手品種明かしで賠償請求

この記事を見て、最初に頭に浮かんだのは、確か、裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火がこの裁判を記事にしていて、煙草がコインを通過するマジックの種明かしが出来ることに検察官がすごく喜んでいた、ということだった。
(ちなみにこの記事の続きがこれ。)

で、次に頭に浮かんだのは、訴訟を提起した「プロとアマの手品師たち49人」の中に、バニー兄さんはいるのだろうか、ということだったが、・・・まあ、入っていないんだろうな、多分。

さて、バニー兄さんはおいといて、いくつかの記事を見てみたが、侵害利益が何なのかについて報道にぶれがある。
朝日は手品の種を著作権・知的財産権としてとらえている。
共同通信は見出しで「財産権」と書いている。
毎日はどの権利とも書かずに、「手品の種は手品師の共有財産で、法的に保護されるべきだ」という原告の主張を引用。
アマの手品師が混じっていることからしても、営業妨害を主張しているわけではないんだよね。
原告の主張からすると、どの権利、と分類はできないが、とりあえず「手品の種を理由無くばらされない利益」は法律上保護される、という感じか。

請求額が198万円と少ないことと、謝罪放送を求めている(名誉毀損もあわせて主張しているので)ことからすれば、提訴それ自体に、安易に手品のネタばらしを求める風潮への抗議する意味合いが強いと思われる。


訴訟の対象になっている行為も、ちょっと分かりづらい。
番組で事件と直接関係ない手品の種まで明かされた、と原告側は主張しているが、報道されたのは貨幣損傷等取締法違反事件。
貨幣損傷って、この場合、コインにタバコを通すマジックのために、お金のど真ん中に丸い穴を開けて手品の種用コイン(ギミックコイン)を作ることで、つまり、手品の種と事件は直接関係しているのだ。
どういう貨幣にどういう傷を付けたのかを報道しただけで、タバコ通しのマジックの種はふつーの人なら分かってしまう。
原告側も報道それ自体に文句を言っているのではなく、
時事通信社の記事によると、
番組内で手品とそのネタばらしを実演してみせたことが「やりすぎ」といいたいらしい。

しかし、コインに穴を開けてギミックコインを作ったという報道の時点で既にネタばらしは完了している。コインの写真も報道されている。
果たしてネタばらしショーは「やりすぎ」と言えるのか。
ネタばらしショーをしたのとしないのとで、ネタばれの程度はちがうのか、そして、古典的なマジックのネタをばらすのは法律的にイクナイ事なのか。
被侵害利益としては弱いと言わざるをえないので、違法性が強く要求されると思う。
俺としては、損害賠償は取れないのではないかと推測する。


でも、阿曽山大噴火さんの記事を見ても分かるように、裁判でもみんな、証明そのものよりも、マジックの種明かしの方に興味津々。
テレビの番組作りもそっちメインになってしまったであろうことが容易に想像できる。
この事件の裁判官も「こういうことになってね。コインを使ったマジックはなくなっちゃうのかね」と言ったくらいだから、ギミックコインネタは他のネタのネタばらしよりもマジシャンにとって大きな痛手なんだろうな、ということが想像できる。
提訴に踏み切る気持ちも分かるような気がする。


なお、貨幣損傷等取締法との関係では、ギミックコインの作成は許可制にしたらどうだろうという阿曽山大噴火さんの主張が面白かった。
悪気があるわけではないのだし、何らかの法定除外事由を付けられないものだろうか。


*追記 5月3日*
トラバ先の記事から、原告弁護人のブログを見つける。
ギミックコインに限らず、マジックネタばらし、というジャンルを娯楽として許していること自体への異議申し立ての意味合いがメインらしいことがわかって、面白かった。
・・・ってことは、ネタ晴らしを積極的に行うMr.マリックが花を公演に出したバニー兄さん、が原告団に入っている可能性はますます薄いわけだな。

また、他のブログで見られた意見として、「訴訟なんかせずに自分の腕を磨いて対応すればいいのに」的意見が見られた。
以前の「マッキーvsいいから帽子とれよ先生(←シティーボーイズの公演を観た人だけが分かる)」の記事では、俺もこれと同じ趣旨のことを書いたが、今回はそれと必ずしも同視できないのではないかという気もする。
マジックの種はマジシャン全体にとっての企業秘密といってもいい面があるからだ。
なかなか興味深い。

2008.10.30 判決が出ました。
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by k_penguin | 2007-05-02 00:52 | エンタテイメントと法 | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from 時評親爺 at 2007-05-03 12:19
タイトル : 貨幣損傷等取締法違反事件と「種明かし」
いろいろ調べるのに時間がかかりかなり出遅れた感があるが・・・どうにも判りにくい報道と言ったら良いのか、提訴と言ったら良いのか・・・(謎)。1日付エキサイトニュース・毎日配信に拠ると、「手品用コイン製造者の逮捕報道」のテレビ報道で、「必要以上に手品の種明かしをしてトリックの価値を下げた」との主たる理由?で、マジシャンらがテレビ局を提訴したと言うのである。以下に全文を引用する(文中の太字・下線は筆者による)。 <手品師>「必要以上に種明かし」とテレビ局を提訴 [05月01日 20時15分] ...... more
Commented at 2007-05-03 11:59
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by k_penguin at 2007-05-03 19:51
非公開コメントさん、コメントどうもです。
いや、ほーりつぎょーかいなんて8割方、はったりっすよ。
はったり。
Commented by 豆福 at 2007-05-10 01:57 x
はじめまして、いつもラーメンズ関連の記事を興味深く拝読しております。
さて、バニー兄さんの件ですが、彼はCLASSICのときに「手品オタクとガンダムオタク」のコント内で、世界的に保護されているマジックのトリックを次々に明かしてしまい、そのコントだけDVDに収録できなくなってしまったという経緯があります^^;今回の原告の方々とは逆を行ってますね。
Commented by k_penguin at 2007-05-10 12:31
豆福さん、貴重な情報どうもありがとうございます。

「CLASSIC」のその未収録コントは、WEB上のログ(バニー兄さんの嫌いなヤツですな)を拾ったことがありましたが、
ガンダムネタがオトナの事情に引っかかっているのだと思っていました。
(ちなみに固有名詞自体は著作権の保護の対象になりませんが、サンライズは著作権に関わりなくそーゆーことにうるさい)

マジック業界の内部もいろいろなのだ、と言うこと、及び
バニー兄さんの物事の考え方の一端が伺えて興味深いです。

どうもありがとうございました。