『コレラの時代の愛』

ガルシア・マルケスの小説が原作だから観た映画。
51年9ヶ月と4日、愛する女を待ち続けた男の物語。
と、紹介されているのだが、ロマンチックな話を期待した方はがっかりすること必然。
主人公フロレンティーノは自分を振って結婚してしまったフェルミーナを待つ一方で、622人の女と関係し、それをノートに記録するから。

そもそもガルシア・マルケスにとって、愛は決して素晴らしいものではない。それは彼の小説に『愛その他の悪霊について』というタイトルのものがあることからもわかる。
この映画でも、自分の内側で恋愛感情を巨大に成長させたおかげですっかりキモイ感じになってしまい、そのキモさを一目で感じ取ったフェルミーナにあっさり振られてしまうフロレンティーノをハビエル・バルデムが怪演していて、これは素晴らしかった。

でも、それ以外は、割と大したことないっつーか、小説の筋を簡単に追ってしまっただけというか、そんな感じ。
51年9ヶ月と4日、愛する女を待ち続けた男の話って言われると、どうしてもその女との関係だけに目がいってしまって、それ以外の女はその他大勢扱いになってしまうけれど、原作で面白いのは、その622人(の一部)の女たちそれぞれの話なのだ。
そーゆー意味で、これは一途な愛の話と言うよりも、源氏物語に似ている。
きっかけはフェルミーナを待つことしかできない苦しみから逃れるために、その辺の女に手を出すのだとしても、フロレンティーノはフェルミーナ以外の女ともちゃんと恋愛している。
映画ではその他の女たちの描写が足りないと思った(精神病院から脱走したサラ・ノリエーガ、出して欲しかったなー・・・)。

光と影のコントラストが強いラテンアメリカを舞台にしているので、映像的に陰影表現に期待していたのだが、これもあまりピンとこなかった。アメリカの監督だからか?
そういえば、手紙の文字が英語なのも気になった。いや、アメリカ映画なんだからそうだろうけどさ、コロンビアの話なんだからスペイン語だよね、普通。

「金の町」を川船が出航したところで終わってしまうラストには、むかついた。
あれでは長年の思いが叶いました、良かったね、ちゃんちゃん
という終わり方じゃないか。
生きている以上、そこから後のことを考えなければならない(永遠なのは死ではなく、むしろ生である、というのがあの話の結論)。
生きる目的をその成就という形で失ったフロレンティーノは、そこからどういう行動を取るのか。
原作のラストの方が絶対良いと思う。
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by k_penguin | 2008-08-24 20:43 | エンタ系 | Trackback(2) | Comments(0)  

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Tracked from クマの巣 at 2008-09-08 09:35
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