にあたらないと主張する堀部政男がこの立場だ。
国会議員が一部を見てるし、彼らから内容のあらましは国民に伝わってるし、もうそれって「秘密」じゃないじゃん。
というもの。
ただ、「あらましはもうみんな知ってるから」で、済む問題なのか、
つか、公にされてないことだとみんなが思ったから、祭りになったんだよね。

 など、疑問もある。



3 「保護するほどの大した秘密じゃないよ」派

これは「以前に公にされてるからもう秘密じゃないよ」派とも重なる面がある。
「あらましはもうみんな知ってる」ことであれば、「保護するほどの大した秘密じゃない」ともいえるからだ。
堀部政男以外の専門家は主にこの要件を問題にしていた。
大した秘密かどうかは、法廷で裁判官が決めることだが、あまり判例もないのでこの見通しが立ちにくいのだ。

外交関係の守秘義務違反といえば、有名なのが西山事件(最決S53.5.31)だが、そこでは当事国が公開しないという国際的外交慣行が存在する事項について、
「これが漏示されると相手国ばかりでなく第三国の不信を招き、当該外交交渉のみならず、将来における外交交渉の効果的遂行が阻害される危険性があるものというべきであるから」
として「大した秘密だよ」という認定をしている。
なかなか複雑なのだが、外交というデリケートな分野に裁判所は口を挟みたがらないから、
今回のケースでも無難に、「大した秘密だよ」認定をしておいて、あとは情報管理のずさんさとかで情状を軽くするんじゃないかなって思う。
いちおー捜査情報なわけだし。


というわけで、ざっと語ってみました。
サイバー犯罪というのがなかなかネックですな。


ところで、西山事件を引用したついでに思い出したのだが、この事件は、いわゆる「政府による情報操作」というやつが見事、功を奏した事件であると俺的には考えている。
沖縄返還をめぐる日米の財政密約を毎日新聞記者が暴いたこの事件、当初はマスコミはこぞって政府を追及したが、
毎日新聞記者が取材にあたり、外務事務官の女性と情を通じて情報を手に入れて、用が済んだらとっとと別れちゃった、という経緯が明らかになると、みんなそっちに飛びついてしまい、
政府追及のはずが、誰を追求してるんだか分からなくなってしまう、という流れになってしまった。
密約よりも密会の方が面白いからだ。

と、いうわけで、政府の関係者諸君は今回のこの騒ぎをおさめたいんだったら、西山事件と同じ手を使って、
その手の色恋沙汰orシモネッタを洗い出し、できれば映像つきで流しちゃえばいいと思うんだ。
そしたらネットなんてすぐ飛びつくだろうし。

・・・あ、民主じゃ、そこまでの情報操作能力ないか。 そりゃ残念。
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by k_penguin | 2010-11-13 18:54 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(31)

Winny裁判、二審は無罪

二審が無罪だったのは、ちょっと嬉しかったけど意外に感じた。ネット犯罪については厳しくのぞむだろうと思っていたからだ。
一審(罰金刑、執行猶予無し)についての記事はこちら
二審、判決要旨はこちら。

二審判決は一審判決と結果は真反対だが、法的構成の基本的姿勢自体は違わない。
一審判決との比較はこちらの記事がよくできている。
ウィニーの技術自体が価値中立的なのは一審も認めている。
で、それを広く一般に流通させた行為が、違法なファイルのやり取りという著作権侵害行為の幇助行為にあたるか、というのが争点。
包丁を売るのが殺人の幇助なのか?!とか、法定速度を超えるスピードが出せる車を売るのが速度違反の幇助なのか?!とか、ネットでもこの辺のたとえが一人歩きしているようだ。

包丁をただ売るだけの行為も、相手がこれから人を殺す気満々の奴であると知っていて売るのは幇助になりうる。
そーゆー場合って、包丁売る相手が知っている特定の人である場合であるのが普通なんだけど、別に特定の人でなくても、「殺る気満々集団」というのがいて、そこに包丁売りに行くのはやっぱり同じ幇助なんじゃないか、ということだ。
つまり、「道具」を得た人がどう使うと確実にそして具体的に予想されるか、ということが重要なのだ。
車というのは、速度違反は捕まるし、それを使って必ず速度違反をするであろうと具体的に知ることはまず無い。
では、ウィニーは?
というところで、一審と二審の判断が分かれる。

一審は
ウィニーが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていたという現実の利用状況
と評価し、二審は
ウィニーの現実の利用状況を把握するのは困難で、どの程度の利用状況があればほう助犯が成立するのか判然としない
と評価している。

つまり、一審は「あいつら、絶対やらかすぜ。」と言ってるし、
二審は「そうともいえないのでは」と言ってるのだ。
どっちの認識が実態に近いかは、俺は専門ではないので評価は控えておくことにするが、二審が刑法の謙抑主義をあげていることは付言しておく。

つぎに、二審もネット上の不特定多数に対する幇助を完全に否定するのではなく、
著作権侵害行為に使われることを認識しているだけでは足りず、侵害行為をするようネット上で勧めてソフトを提供する場合に成立する
としている。
それって、幇助じゃなくて教唆では?
って気もするんだけど、とにかく、相手が「やる気満々集団」ではない場合、「やる気」もサポートしなくちゃ幇助にはならない、ということなのだ。

ネット社会をどう評価するかが、一審と二審の違いだと思う。


おまけニュース
<ウィニー>事件の被告に「悪あがき」…NHK記者が手紙
 NHKによると、男性記者はインタビューに応じるよう求める手紙の中で「動機を正直に話せば、世間の納得が得られる。有罪になっても執行猶予がつく」などと記載。
まず、この裁判は無罪獲得が目的なのであって、執行猶予は初めから眼中にないであろうこと、そして、動機を正直に話したりすれば被告人はますますヤバくなるし、そのことを被告人は知っている、ということ
を無視した点で、この記者はいろいろ残念だなって思った。
この手紙をもらったことを弁護人がブログに載せたのは、判決の直前の6日。
無罪判決の見通しがあったのかもね。
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by k_penguin | 2009-10-09 19:23 | 裁判(判決評) | Trackback | Comments(4)

スマイリーキクチの災難

苦労して「らあめん花月」の記事を書いたそばから入ってきたニュース。

ブログに中傷書き込み、18人書類送検へ 名誉棄損容疑


スマイリーキクチは足立女子高校生コンクリート詰め殺人事件をときどきネタにしていて、オンバトで1度見たことはあったんだけど、
何で今さらその事件?に加えて、そういうことをネタにすることに余りよい印象を持たなかった。
だから今回の災難については、彼に落ち度は全くなかったとは言えないと思うが、それでもやってきた災難は予想以上に大きいものだったといえるので、書類送検された人たちが気の毒だとは全然思わない。

タレントブログのコメントに対する立件は今回が初だと思うけど、多分これからネットの書き込みに対して捜査側は厳しい態度をとるようになると思う。

こういう新しいタイプの犯罪に切り込む場合捜査側として心がけるべきことは、どこまでがOKで、どこからが犯罪になるかっていうのをみんなにはっきりわからせるってこと。
まず、小女子事件に代表されるような「犯罪予告」という類型が業務妨害罪として処罰されるようになった。
らあめん花月では、「某カルト宗教と花月は一心同体、または緊密な関連性がある」という「事実」を書いたHPが名誉毀損になった(ただし、緊密じゃない関係ならある、というビミョーさ)。
で、今回の事件では、名誉毀損罪の人と、脅迫罪の人がいて、名誉毀損の方は「足立女子高校生コンクリート詰め殺人事件にスマイリーキクチが関与していた」という「事実」を書いた人たちで、脅迫罪は「殺すぞ」という書き込みをした人だ。
つまり、当人のブログに根拠もなく犯罪行為に関わっていると決めつけた書き込みはしてはいけないし、
当人のブログに「殺すぞ」と書いてもいけない
たとえそれがあまり売れてないお笑いタレントでも。
ということは最低限、アホでもわかるようになっている。

じゃあ、当人のブログじゃなくて、2ちゃんにタレントの噂を書くのはどうかというと、これはまだわからないとして言いようがない(件のスマイリーの噂は2ちゃんにもさんざん書かれている)。
刑法の名誉毀損罪をあてはめるなら、当人のブログに書いても2ちゃんに書いても、自分のHPに書いても同じ事だし、相手がふつーの人でも大女優でもお笑いでも同じ事なんだけど、それが現実の逮捕を招くかといえば、
わからないけど、可能性はあるから何事もほどほどにね。
としか言いようがない。


「根拠もなく犯罪行為に関わっていると決めつけてはいけない」「人に『殺すぞ』と言ってはいけない」
・・・すごい常識だと思うけど、これがネットの中だと通用しなくなる。

ネットの外での情報流通はほとんどマスメディアだ。
でも、今回の事件、当初は「テレビのバラエティー番組などで活躍する男性タレント(37)」でスマイリーキクチの名前は伏せられていた。
ネットで調べればすぐにわかることが伏せられているということが、マスメディアへの情報操作の疑惑を呼び、伏せられている理由への勝手な憶測を呼び、話がどんどんややこしい方向へと曲がっていって、最終的にネットの中と外の常識をはるかに離してしまうのではないだろうか。

・・・ま、こんな面倒なこと言わなくても、「黒い噂」が好きな人は多いからなー。
ネットの中と外のいたちごっこは当面続くと思う。
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by k_penguin | 2009-02-05 21:39 | ネット(ヲチ?) | Trackback(1) | Comments(0)

ネットの泥仕合と名誉毀損

ネット書き込みで名誉棄損、二審は逆転有罪
という見出しを見た感じでは「また2ちゃんか」という感じで、そんなバカ有罪だshit!
で、終わりなのだが、このラーメン店というのが「らあめん花月」で、宗教団体が日本平和神軍ということを知っている人たちはまた別の反応をすることが多いようだ。
みんなカルト宗教嫌いなんだなあ。
大勝軒しか行かない俺としては、別に花月の金を宗教につぎ込もうが勝手だと思うけど。

で、面白いのはこの事件で無罪を出した地裁判決だ(東地判H20.2.29 判時2009)
これは、個人のネットでの表現については、マスコミによる表現よりも名誉毀損の成立範囲を限定するという新しい基準を提示している。
それについてはこんな風にまとめられているのが普通のようだ。(読売)
1審判決は、個人がネット上に掲載した情報について、「信頼性は低いと受け止められており、被害者の反論も容易」として、〈1〉わざとウソの情報を発信した〈2〉個人でもできる調査も行わずにウソの情報を発信した--場合にのみ名誉棄損が成立するという新たな基準を提示。

判決自体をあたると、実はこの基準が適用されるのは個人のネット表現というだけでなく、
被害者が、自ら進んで加害者からの名誉毀損的表現を誘発する情報をインターネット上で先に発信したとか、加害者の名誉毀損的表現がなされた前後の経緯に照らして、加害者の当該表現に対する被害者による情報発信を期待してもおかしくないとかいうような特段の事情があるとき

という限定が加えられているのだが、これは報道で省略されてしまっていて、
そのおかげで
「ネットに書き込めるなら自分で反論すれば。」という2ちゃんの荒らしが言いそうなことを地裁が言っていると受け取られているようだ。
まあ、地裁がつけた限定も、具体的にどんな場合なのかがピンとこないので、抜かされて仕方がないと言えばそうなんだけど。

この事件、花月側は決して一方的に言われっぱなしでいたのではない。ざっと見ても、どっちもどっちの怒鳴りあいに、脅迫コメントでエスカレートした泥仕合。批判HP側だけが訴えられているのはちょっと首をかしげる。
地裁の独自の基準は、そういう事情をくんでみた結果ではないかと思う。

こーゆー、「被害者とかいうけど、お前十分怒鳴り返してるじゃん」論理(対抗言論)は、昔、よしりん(小林よしのり)が訴えられた民事訴訟でとられたことがあったと記憶している。
これは、本人が言い返した分、社会的評価の低下が阻止されていて、最終的に低下していない。ということだから、「結局、名誉が毀損されていない」という結論を採るのが筋だ。
しかし、今回の地裁判決は名誉の毀損自体は認めているので、この筋は取っていない。
何でこれを取らなかったかというのは、これは刑事事件であり、「名誉毀損罪はいわゆる抽象的危険犯と解されるから、いったん表現された以上は、それが反論の容易なインターネット上でなされたものであるからといって、同罪の構成要件該当性を否定することはできないと考えられる。」
ということだと思われる。
社会的評価を低下するに足りる事実を公然摘示した以上、相手がその後どう対応しようと名誉毀損の成立要件は満たしちゃうのね。
だから、相手のその後の対応を先取りして名誉毀損の犯罪阻却要件に織り込まなくてはならなくて、それがさっきの「特段の事情」を含めた新基準の形をとったといえると思う。

この地裁判決の面白いとこは、
どうせ控訴審でひっくり返るだろうと予測して、ひっくり返しやすいまとめ方をしているとこ。

「従来の基準によった場合には、故意がないとして無罪になることもないと考えられる。」って一度書いた上で、新基準を理由を付けて書き、その理由を否定しさえすれば簡単にひっくり返した判決が書けるようになっている。従来の基準での事実のあてはめまでしてある。
なんだか、アライグマくんに言いたいこと言った後、殴り飛ばされるために静かに覚悟を決めてたたずむシマリスくんのような判決だ。


ところで、個人的には、個人のネット表現については何らかの形でマスコミよりも名誉毀損の成立を限定して欲しいと思っている。
地裁の基準を使わないとしてもだ。
プロ(一応)の草薙さんだって、書いて良いことといけないことの区別がついていないのだ。
普通の人にそれと同じレベルを要求するのって無理なんじゃないかと思う。
つか、俺も良くわかんないし。


追記 2010.3.17 最高裁が上告棄却
最決平成22年03月15日(リンク先pdf)
インターネットの書き込みも他の媒体による表現も名誉毀損の成立の基準は変わらないとしたもの。

これをインターネット上の表現も新聞などのマスコミ報道と同じ程度に資料を集めなければならないと解した記事があるようだが(J-CAST)、
「相当の理由の存否を判断するに際し,これを一律に,個人が他の表現手段を利用した場合と区別して考えるべき根拠はない。」
とされているので、必ずしもマスコミと個人を同一に扱うものというわけではないと思われる。
どちらにしても,「確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しない」点では変わらないが、
具体的にどの程度の資料、根拠があればいいのかという判断はマスコミと個人で異なりうると解する余地はある。
俺としては、個人のビラまきなどとの比較で言っているのかな、という気がした。
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by k_penguin | 2009-02-04 00:06 | 裁判(判決評) | Trackback | Comments(0)

チケットの転売は「悪いこと」なのか

はじめに
この記事は、小林賢太郎のPotsunen 2008『Drop』のチケットに関する記事として書いたものであるが、
それを語る前提として、チケットの転売全般についてまとめておこうというものである。


チケットの売り買いというのは、よくあることだし、やったことがある人も多いと思う。
ところが、多いわりには、それが「悪いこと」なのかどうなのかということが判然としていない。
いろんな意見が乱れ飛んでいる。
で、その辺について、それなりにまとめてみようと思う。

「悪い」にもいろいろある。
捕まらなければ良しと考えるか、誰にも迷惑かけたくない、誰からも嫌われたくないと考えるかは人それぞれ、個人の自由。
自分はどの考えを採るかの線引きする際の参考として欲しいと思う。

で、こちらの図解。
今回の記事は、この図につきると言ってもよい。この図を見ながら話を進める。
c0030037_2245148.gif


すげー長いよ。
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by k_penguin | 2008-03-24 21:59 | エンタテイメントと法 | Trackback | Comments(6)

チャリンカーと詐欺師の境界

“ヤフオク詐欺”女性の無罪確定
この記事の書き方だと、詐欺と明らかなものを裁判所が無罪にしたように読めてしまう。
なぜ無罪になったのか、争点の説明くらい欲しいものだ。
このニュースにTBされている記事の多くが文句ばかりなのも頷ける。
で、神戸新聞の記事(魚拓)やや説明が補われているので推測できるが、これは、詐欺ではなく、チャリンカーだ。

チャリンカーという言葉が2ちゃんで生まれたものなのかどうかは知らないが、ヤフオクで自転車操業をする人をチャリンカーという。
仕入れて、売る。
これが商売の基本だが、仕入値に手間賃を足したものよりも売値の方が高くなければもうけは出ない。
しかし、出品時の設定価格が安ければ安いほど、入札されやすくなる。
その辺のバランスを考えて出品しないと、商売は成り立たない。
ここの計算に失敗して、売っても売ってももうけが出ない状態になってしまうのがチャリンカーだ。
昔、タレちゃんという無邪気なチャリンカーがいて、安ければ安いほど客が喜んでくれると狂喜し、皆さんのご期待に応えて出品し続け、あっという間に行き詰まり、2ちゃんオク板にどでかい祭りを引き起こし、ひろゆきがオク板をあけると「タレちゃんのテーマ曲」が流れるように設定してくれるまでになったことがあったっけ。
しみじみ・・・( ´∀`)⊃旦

ともかく、チャリンカーは出品時に「ちょっと」納期が遅れるかもしれないとは思っていても、商品を発送しないつもりはない。
これに対して、最初から金を騙し取るつもりの人は、出品時に商品を発送するつもりなんて無い。
行き詰まったチャリンカーと詐欺師の違いはここの主観的事情にある。
後の客観的な行為は同じ。
出品し、落札して金を払って、待てど暮らせど商品は来ない。
「発送するつもりだった」かどうかが裁判の争点になる。

チャリンカーは最初のうちはちゃんと発送するので、発送するつもりが最後まであったのか、それとも最後の方は「もーできねーよ」と思っていたのかが判別しにくい。
だからチャリンカーは債務不履行の民事訴訟は起こされるが、刑事になることは余りない。
タレちゃんも刑事事件にはならなかった。
この女性のケースの方が珍しい。
神戸新聞によれば、この女性は〇四年十一月下旬ごろから、出品数が急増、三倍以上に増えていたそうで、ここをつかまえて「この辺から投げやりになって発送するつもりが無くなった」と検察側は主張したものと考えられる。
多分弁護側はこれに対して、「赤字を取り返すには今までの3倍以上がんばらねば」と思っただけだ、と主張したのであろう。
無罪になったということは、別にヤフオク詐欺全般が見逃されているのが現状というわけではなくて、チャリンカーは詐欺師ではない、ということだ。

また、企業体ならばともかく、ただの一個人がやっている場合、刑事処罰を受けさせたからといって、被害者にあまりメリットはない。
刑事処罰したからといって、払った金は返ってこない。持ってないものは払えないからね。
社会全体への一般予防効果もあまり期待できない。
出品者への嫌がらせにしかならない(まあ、それでよい人も多いだろうが)。
被害者保護という見地からすれば、一番試してみる価値があるのは、ヤフーに責任追及することだ(成功の保証はしないが)。
持ってるものを持ってるのはあの禿だからだ。
出品者個人については破産免責を受けさせて、再起を図らせるというのが一番妥当という裁判所の考量も分かる。

ま、俺個人としては、ヤフオクでAV機器を買おうとは思わないし、高額商品も買わない。
ヤフオクは基本的にフリーマーケットなのだ。


追加記事
夕方のニュースでTV放映もされたし(日テレはヤフオク好きだなー)、被害者の会も結成されていた。
でかくやったから立件されたのね・・・。
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by k_penguin | 2007-05-21 22:58 | エンタテイメントと法 | Trackback | Comments(2)

ウィニー開発は有罪、罰金だけど

かなり反響が大きい京都地裁の判決だ。モトケンさんのとこでも、コメント数が多い。
法律的にも、幇助行為の限界例として面白いところを含む判決なのだが、ネットでの反響の大半は、そんなところにあるのではなく、「こんな判決出しやがって、これから俺たちゃどーすりゃいーんだ?!ああ?!」というところにある。
まー、文句が言いたい人は、こっちが何を言っても文句を言うと思うのだが、この判決は法律的にはそれほど無理があるものではない。
1年半以上も前にこれについて記事を書いていたのを思い出したので、とりあえず引用。
「ファイル交換ソフト開発は著作権法違反幇助かという問題は、包丁を作った鍛冶師はその包丁を使って人を殺した殺人罪の幇助犯かいうことと同じで、法律的に言えば、行為の定型性という側面から否定されるべきであり、つまり、起訴は嫌がらせだと思っていた。
でも、(中略)そこらの包丁作るのと違って、殺人のために特別に包丁を作ったと、そういう風に考えれば幇助も成り立つ」

今回の判決も大まかに言えばこのリクツだが、せっかく判決理由要旨があるのだから、これに沿って判決を解読してみよう。
まず、どの行為が幇助行為かっていうと、「ソフトを公開して不特定多数の者が入手できるよう提供した行為」。
んで、なんで「技術自体は価値中立的」なウィニーを「公開して不特定多数の者が入手できるよう提供した」ことが違法な幇助行為といえるかっつーと、「ウィニーが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていたという現実の利用状況の下」「ウィニーが一般の人に広がることを重視し、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状を十分認識しながら認容し」てやったからだ。
幇助行為は、正犯の行為を物理的に容易にしただけでなく、心理的に容易にしたことも含むが、この判決は心理的に容易にした面を重視したので、結果、行為の主観的態様が重視されている。
物理的な容易性だけを問題とすると幇助の成立が広くなりすぎるので、絞りをかけるという意味で心理的な容易性を重視したのは妥当だと思う。
なお、ここで注意しなければならないのは、単なる内心故に処罰されることは決して許されない、ということ。何らかの形で内心が行為に出ていなければならない。

次に、社会的な影響が大きいことを認めておきながら、量刑が割と低い(でも執行猶予はつかない)あたりが面白い。
これはオカネ目当てでやったことではない、ということもあるが、ネット上の著作権制度っていうのが、まだ社会的に確立しきっていないことをも伺わせるような感じがする。

ウィニーに限らず、ネット上では、法律が今まで想定していなかった事態がちょいちょい起こる。
ネットゲームの世界にインフレ起こして荒稼ぎしても不正アクセス禁止法でしか処罰されなかったり、HP上の子供の写真をよろしくない使用をしても、事実上刑事罰が困難だったり。
ネットの力を利用して、個人が社会的に大きな影響を与えられる力を持つようになった今では、個人の規範意識の高まりが社会的に要求されるようになるのは当然の流れと言えよう。
自分でまともな振る舞いが出来なけりゃ、上から規範を押しつけられても仕方がない。
その点で、技術開発の可能性を主張する一方で、不正使用についてちゃんと「悲しいと思っている。やめてもらいたい」と述べた被告人のコメントはうまいと思った。
・・・ちゃんと勉強してるよねー。

追記 12月18日
寄稿:白田秀彰氏Winny事件判決の問題点 開発者が負う「責任」とは
やっぱりプロはよく書けてるなあ。

モトケンさんとこの関連エントリ
鼻水が出そうなほど高度な議論になってるような気が・・・。

追記2
二審は無罪。
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by k_penguin | 2006-12-15 01:23 | 裁判(判決評) | Trackback | Comments(12)

ゲームと現実、その接点

えー、最近のコドモはテレビやゲームの悪しき影響のおかげで、現実と絵空事の区別がつかなくなってて嘆かわしいわい。
と、いう話ではない。
こちら。朝日。
一部引用。
勤務先のオンラインゲーム管理会社のシステムに不正アクセスし、ゲーム内で使う仮想通貨を勝手に増やしていたとして、警視庁は、東京都狛江市岩戸北3丁目、元会社員戸枝雅亮容疑者(26)を不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕した、と20日発表した。

 戸枝容疑者は、仮想通貨を外部業者に売って現金化し、半年間で約3000万円を稼いだといい、警視庁は詐欺の疑いもあるとみて調べている。

ヤフオクなんかで仮想通貨が売られているのは知っていたし、それがトラブルの温床なのも2ちゃんの法律相談板でちょいちょい目にしていた。
しかし、詐欺罪が出てきたのだ。
毎度お世話になってるブログ、モトケン先生のとこでも問題提起されているが、詐欺罪は財産罪だ。財産というのは、お金に変えられる価値のことだ。プライスレスな思ひ出は刑法の上では財産ではない。

本来、ゲーム内の仮想通貨はゲームの中だけの存在で現実のお金に換える窓口はない。
ゲーム内の敵を倒したりなんなりして働いてお金を得る。それでゲームの中のお店に行ってゲームの中だけで使える装備を買う。
現実と接点はないはずだ。
だから仮想通貨は刑法上の財産ではない。
しかし、働くのがいやな人はどこにでもいる。
そこで仮想通貨を現実のお金で何とかしよう、という需要が出てくる。
需要あるところに供給あり。
かくして仮想通貨を取り扱う業者さんが出現し、ゲームと現実はお金を接点につながる。
考えてみればお金というのも高度に抽象化された概念だ。理論的には、当然なのかもしれない。

今回の事件、詐欺罪という構成は、たぶん、被害者は業者さんで、不正データを売ってお金をもらった(つってもこれもオンライン上の振り込みだろうと思うが)行為そのものを欺く行為ととらえたのではないかと思う。

オンラインゲームの中には基本的に現実の法律は適用されない(考えてみりゃ名誉毀損はありだな)。
「プレーヤーキラー」とよばれる「殺人鬼」もいると聞く。
もし、他のプレーヤーから仮想通貨を騙しとっても詐欺罪にはならない。はず。
では、ゲーム会社のコンピューターに忍び込んでデータを変えて仮想通貨を得たら?
得た仮想通貨をゲーム上で買物して使った場合は?
(買物をゲーム上のサービスととらえれば「財産上不法の利益」となりうるから電子計算機使用詐欺か?)
それを業者に売って本物のお金をもらったら?
どこから現実の問題になって、どこから法律は適用されるのだろう。

ゲームと現実、意外と曖昧?


追記 8月17日
このゲーム(「ラグナロク」)ではついにインフレ対策がとられるそうだ。
現在の仮想貨幣の流通量はサービス開始時の数万倍以上(朝日新聞記事)。
ちなみに、記事の社員が増やした貨幣量は流通量の約3分の1に当たる、という情報も得ている。モトケンさんとこのコメント欄でだけど。

追記2 10月23日
結局不正アクセス禁止法違反のみでの起訴になったらしい。
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by k_penguin | 2006-07-21 21:32 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(0)

Winny開発は著作権法違反幇助かとか

今までこの問題、あまりくわしく見ていたわけではなかった。俺Winny持ってないし。
ファイル交換ソフト開発は著作権法違反幇助かという問題は、包丁を作った鍛冶師はその包丁を使って人を殺した殺人罪の幇助犯かいうことと同じで、法律的に言えば、行為の定型性という側面から否定されるべきであり、つまり、起訴は嫌がらせだと思っていた。
でも、今日朝日のHP上でたまたま見かけて、なるほどこういう構成なら幇助犯もありだなって思った。
つまり、そこらの包丁作るのと違って、殺人のために特別に包丁を作ったと、そういう風に考えれば幇助も成り立つ(関係ないけど「キルビル」。沖縄の寿司屋の2階では良い刀は打てないと思う)。
主観的要素の認定でここまで行為の法的評価は変わるんだなー。へえー。

被告人が言った言わないで争っているけど「著作権のあり方を変える」って考えも一理あると思う。
著作権という概念はどうもそれ自体問題を含んでいるような気がする。
著作権の権利性自体は否定しないにせよ、本質的に財産権と解釈した方が良いんじゃないかと思う。
俺はあまりくわしくないけど、著作権の人格権的側面は本来の目的から離れてしまって、余りよい使われ方をしていないと感じる。
ただ、知的財産以外の産業がない日本の今後を考えれば、こーゆー考えはあまり歓迎されないだろうとも思うけど。

なお、朝日のこの記事で「2ちゃんねらー」という言葉がどういうニュアンスで使われているのかは知らないが、2ちゃんねるは広く、利用の仕方も人それぞれなので、「2ちゃんねらー」という言葉では何も説明できていないと思う。
ちなみに俺は「軽い2ちゃんねらー」と自己紹介しているが、今一番有名であろう「電車男」には興味がないので、板にも行っていなければ本も読んでいない。
2ちゃんの祭りはその9割が自演だと思っているが、自演か否かは問題ではないとも思っている。
また、祭りは見るよりも御輿を担ぐ方が面白いとも思っている。

追記

あー、著作権の人格権的側面を認めないっていうのは、著作者人格権の権利性自体を否定するってことではなくて、例えば自分の文章を勝手に改変された場合は、ふつーの人格権の侵害として取り扱えばいいのではないかってこと。
人格権は財産権に比べて、上位の人権として扱われているので、制約が少ない。
著作権という1つの権利に人格権と財産権という2つの性質が入ってしまったがために、本来財産権としての制約に服すべき事項がいわば「人格権の仮面」をかぶって権利主張するっていう弊害を重視するべきじゃないかってことね。
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by k_penguin | 2005-02-17 21:03 | 裁判(判決評) | Trackback | Comments(0)


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