『アキレスと亀』

北野武監督の新作は、売れないゲージュツカのお話。

しょっぱな唐突にアニメで、アキレスと亀のパラドックスの説明が入る。
で、もう唐突に少年時代の主人公(真知寿)に切り替わって、あとは一切アキレスと亀との関わりの説明無し!
・・・ったくあのオッサンは、相変わらず乱暴なんだから。



しかも、真知寿はずーっとぼーっとしているばっかりで、自分の意思らしいものを表明しない。
人にああしろと言われればぼーっとしたままその通りにし、それじゃダメだ、こうしろと言われればまたその通りにする。
ただ、絵を描くな、という命令だけは聞かない。ぼーっとしたまま絵を描いて、案の定殴られてうつむいている。
画商の言うとおりに次から次へと画風を変えるから世間から認められたいんだろうけど、売れたい、とすら言わない。
美術学校の仲間達とアクションペインティングやってるときも何かぼーっとしていて、楽しいようにも見えない。
おかげで見ている側も盛り上がらない。

でも中年期に入って、真知寿をビートたけしが演ずるようになると、奥さんの幸子(樋口可南子)と落書きしたり、ボビー・オロゴンに殴られたり、水風呂に沈められたり、楽しそうにゲージュツ(?)をやり出すようになり、見ている側も楽しくなってくる。
結局描くものなんか、何だって良いのだ。現実から逃げられさえすればそれで良いのだ。

そう、ただ、絵を描いているだけの生活能力がまるで無い男。最初は金持ちの家に生まれてきたけれど、会社が倒産、両親自殺。
絵だけ描いているわけにはいかず、あっという間に現実に追いつかれ
 ・・・るはずなのに、これがどういうわけか追いつかれない。
周りの同じ志をもつ友人達はあっという間に現実に追いつかれて死んでゆくのに(渡米して成功した人もいるが)、なぜかぼーっとしたまま、周りの人の好意に支えられ、「芸術」という0.00・・・01mmの皮膜1枚で現実から逃げながらひたすら絵だけを描く。
絵は売れない。
彼の絵は画廊に飾られ、喫茶店に飾られているのに、彼の手には一銭も入ってこない。
それでも彼は画商に抗議もせず、ぼーっとしたまま絵を描き続ける。
いやいや、そんなはずはない。現実が追いつかないなんて。ありえない。
娘がヤク中で死に、最大の理解者の妻が去り、さあこれでもう終わり、と思いきや、・・・ところがまだしぶとく彼は生き残る。

最後に彼の「作品」が「売れた」とき、つまり彼の芸術が理解されたときにアキレスは亀に追いつき、話は終わるわけだが・・・。

わかりにくすぎ。
せめて映画のラストまでにこのからくりが理解できるようにしておいて欲しい。ラストの良さが理解できないから。

そーそー、3分くらいしか出てないけど、大竹まことのおでん屋の親父がばりばり良かった。
「アフリカの飢えてる子供の前に、ピカソとおにぎり出してみな。絶対おにぎり取るよ」。
シティボーイズの大竹まことがこれを言うってだけで、じーんと来たよ。良かったなあ。
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by k_penguin | 2008-10-03 01:44 | エンタ系 | Trackback | Comments(2)  

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Commented by rainycloudy at 2008-10-11 20:26
はじめまして.とかげです.

この記事を読み観たい、という思いが募ってしまいました.スミマセン.(笑)
Commented by k_penguin at 2008-10-11 21:09
とかげさん初めまして。
観たいと思っていただけて、記事書いた者としては嬉しいです。
盛り上がりに欠けるので映画としては受けない作品だと思いますが、
芸術の理解者ぶった無教養な金持ちを中尾彬が演じたりして、
演じている人のキャラを知っていると味わいが増すってことが隠し味です。

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