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ポツネン『SPOT』番外編 小林さんと(ツアー前半の)お客さん

今回取り上げるのは、『SPOT』そのものではなくて、公式HPでの小林さんのメッセージコメントだ(4月23日付)
久々にウケたので、取り上げてみたくなったのだ。
では引用。
ツアーが始まってから2ヶ月半、毎日が戦いでした。
本番が終わるたびに反省点をにらみつけ、
翌日には必ずクリアしてきました。
ツアー始めの方と2ヶ月経った最近の公演、
両方観てくれたお客様から、
「コントが育っている!」という声を頂きます。
磨き上げて来たかいがありました。
ありがとうございます。
でもですね、
だからといって前半はダメなのかというと、
そういうことではないのです。
例えるならば、
恐竜の骨は発見されたばかりのときと、
博物館に展示されたときとでは見栄えが全然違う。
けれども、化石の価値そのものが変わったわけではない。
というふうにご理解頂ければと思います。
その日に出せる最高の状態を心がけていますから、
公演のどのタイミングで観て頂いても、
それが本当の僕だし、
それがライブなのです。

公演の回数を重ねるごとに作品が良くなってきている、とは小林さんが良く言うことで、まあ、回数重ねりゃ嫌でもうまくなるものだし、それが嬉しいのもわかるのだが、前半しか見られない客に対する配慮がちょっと足りないなあ、とは前から思っていた。
小林さんはこの件についてこれまで全く言及してこなかったのだが、
ようやく今回満を持して釈明に及んだわけだ。
 が、それにしても、これだけ説得力の無い釈明も珍しいだろう。

恐竜の骨に例えているが、これは要するに、
博物館の「大恐竜展」開催にあたり、同じ入場料を取って会期前半の客にはまだ組み立てていない発掘したての恐竜の骨を見せたとしてもかまわない。なぜなら組み立てていてもいなくても同じ恐竜の骨にかわりはないのだから。
という趣旨と理解してもよろしいだろう。
少なくとも料金を払って観ている客としてはそう解釈して不思議はない。
しかしそれで納得する客はまずいないであろう。
(後で説明するけど、小林さんの言いたい趣旨は多分これとは少し違うと俺は思う)


残念ながら彼は釈明の相手の立場を全く考えていない。
単なる自分の内心の説明に終始している。
「前半はダメなのか」と言う客が不満に思っている点は、同じ料金を払ったのに見やすく整備された物とそうでない物というレベルの違うものを見せられている、という点にある。
それに気がついていないので、彼は前半と後半の展示に客観的レベルの差が大きいことを平気で認めている。
そして前半は「ダメ」ではない、という理由は、結局「その日に出せる最高の状態を心がけて」いるから、つまり、主観的にがんばっているのだから、見せ物の客観的レベルなぞ問題ではなかろう、ということなのだ。
小林さん的には「恐竜の骨」であるところの「本当の僕」を見せればよいと思っているのだが、あいにく客の興味はそーゆーところにはない。だって何が「本当」の小林さんなのか、真偽のほどを知る術がないからね。
なんだったら、本物の恐竜の骨よりも、恐竜の3D映像の方がウケが良かったりする。
客は「見やすいもの」「見て楽しいもの」が観たいのであり、小林さん言うところの「見栄え」こそが重要なのだ。
小林さんはそこを押さえていない。


こうなってくると、むしろなぜ彼は(こんなスキルで)説明できると思ったのか?
という方が知りたくなってくる。
今まで彼は客に対してこういうことを説明してこなかったが、その方がむしろ当たり前なのだ。
それは、説明できないという能力の問題もあるし、また、「本当の僕」を見せればよいという作品についての基本的スタンスとも一致する。

つまり、仮に「本当の僕」というものがあるとして、そしてそれを舞台で見せたとしての話だが、
その「本当の僕」が客に受け入れられるとは限らないわけだ。
仮に「本当の僕」を受け入れない客がいたとしたら、「僕」はどうするかというば、・・・どうもしない。
どうしようもないからだ。「本当の僕」を提示する以外の選択肢は彼には無い。
受け入れない客は去る、受け入れる客は残る。
それだけだ。

今回、初めてそのスタンスを曲げようと思ったのは、多分、受け入れる人の幅を少しでも広げようという意欲の表れだと思う。
(ただしそれは成功していない。成功させたいなら、誰か適当な人に指導してもらうべきだと思う)

そして、説明はできる、と思ったのは・・・たぶん、それが「恐竜」の骨だったからだと思うのだ。

恐竜の骨は化石として価値があるから、本物を見るだけでもありがたがる人はいるだろうからだ。

でも、もしそれが、特に価値のないフズリナとか、そんなものだったら・・・
だったら、どうするんだろう?



今回の小林さんのコメントを要約するにあたって、ツアーを「大恐竜展」としたし、多分そうとらえるので間違っていないと思う人も多いかと思う。
しかし、実はおそらく小林さんは、舞台を化石の展示としてではなく、化石の発掘作業としてとらえている。俺はそう思う。
だから本物の化石であることに価値があるし、化石の展示の仕方は二の次なのだ。
化石発掘現場にやってきた見物人は(現場に立ち入るにあたり入場料を取られたとしても)、恐竜の骨が組み立てられていないことには文句を言わないであろう。
そういうことだ。

ただし。
メッセージ中にそこが化石発掘現場なのか「大恐竜展」会場の博物館なのか明示しない以上、博物館ととらえられても仕方がないことだ。
彼の説明の仕方が下手なのは否定できない。


 さて、表現行為を化石掘りに喩えた作品として俺が思い出すのはねこぢるの『つなみ』というマンガだ。
ねこぢる唯一の人間だけが出てくるこのマンガで、主人公の少女は彼女を抑圧する父親をお屋敷もろとも津波により奪われ、自由だが無一文になる。
その場に立ちつくす彼女。
ふと、「誰が掘っても化石が見つかるという」地層が目に入り、彼女は、自分にも化石が見つかるだろうか、と、掘り始める。
やがて小さくて平凡な化石が見つかり、彼女は手の中のそれを見つめて「うれしい」と思う。
誰にでも描けそうな絵の漫画を描いていたねこぢるの作品の中で俺が最も好きなマンガだ。


恐竜の骨は化石として価値がある。

でも今掘っているそいつは、本当に恐竜なのだろうか。

それが恐竜だと、誰が証明してくれるのだろうか。

そもそも、何のために発掘をしているのだろうか。

小林さんはもう少し考えてみた方が良いと、俺は思う。



ねこぢる大全 上


追記メモ 6月12日

『演劇ぶっく』のインタビューでは
恐竜のたとえはやはり展示ではなく、発掘にたとえていた。
「初日は全体像が見えればいい」そうだ。
バニーはそれで良いだろうけど、客はそうは思わないし、第一、客には全体像は見えていないけどね。

赤い壷は「(ス)ポット」というよりも、「ツボにはまる」という言葉から来たものらしい。
けん玉の話からしても、「はまる」ことがテーマ。
SPOT-地点-ひとつぼ王国。
「はまる場所」-居場所を見つけること。

ラーメンズはお仕事と割り切る。
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by k_penguin | 2010-04-25 22:49 | エンタ系 | Trackback | Comments(32)

朝日新聞「争論」「監視カメラ社会」

4月16日の朝日新聞の「争論」が「監視カメラ社会」を取り扱っていた。
ちょっと前に防犯カメラについての記事を書いたので、興味を持って読んだが、
・・・なんだかなー(´・ω・`)

この「争論」というのは、紙面を左右の2つに分割して対立する2つの意見を載せているという体裁だ(朝日の4月の紙面刷新の目玉の1つなんだそうだ)。
一見対談のように見えるがどうもそうではないらしく、別々に原稿を提出していて、相手の原稿も読んでいないっぽい。
週一掲載のこの企画、今まで3回ほど読んだが、どれも互いの問題意識や想定しているケースがずれたまま、別の方向を向いて話をしている、という感じがした。


さて今回は、防犯カメラ容認派が前田雅英、否定派が森達也。
・・・なんかもう、名前聞いただけで防犯カメラ容認派の勝ちって感じ。
否定派の論者にもう少しましな人を持ってくることは出来なかったのだろうか。

前田雅英は刑法学者らしく、しゃきしゃき話を進め、データを提示し論理を積み上げる。
最近の治安はむしろ良くなっているというデータを相手が出してくるであろうと予測して、「確かに数字で見ると、最近の治安は悪くないです。」という書き出しをとっているあたり、さすがだ。
そしてまたちゃんと彼の読み通り、冒頭に森達也は最近の治安はむしろ良くなっているというデータを出している。
これでこの部分は反論済になってしまった。

前田の論については、防犯効果がある証拠として埼京線の防犯カメラの例を挙げたのが気にくわなかったが(以前書いたようにこれについては、カメラそのものではなく、カメラ設置のニュースが防犯効果を上げているのではないかと解することが出来る)、
防犯効果についての理由付けをそれだけではなく、犯罪捜査に監視カメラの映像が役に立つ、というものも述べている。
つまり、犯罪捜査の効率が良くなれば、犯罪検挙率があがって、一般予防効果が出る、という考えね。これはありそう。
そしてその上でカメラ設置についてのアンケート結果(賛成9割)を示して、
「防犯カメラの是非は、既に決着がついたと思っています。」
うーん、鉄壁。

それに続けて前田は、「得られた情報をどう管理するか」という次の段階に問題は来ている。とする。
この情報管理の問題は、確かに今後重要になるもので、防犯カメラ問題について外してはならない論点だ。(俺も以前この問題について触れてるんだYO!)
 そしてここについてのガイドラインがまだ固まっていない点が、防犯カメラ容認派の弱点でもある。
 …まあ、森はこの点に全く触れていないわけだが。

森の主張は主に、過剰な防犯カメラの設置により社会の不安感が増してゆき、それがまた防犯カメラの設置を呼ぶ、といったことだが、その主張には具体的データが欠ける。
そもそも「過剰な」防犯カメラの設置が悪いという主張は、裏を返せば「過剰でない適度な」防犯カメラであればよい、と言うことになるだろうし、
そして容認派は当然防犯カメラが「適度」であることを前提として論じている。
両者は別に対立する意見ではないことになる。後は何をもって「過剰」とするかというだけだが、これについて森は触れていない。
どうも森の主張は情緒的で(なんか飲み屋で聞く愚痴みたい)、具体的データと現実的意見で固められている前田への反論としては心もとなさ過ぎる。つか、やる気あんのか?


俺個人としては、防犯カメラ問題は、その効果の是非というよりも、その導入の過程の適正さに問題がある、と考えている。
防犯カメラに防犯効果が「ある」とされているデータのうちのいくつかは、その実証性に疑問がある、と前に述べた。
しかし、一般にその実証性には疑問が持たれていない。防犯カメラの存在自体が防犯効果に繋がる、と考える人は多いだろう。
防犯カメラに防犯効果がある、という情報を先に流しておいて、その上で多数決を取り、「賛成派が圧倒的に多数であるから」防犯カメラ問題は解決だ、
とやることは適正さに欠けるのではないだろうか。

そして、前田雅英も認めるように、防犯カメラには「得られた情報をどう管理するか」というさらなる問題がまだあるのだ。
防犯カメラの設置自体は既成事実となっているにせよ、こちらについてはまだ事実は形成されていない。
こちらについては、なし崩し的にデータが流出する既成事実が形成されるようなことにならなければよいのだが、どんなもんかね。
と、俺は考えている。



なお、朝日の「争論」だが、なんか、紙面右側の論者が「残念」なケースが多いような気がする。
 いや、あくまで個人的感想だけどね(^-^;
今回は、左が前田雅英、右が森達也だったわけだが、
前回の「都条例による表現規制」の右の陣、アグネス・チャンもなかなかの残念ぶりだった(左は竹宮恵子)。

俺個人としてはお題について別にあの程度の規制、既にされている写真表現規制と同程度だし、やってもいいと思うのだが(未成年じゃないから関係ないし)、
アグネスと同じ側と見られるのは嫌だから、規制反対になろうかなー、と思うくらいがっかりだった。

・・・まさか朝日は議論の結論を恣意的に操作しているつもりじゃなかろうな・・・。
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by k_penguin | 2010-04-21 13:15 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(1)

Piper 『THE LEFT STUFF』

『ひーはー』『ペントラーペントラーペントラー』と似たパターンの舞台が続いたPiperの今回は、「かつてない観客参加型コメディ」だそうだ。
参加型と言っても、たいしたものではないだろうと高をくくっていたら、出演者の相武紗季がTVで、ストーリー展開をどうするかを客の多数決で決めたりするのだと言っていて、かなり本格的な感じなので驚いた。

本多劇場の白衣を着たスタッフが説明するところによると(大王の芝居はロビーからもう作品世界に入っている)、NEOという組織の行う「実験」に観客は参加してもらうのだそうで、実験を承諾する観客は舞台の上に置かれたボードに署名をするのだそうだ。
実験内容を知らされていないのに承諾も何もないが、本多劇場の舞台に立つ機会はそう無いのであがらせてもらって署名した。

署名すると参加気分が盛り上がる。何が起こるんだろう?
やがて出てきた司会進行役の大王によると、これから登場する7人のうちから、未知の海底資源を調査するための調査員を1人選ぶそうで、そのための「実験」を客の協力の下で行うのだそうだ。
その調査員とやらにどのような能力が必要とされるのか、全く説明がされていないのが「?」だったが、始まってみれば何のことはない。
実験の名目で7人をいじり倒すだけの話なのだ。

実験内容の一部を客からのお題で決めたり(当然即興になる)、話の展開を二択で選んだりする。
ストーリー的にもアドリブが多いようで、扉の影で舞台を伺う大王がくすくす笑い出したりしていた。
ラストも2種類あって、無作為に選ばれた客と後藤ひろひとのじゃんけんで決めていた。

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by k_penguin | 2010-04-16 22:01 | エンタ系2(ライブレビュー) | Trackback | Comments(6)

『忘れもの撲滅委員会』

NHK教育、朝6時55分にやる歌。

出かけるとき忘れ物をしないように、という歌なんだけど、
歌っているメンツがすごい。

蛍原徹(雨上がり決死隊)
松尾陽介(ザブングル)
土屋伸之(ナイツ)

どう考えても、「コンビの忘れやすそうな方」。
ここで3人とも本当に「コンビの覚えられていない方」にしてしまうと、
視聴者が、お笑いの人に歌わせているということにすら気がつかない危険が高いので、
真ん中に蛍原徹を持ってきているあたりがうまい。
デザインは完全にピタゴラ系。

あと、3人とも事務所が違うというのがなんかNHKだなって思った。
根拠はないけど。


追記
5月から2番を歌うよ!

追記2
8月に再度放映!振り付けを覚えるなら今!
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by k_penguin | 2010-04-14 23:56 | Trackback | Comments(4)

ポツネン『SPOT』 3 ガジェット群一解釈

リニューアルされた公式HPのデザインからも推測できるように、ライブポツネンはポツネン氏(小林賢太郎)にとって意味のあるガジェット群の構成によりできている。
そこで、ここでは『小林賢太郎テレビ』『DROP』『SPOT』に出てくるガジェットの一部について、どのような意味を持っているのか、およびそれらを使って『SPOT』のテーマについての一解釈を行う。

あと、ふつーの文章で書いていたらすげーややこしくなったので、めんどくさいからもう箇条書きみたいな感じで書くからね。



1 ポツネン氏in『小林賢太郎テレビ』vs王様in『SPOT』

a『小林賢太郎テレビ』

「機関車」・・・望んでいる生活、現状打破。
 なぜ機関車が欲しいか(=なぜ現状に不満足なのか)については語られず。

「自転車」・・・現在の生活、自分の置かれている状況。
 「腑に落ちない物」を商って生活している。(ということは現在の生活は腑に落ちないと思っているらしい。しかしその淵源は不明)


b『SPOT』 王様

「象」・・・望んでいる物(「機関車」と同じものと思われる)王国の発展目標の1つ。
 なぜ象なのか・・・第一大きいし、ペットにもなるし友達にもなれそうだから(by王様)。
  大きい象をペットにすればみんなにバカにされないから。(byうるう人)
 
以上の理由からすれば、少なくとも他人の目を意識している。
このことから、何らかの社会的な成果ととらえることができる。

「ハト」・・・現在の生活、自分の置かれている状況(「自転車」と同じものと思われる)。
 「たまたま飛んできた鳥」であるハト。それを取って経済活動をしているのだから、現在の生活にあたる。
「腑に落ちない」とは言っていないが、かなり収入が不安定とはいえそうだ。


なお。
「王冠」・・・ラーメンズ「王様」にも登場したアイテム。
  「王様」と同様に考えて、「個人的な価値」と、とらえている。イメージ的に、奈良美智「PUP KING」みたいな感じ。

王様が「これでいいのだ」と言い切れるのもこれのおかげかも。



2 「リンゴ」について(『DROP』vs『SPOT』)

リンゴは『DROP』のフライヤーに登場するだけなので、フライヤーも作品の一部ととらえる。
ライブポツネンは、作者の思念が、いろいろなガジェットの集積として現れるようにできている。
従って、ガジェット群の「最後」に現れるリンゴは「心」「伝えたい思い」にあたる。
おそらく作者個人の個人的な思い入れであろう。


『SPOT』
けん玉の「赤い球」は王様の手の中でリンゴに変わる(だるまにも変わるが)。
よって、赤い球=リンゴ=個人的思念。
赤い球にけん玉の棒が「すぽっ、と」「はまる」ことによって、けん玉は棒ごと上に引き上げられる。
ガッチャンコ(井戸)はけん玉を引き上げるための装置。
個人の心を引き上げる→うるう人の穴からの脱出方法。
すなわち、『SPOT』は穴から脱出するための第1段階として「すぽっ、と」「はまる」ための作業。

「はまる」・・・一般に、適切な表現形式の発見により自分のテーマが一般に理解されるに至ることを「はまる」という。

「りんご」は、最後に王様の手で「象」に食べさせられる。
 →自分個人が追求することが何らかの社会的な成果につながり、同一化すること。
 それにより、社会的にも成果が出るし、個人的にも「穴から脱出」できる。



とりあえず、こんな感じ。

あと、『小林賢太郎テレビ』あたりで、俺は「気合いだけで夢を現実化しようとしている」という批判をした。夢を現実化する決め手に欠けるのだ。
『SPOT』においては、象のシルエットを作るにあたり、王様が言っていることがあてどころになるらしい。
遠近法とか(象を構成するシルエットは、光源と物の遠近の差で、本来の物の大きさと異なる大きさの影で作られる。「見るものは信用できない」)。

でも、言ってることわからない。
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by k_penguin | 2010-04-13 00:01 | エンタ系 | Trackback | Comments(5)

続・埼京線に防犯カメラ

JR埼京線が痴漢防止のための防犯カメラを「試験的に」導入したのが、去年の12月だった。
そしたら、今月4月早々、「試験導入で効果があったから」全編成に防犯カメラをつける、という。
埼京線の車内防犯カメラ、全編成に 「試験導入で効果」(アサヒ・コム)
4ヶ月しかたっていないのに、もう「効果」を認定したというその素早さに俺は驚いた。

ロンドンには連続テロ以降、防犯目的の街頭カメラが設置されているが、それによれば、犯罪数は防犯カメラ設置後しばらくは低下するが、数ヶ月で元に戻るそうだ。
つまり、防犯効果があるのは防犯カメラそのものよりも、防犯カメラを設置したというニュースの方なのだ。

今回の埼京線の「試験」の結果はYOMIURI ONLINEの記事によれば
警視庁によると、昨年都内で届け出のあった電車内での痴漢被害は、同線が全路線で最多の173件(月平均約14・4件)だったが、今年1、2月は計15件(月平均7・5件)とほぼ半減した。

と、いうもので、2ヶ月しかデータをとっていない。
しかも、「試験」は全部で33編成ある埼京線のうちの2編成(の車両の1両)についてのみ防犯カメラを設置したものである。
つまり、ほとんどの埼京線は今までとは変わらなかったのだ。
それで半減の効果というのは、防犯カメラそのものよりも、防犯カメラ設置のニュースが効いている、と考えても全然おかしくないと思うのだが。

なんだか、
試験以前に防犯カメラ導入は決定していた、
という香りがものすごく漂う。
…カメラ屋さんが暗躍したのではなかろうかね?
そーゆー目で見てみると、痴漢被害の件数をわざわざ月平均人数で比較したのもなんだか怪しく思えるし。
ちなみに朝日の方は、
警視庁によると、埼京線では今年に入り痴漢被害が大きく改善。1~2月の強制わいせつ事件は3分の1に減ったという。

だそうで、なぜか迷惑条例違反事件の数は無視だ(痴漢は法的には強制わいせつの場合と迷惑条例違反の場合がある)。



ところがこんなアヤスイ試験結果でも、大多数の人は防犯カメラ導入に賛成らしいのだ。
YOMIURI ONLINEの先の記事によれば「電車内へのカメラ設置への賛成が89%。「プライバシーが侵害されるか」との問いには62%が否定」。
まあ、俺は実家に行くときしか埼京線を使わないのであまり関係ないし、みんなが良いというなら、別にそれで良いんだろうが、
しかし、効果がない「防犯」カメラに見張られていて、プライバシーの不当な干渉とが思わないのだろうか?
軽く疑問を抱いて、そんなことをつぶろぐという過疎Twitterみたいなもんに書き込んだら、けっこういろいろなやりとりがあった。

そこでわかったのは、大体の人は、「オープンな場所では個人にプライバシー権なんて無い」
と、考えているということだ。
自分の方が少数派とわかった以上、
オープンな場所でも個人にプライバシー権は「ある」、という俺の考えの方を説明しなくてはなるまい。

この考えは法律を学んだことがある者にとってはむしろ「ふつー」の考えである。
なぜかというと、最高裁が「ある」って言っているからだ。
そして「ある」といっても実は結論は「ない」と余り変わらなかったりする。
オープンな場所でもプライバシー権はあるけど、人権という言葉から一般にイメージされるほど丁重な扱いを受けているわけではないからだ。
人権にもいろいろ格付けがされているのだが、「オープンな場所でのプライバシー権」なんて最下層にいると言ってもいい。
なんだったら人権なんて立派な言葉は気恥ずかしいので「利益」と呼ばれる場合すらある。
これが自分の部屋の中にいる場合のプライバシーとなると、格付けはもっと上に行く。人権の格付けは人権の名前ごとになされるのではなく、もっと細かく分類されているのだ。

そんなに低いのなら、じゃあ別に「ない」でいいじゃん。
て、思うところだが、これが「ない」と「ある」では大違いなのだ。

仮に、埼京線の車内にプライバシーは「ない」としよう。
こちらに守るべき権利がないのなら、論理的に権利侵害という事態は起こらない。
したがって、頭上のどこにどんなカメラがついていようと全く問題ない。
それが防犯カメラだろうが、どこかのけったいな埼京線マニアが自分で眺めるために勝手に設置したカメラであろうが構わない、ということになる。
痴漢もののAV作品の導入部分に使うため、混雑した車内の1カットがほしーなー、なんていう撮影も、そこで演技が始まらない限りOKだ。

こういう撮影も全部問題ないと思う人もいるかもしれない。
しかし、googleストリートビューに通行人として写りこんだり、家の表札が映ったりするのも嫌がる人がまだ多い世の中では、すべてを許すほど心が広い人はまだそういないのではないかと思う。
みんな、少なくとも何らかの「正しい」理由を必要としていて、全くフリーに撮影を許しているわけではないのだ。

たとえちょびっとであれ、こちらに守るべき人権(or利益)が「ある」と考えれば、それに相応するだけの「正当性」が要求されることになる。
たとえば、痴漢防止に役立つかどうかの実験のためのカメラであれば許せる。とか。


「オープンな場所では個人にプライバシー権なんて無い」と主張する人も、その反面、防犯効果について口にしていたりするから、多分無意識のうちに自分の守るべき利益と利益を制限する正当性を秤にかけているのだと思われる。
それらの無意識的な作業を俺は意識的に行っただけなのだが、
意識的に行ったがゆえにすっごく気になるのが、
今回の「試験」がおそらく形式的なものに過ぎなかったことなのだ。

俺は「痴漢防止に役立つかどうかの実験」だからカメラを許したのだ。
その実験を真面目に行わず、なし崩し的に防犯カメラを導入した、ということは、「正当性」がないのに、あると偽って防犯カメラを導入したということになる。
そこで嘘をついたという行為自体の不当性が俺は嫌なのだ。
防犯カメラの映像が悪い目的に使われたり、どっかに横流しされたりするなんて考えられない、と思う人もいるだろう。
しかしJR東日本は少なくとも、既に1度嘘をついているのだ。2度目がないとは言い切れない。

今回防犯カメラを全編成に導入することにより、結果的に痴漢が減って、良い結果が生じるかもしれない。
結果が良ければ別に導入の手続にちょっとばかり嘘が混じっていても、いーじゃん
って考えも確かにあり得る。
でも、その「嘘ついても、まあいーじゃん」って部分が積み重なっていくと、いずれ災いが起こるのではないか。

そーゆー気が俺にはするのだ。

c0030037_15284135.gif

JR東日本HP「埼京線における車内防犯カメラの設置について」より。
埼京線における防犯カメラ設置図
(なんか片寄ってるんだが、もしかして今後カメラ増やすつもりとか…?)


追記 関連記事
朝日新聞「争論」「監視カメラ社会」
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by k_penguin | 2010-04-10 15:36 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(2)

ポツネン『SPOT』 2 うるう人の補完計画

LIVE POTSUNEN2010『SPOT』の最後から2つ目、うるう人の話についての解析。

この話は、話単体としてみれば、単に暗いだけの「ひきこもっちゃった話」だ。
しかしLIVE POTSUNENにでてきた今までのこの手の話「悪魔のキャベツら」「丸の人」そしてサダキチと毛虫とかの話と比較してみると面白いと思ったので、その辺を説明してみる。

この記事を書いている時点で『SPOT』の公演がまだ終了していないので、
うるう人の話のあらすじは載せるのを止めておく(公演が終わったら載せるかもしれない)。
でも、記事に必要な範囲でネタバレはする。

結局バリバリネタバレ(^-^;
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by k_penguin | 2010-04-03 22:54 | エンタ系 | Trackback | Comments(17)


法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


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