カテゴリ:エンタ系( 174 )

 

Alice: Otherlands

ハロウィンです。
人混みが嫌いなので、外に出られません(今は東京に戻ってきています)。
さて、ロンドンでのハロウィンが始まると同時に、Alice: Otherlandsのデジタルリリースが始まりました。

ずっと以前に紹介した、ホラー系不思議の国のアリスのゲーム、『アリス イン ナイトメア』『アリス マッドネス リターンズ』のスピンオフつーか、世界観は同じ感じでのショートフィルムです。
ソフトはどうも2本入りみたいで、片方は2Dレンダリング萌え系アニメなんですが、
もう1つが、シュワンクマイエルのごときこてこてクレイアニメで、ココリコ田中似のアリスがぎくしゃく動く、大変よろしい感じに仕上がってます。
プロなら、もうちょっとライティングに工夫があっても良さそうなものだとも思うのですが、まあ、これだけ作る苦労は計り知れないものがあります。

このアニメの製作は、キックスターターで出資を求めてのプロジェクトでした。
英語よくわかんないけどアリスならってんで私も金を出したので、最後の長ーーーいクレジットの中に私の名前も入っています。
出資者は物としてのアートブックとアニメ収録ソフトをいただけるんですが、英語よくわかんないから、アニメが実は2本ともダウンロードできるとか、アートブックのデジタル版もダウンロードできるとか、今知りました。
デジタルで先見ちゃってちょっと悲しいけど、本が届くのを待っています。

追記 11月1日
貼り付けたYouTubeの動画が今日になったら表示されなくなっていましたが、その場合はこちらから

[PR]

by k_penguin | 2015-10-31 21:11 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)  

小林賢太郎TV7

録画から約1ヶ月たってようやく見ることができた。

感想
ラーメンズっぽくて、面白かった。

そりゃ
昔のラーメンズの方が良かった とか
片桐さんの天然の魅力には勝てない
とか言うことはできる。

でも、今期待される、ラーメンズって、なんだろう。
昔と全く同じ、一言一句同じものを作ったとしても昔と同じ評価は得られないだろう。
そもそも昔の評価ってなんだ。言うほどラーメンズは手放しで褒められていたわけではないぞ。
ずっとほっといているうちに変に伝説化されてしまって、勝手にハードルが上がっちゃっただけだ。
そりゃ、片桐を使ってKKTV7を作れば、ラーメンズと言ってもらえるかもしれない。
しかし、それはラーメンズであってラーメンズではない。小林も片桐も、客も、時代も変わっている。
ラーメンズの正解とはなにか。
もうそれは誰にも分からない。
天然の片桐、じゃない、コーラ虫を使って、カラメル味の炭酸を作れば国産コーラの復元といって良いというものではないのだ。
職人的には、それは昔の国産コーラの味じゃなければならないし、変に職人気質の親方が昔のコーラを大事に温めすぎたおかげで、味の正解が分からなくなったとしたら、もう作らない方がましなのだ。

だったら、カレー虫を使ったカレーを作る方が良い。
親方だって、それほどコーラに思い入れがあるわけではない。
昔飲んだはずの国産コーラの味を覚えてないし、
天然の虫を材料にして何かを作りさえすれば、職人魂は満足なのだ。そんなもんなのだ。
別にカレーでも、多分、ブルーハワイでも良くて、
コーラをくれとか言う客には、
「うち、コーラおいてないんですよ」とつっぱねれば良いのだ。

カレーだってそこそこ売れているんだから。


小林賢太郎テレビ6・7 [DVD]
小林賢太郎テレビ6・7 [Blu-ray]
[PR]

by k_penguin | 2015-06-12 00:44 | エンタ系 | Trackback | Comments(8)  

但馬屋老舗の 「さいコロがし」

大分県立美術館、OPAMのオリジナルグッズの1つ。
c0030037_2133515.jpg


但馬屋老舗は「荒城の月」というお菓子が大分において有名らしい。なんで荒城の月かっていうと、大分県竹田市が滝廉太郎の故郷だかららしいけどよく知らない。

で、この「さいコロがし」は、アーティストの人生をすごろくに仕立てたものがついていて、それがおもしろい。
但馬屋のHPに、すごろくの内容がほとんどネタバレの程度まで見える写真が載っているよ。
リンク先の写真をクリックするとでかくなるよ
アーティストはつらいよ。
という感じですね~。

お買い求めいただく場合はこちらから
[PR]

by k_penguin | 2015-06-05 21:38 | エンタ系 | Trackback | Comments(2)  

『ポツネン氏の奇妙で平凡な日々』2 妄想的な意味ある場所

タイトルのネタ元
http://togetter.com/li/598755
c0030037_22542639.jpg



ポツネン氏は落ち着くところに落ち着いた。
では、なぜ落ち着けるようになったのか。
彼の、名付けられることを嫌うあの整理できない感情はどこに住処を見つけ、何になったのか。

今回の話には、今まで出てきたモチーフが多くちりばめられている。
ざっくりまとめると

ネタバレ
[PR]

by k_penguin | 2014-12-22 00:00 | エンタ系 | Trackback | Comments(53)  

ヨコハマトリエンナーレ2014

今回は気が進まなかった横浜トリエンナーレ。
前回がぱっとしてなかったし、今回は今回で、メジャーなアーティストがあまり出ておらず、禁欲的でミニマムなアートが多いようで、美術畑の方やマニアには受けそうだけど、俺、フツーの人だし。タイトルも「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」。華氏451って、あれだろ、ブラッドベリの、焚書のヤツ。なんか社会的メッセージとか匂わせていそうだよな…あーめんどくさ!3年に1度のお祭りなんだから、フツーの人はぱーっとやりたいんだけどなあ。
俺も年を食って、すぐに疲れたり、体調を崩してしまうようになった。出かけるハードルが上がってしまっているのだ。
まあ、結局行ったわけなんだけど、やはり体調を崩して、途中で帰ってしまい、2回に分けていくことになった。1回は9月の終わりで横浜美術館のみ、2回目は10月下旬で、新港ピアとBankART。象の鼻テラスにも行ったんだけど、事実上展示が終わっていた。パンフには他と同じ期間であるように書いてあったのに。黄金町はパス。

横浜美術館
平日に行ったら、今回の総合ディレクターである森村泰昌による音声ガイドがたったの200円で! というわけで、ガイドを付けた。
いつもは音声ガイドは使わないんだけど、今回はミニマムな作品が多く、もう言葉で解説してもらわなければめんどくさくて見ていられないと思ったのだ。
結果として、ガイドは正解だった。今回がどういう趣旨の展示なのかが、はっきり言ってもらえたからだ。
表現に対する政治的、社会的な抑圧もテーマの一つだが、もっと大まかに、表現しにくいことを表現するということ、例えばはっきり言うのに向いていない微妙な空気感や感情の表現、忘れてしまったため、それが重要なことなのかすら今やわからないこと、なんかも展示の対象だ。

後は個別に感想メモ。

フェリックス・ゴンザレス=トレス
客の自由に持って行ける紙束を置いとく作品。音声ガイドでは、この作品をどっかの国で見たとき、客のみんなが我先にと取っていくのに、美術館の外に大量に投げ捨ててある、と嘆いたら、作者の友人が、それでも作者は満足であろう、と言ったというエピソードが語られていた。
日本では、物がタダで配られることが珍しくないせいか、「我先に」というほどには取られていなかった。A全判くらいのでかい紙だし。
俺は持って帰って、食器棚に敷いた。

大谷芳久コレクション
戦時中の日本の芸術家活動のコレクション。別に無理矢理書かされたわけではなく、当時は全体的にそーゆー雰囲気だったんだな、ということがわかる。

坂上チユキ
c0030037_0541953.jpg


すげ~細かくて、かっこよかった。節分の3日前に巻かれた巻き寿司の絵が良かった。

松井智惠もかわいかった。


新港ピア

土田ヒロミ
ヒロシマを40年以上追った定点観測写真、『原爆の子』のその後を追った写真など、言葉にしない説得力。

葛西絵里香
1つの絵には、これだけの手間がある、ということを一発で見せるかっこよさ。

大竹伸朗
c0030037_0541288.jpg


東アジアを凝縮したような屋台の展示。すごい匂いと共に大量の水蒸気をはき出す。


まあ、見たら見たで、良かったな、と思える展示だった。音声ガイド使ったから、理解が早かったせいもある。
ネットのせいか、細切れで、わかりやすく、しかもでかい声で言われることばかり目立つ世の中になっちゃったな、という気分は俺も持っていて、そういう雰囲気に対する危機意識を感じている人は多いんだな、というのが総じての感想。


BankART
こちらの展示は連携プログラムで、横トリとは別のテーマ。タイトルは「東アジアの夢」
今回はこちらでの展示に良いものがあると聞いていたので、期待。

川俣正と高橋啓祐の作品がとても素敵。
c0030037_054948.jpg


一見、森の木漏れ日のようで、実は大量のゴミが落ちてくるシルエット映像。

柳幸典は例のアリを使った作品なのだが、アリさん達は活動時期でないのか、弱っているのか、あまり動かなくて、それほど巣穴も大きくなっていなかった。
あと、パンフの作品名と展示の対応がわかりにくい。特にちっちゃいスタジオ使ってる展示のやつ。

以上、駆け足でヨコハマトリエンナーレ2014でした。
[PR]

by k_penguin | 2014-10-23 00:55 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)  

美少女の美術史

「美少女」って聞いただけで、どこからかすっ飛んできて、
「自分にとっての美少女は」で、徹夜で語る自信があります!と、聞かれもしないのに豪語するやつは多い。
タイトルに「美少女」というキーワードを入れるということは、そういう連中を相手にする覚悟があるということで、つまり、この展覧会が相応の強者によって相応の気合いが入れられて企画されているということだ。
だから、ネットでこの展覧会の告知を見ただけで、これは行きたい。と思った。
少女のイメージをめぐる110作家300点の展覧会というところにも気合いが端的に表れていて、いやそもそも「大量の美少女」なんて、それだけでご飯3杯いけるではありませんか。

ところが場所をチェックしたら、青森と静岡と島根とかで、
なんだよ東京でやんねーのかよチッ。がっかりだよ!
 と、言いすてておいての
c0030037_23222083.jpg

静岡県立美術館。
ああ、東海地方ですんで良かった。

東京から静岡まで新幹線で、それから東海道線の草薙で降りるのだけど、最初から観光気分なので、先に隣の清水まで行って、清水港市場で美味しいかき揚げどんぶりを食べてきた。
c0030037_23221131.jpg


既にゴキゲンになって美術館に入ると、巨大な風船少女がどーんといる。
c0030037_23222042.jpg

タカノ綾《精霊船にのって》

展示は、江戸時代から現代までの少女をめぐる文化、つまり、少女「が」楽しむ文化と、少女「を」楽しむ文化の両方の紹介を大体時代を追った形で紹介している。
普通、少女文化というと、「子供」というモラトリアムな時期が社会に定着する明治以降なのだが、江戸時代の浮世絵から始めるあたりも気合いが入っている。
少女が楽しむ文化の方は、昔のすごろく、着せ替え人形遊びから、少女マンガの付録まで、それも1970年代までだ。陸奥A子とか水森亜土とかいがらしゆみことか、と、名前を挙げれば、わかる方も多いかと思う。現代だったらアイカツとかも入るんだろう。松本かつぢのデザインが洗練されているのに驚いた。
少女を楽しむ方は日本画、洋画からフィギュア、アニメ、インスタレーションまで、枚挙にいとまが無い。過去の物は、少女のどのような点にポイントが置かれた作品なのか、を通して時代が感じられる。現代に近づくほど、少女性が少女それ自体と切り離され、イメージとなってそれ独自にテーマとされてゆくようになるのがわかる。《リボンの騎士》や《ひみつのアッコちゃん》は本来少女マンガであり、少女が楽しむ物に分類されるはずなのだが、初音ミク、ミンキーモモ、クリィミーマミなどと同じ部屋に分類されている。アニメ化されることで、両方の性質を持つようになったんだね。
フィギュアとなると、ふつーにAmazonで売ってるものがガラスケースの中に収まっているが、それでも芸術品としての隙が無いとこなんかはさすがだ。きっと十何年たてば、立派に美術品として通用すると思う。

ああっ女神さまっ ベルダンディー with ホーリーベル (1/10スケール PVC製塗装済み完成品)


劇場版マクロスF~イツワリノウタヒメ~ シェリル・ノーム (1/7スケール PVC製塗装済み完成品)

現代美術はカイカイキキ系の作品が多いんじゃないか、会田誠は入れた方が、とかちょっと思ったけど、最近の作品についてはいろいろ大人のジジョーもあるだろうし、「萌え」を正面からアートのテーマとして取り上げているとこと言えば、まあ、カイカイキキになるだろうし、まあいいや。

この展覧会のために作られた新作アニメ《女生徒》は良かった。
太宰の原作をアニメにしたものだけど、女学生のうつろう、ひねくれた気分をひらひらと綴りながら、年を取ってしまった自分から見ると、
ああ、こんなのあったよな~、とか、こういう気分は間違ってなかったんだな~、とか思ったりした。
横浜トリエンナーレ2014を見たときも思ったけど、
年を取ると、ちゃんと論理的に構成された意見とか、とりあえず大勢がいう意見とか、そういう「強い」意見をどうしても重視してしまって、移ろいやすい気分とか、ちゃんとした文章にならない言葉の断片とか、そういう物を無視してしまうようにいつの間にかなっていたけど、弱いもの、はかないものでも、間違ってないものって、あるんだな~。

そんな風にしみじみしながらエントランスに降りてみて、あらためてでっかい少女風船をながめると
でかいんだけど、頼りなげにふるふる震えていて、針でつついたら一瞬で大破するであろう風船と少女という存在、そして、少女というはかなくて弱い意識なのに、これだけでかいって、とても不思議だなって思った。


常設展示
画材という観点から西洋絵画を紹介したものが面白かった。
説明に気合いが感じられて、
企画で見せるぞっていう方針の美術館なんだな
って思った。
若冲の《樹花鳥獣図屏風》を所蔵しているんだけど、見られなかったのが残念だった。
[PR]

by k_penguin | 2014-10-05 23:32 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)  

小林賢太郎がコントや演劇のためにつくった美術 展

初日に素早くいって、帰ってきました。青山スパイラル。
c0030037_17535539.jpg

混んでました。でも、回廊での展示だから、それほど難儀ではないです。
ライブポツネンをやっているモニター前に客はたまるから、
そこをスルーすれば楽。
内容は、小林賢太郎がコントや演劇のためにつくった美術です。それ以上でもそれ以下でもない。
 P+のあの劇場の絵を生で見たい。とか
 KKTV6のあの絵を生で見たい。とか
 線上の手男のあの絵をry
とかいう人は、希望が叶えられます。思ってたより大きくない絵でした。
振り子とチーズケーキのキャスキットソンのジャケットなど、舞台衣装も見られます。
赤い丸高帽はきれいでした。

「あの絵」や「この絵」の絵はがきも売ってます(たべっこ動物など、劇場グッズの売れ残りも売ってます)。
P+劇場の絵は欲しかったのですが、はがき4枚セット1000円はいかにも高いので、買いませんでした。
(P+の劇場の絵とKKTV6の間違い探しの絵は別のセットに入っているので、欲しい人は両方のセットを買ってね)

会場には小林さん自身による解説が置かれています。
公式メッセと似て、慇懃ですが、大した内容はありません。
Pのエッシャー的立体を持っている写真の作り方とか説明はされているのですが、
 これをこうしてこうすれば、CG使わなくても同じようなことができるよ。
というにとどまり、なぜCGを使いたくなかったのかについては触れられていません。
なんとなく、今年の新年コメントの
「やりなさい」と言われたことを、興味がなくても「やる」ということが、大人になるにつれ大量に現れます。好きか嫌いかなんて関係なく、ただ「やる」。

というのを思い出しました。
あ、KKTV3の「ひしめく本の森を 積む港」が、学校を指しているというのは初めて知りました。

まあ無料だからいっか。そんな感じ。本売れると良いね。
[PR]

by k_penguin | 2014-09-19 18:36 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)  

小林賢太郎テレビ6 記憶の庭

この前、飲み会の際に知り合いにマジックを披露してもらって、
それは、カードの山の中からこちらが抜き取ったカードをあてるというものだったのだが、
彼が「これですか?」と、カードを1枚示したときには
もう俺は自分の引いたカードが何だったのか忘れていた。

と、いうワタシなので、
番組の冒頭で、間違い探しするから絵の内容を覚えろとか言われた時点で心が折れてしまって、
で、とりあえず1回視聴した時点で
エントリだけ開けて、コメント誰かくれないかなー、と
人頼みになったのであった。

エントリだけただ開けるのも芸が無いので、感想を書き散らす。

番組自体は面白かったと思う。
クイズ番組のやつとか忘れん坊将軍とか、どうなるか見え見えでも楽しかったし。
庭師の話は、最後主人と逆転するんだけど(あ、これ、ネタバレか)、別に困らないじゃんって思った。
お屋敷の主人が家庭とか持ってれば、ちょっとはホラーな感じしたけど、
別に一人みたいだし、命取られるわけでもないし、今までもなぞなぞにはまってるとか暇もてあましてるみたいだし、以前と大して変わらないと思う。

間違い探しの絵は変わってないけど、小林さんの服装が替わっていることは、多分、庭師の話と小林さんはセットだということだろうし、
存在を示すのは音だ。ということを言った後、番組の最後で緑のチェックシートで姿を消してから、気配が音で示されたりするのは、小林さん的なアレなんだろーなー
とかちょっと思ったけど、「アレ」の中身がなんなのか、詰める気が余りしないのであった。

ともあれ、「ノケモノ」も話的に安定してる方だし、小林さん調子よさそうでよかったけど、
ワタシはつまんないなー、とか密かに思ったりしてるのであることだなあ。
[PR]

by k_penguin | 2014-05-31 23:53 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)  

『振り子とチーズケーキ』 2個目

『振り子とチーズケーキ』

コメントが意外とのびて、スクロールがめんどくさくなってきたので、
2つめのエントリを作ってみました。
みなさん、お気軽においでください。
[PR]

by k_penguin | 2014-01-13 22:37 | エンタ系 | Trackback | Comments(51)  

『バウドリーノ 上・下』

夏休みの読書として、ウンベルト・エーコの新作(と言っても出たのはかなり前)を選んだ。

エーコは一般的には『薔薇の名前』の作者として知られていて、知的サスペンスものの作家と思う人もいるかもしれないが、記号論の学者であって、むしろ「あの(くそ難しい文章の)エーコが推理小説を書いた!しかも大ヒットてw」という印象だった。
だから彼の作品は、自分としては推理小説だとは思っておらず、記号論の実験小説だと思っている。
記号論とは、簡単にいうと、表現するものと表現されるものとの関係の研究である。
『薔薇の名前』でバスカビルのウィリアムが言った言葉に、たしか、
真実は虚構に影響を与え、虚構は真実に影響を与える。
といったものがあって、この言葉の後半部分、つまり虚構が真実に影響を与える部分が記号論である。
もっとも、今のこの部分を書くために、「薔薇の名前」を読み返してみたのだが、どうしてもこれに相当する部分を見つけることができなかった。

『バウドリーノ』においては、語り手のバウドリーノが最初から自分を嘘つきであると言い切ることで、この、虚構が真実に影響を与えることが作品のテーマに据えられている。
と同時に、歴史小説の面とファンタジーの面と、下巻に入れば推理小説の面も持ち合わせる盛りだくさんの小説である。
もっとも、「虚構が真実に影響を与える」という作品の因果律を心得ていれば、推理小説の謎はあっさり解けてしまうから、あまり面白くはない。要するに、考えすぎたあまり単純な事実を複雑化してしまうというオチなんだろーなー。と、予測できるからだ(『薔薇の名前』もそうだし)。
 
また、この話は西欧的な構造とテーマを持っている。バウドリーノは嘘つきである自分を自嘲し、神とは何かにこだわり、世界の構造にこだわる。
神やイエスに関する様々な学説が登場し、でもどんなに東の最果ての地まで行っても、原住民の信仰には必ずイエスが登場して、仏陀とかは登場しない。
日本人の自分としては「別にどーでもいーじゃんよ」という悩みに見える。
いや、神にこだわるのはまだわかる。神は権力の正当化の淵源であって、神聖ローマ皇帝フリードリヒの権力を正当化してあげるために、バウドリーノは司祭ヨハネの王国という自分で作り出した嘘の国を探すことになったのだから。権力には力だけではなく、正当性も必要なのだ。
しかし、これまた日本人としては、「正当性ほしけりゃ京の帝に一筆書いてもらえばいーじゃん」程度のもんで、京都の帝に一筆もらえなかったからっつって、どっか遠い外国に「帝」が居れば都合が良いのに、とかは考えない。
そう思うと、「天皇家」以外に正当性の淵源を求めることを自然と避けてきた日本は、やはり表徴の帝国であって、記号的に正しかった、というか、大規模な戦争が嫌いだったのかもしれない。正当性が2つ以上あると、ジェノサイドは避けられないからね。

そして、この物語は、バウドリーノがニケタスに語り、さらにそれがパフヌティウスに語られるという三重構造をとっている(エーコも入れれば四重構造)。
そして、語り部が語るとき、そこには必ず語り部によって嘘が含められる、ということがこの物語の因果律である。
どの部分が誰による嘘なのか。パフヌティウスがフリードリヒ殺人事件の真相を解いたことはどう影響するのか。
そう思うと、まじめに取り組むほどはぐらかされる様な気分になってくる。

そんなわけで、一般日本人読者としては、この話はむしろなーんも考えんと、
バウドリーノという、ついた嘘がなぜか真実になってしまう男の人生の物語として楽しむのが正解なんじゃないかなー、と思う。それだけでも十分楽しめるし。
神とか世界とか、よくわかんないけど、自分の生活が守れるんなら嘘でもよくね?
でも、さらに考えてみれば、
そう思う人たちのためにバウドリーノは嘘をついてきたんだよね。彼の嘘は他人を喜ばせるための嘘が多いから。
バウドリーノは最後、真実の愛のために帰らぬ旅に出る。男が生きて行くには、やっぱり真実が必要なのか、それとも、「真実」という名のロマンが必要なのか。

考えれば考えるほど謎めくけど、考えなくてもオケな万能タイプの物語。
関係ないけど、雌牛のロジーナの存在感が良かった。


バウドリーノ(上)
[PR]

by k_penguin | 2013-09-02 00:03 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)