『TEXT』

ラーメンズ第16回公演にして、実は初めて舞台で観るラーメンズ。

The Japan Timesに載っていた、新聞を切り抜きだらけにするという、『TEXT』の広告から察して、今回の舞台も、前回同様、理解するのに精神力が必要なタイプであるだろうとは予測していた。
もう四十になろうというのにあまり精神的に辛い目には遭いたくないので、俺は軽く鬱が入っていたが、無い知恵を振り絞ってゲットしたチケットを無駄にする気は毛頭無く、天王洲の銀河劇場にやってきた。

今まで小林賢太郎のソロライブやKKPは観てきていたが、それよりも確実に客席の男性比率が高く(3割ほど)、客の年齢層も幅広い。
また、少なくとも1階席前半には妙にうわついた熱気がある。
その客席とは対照的に、隅に黒い箱が置いてあるだけの黒一色の舞台は相変わらず簡素でぶっきらぼうだ。
理解するのに精神力が必要という予測は多分当たりだろう。

で、実際、その予測は当たりだった。
『TEXT』というタイトル通り、語呂合わせが多いのだが、その合わせっぷりが尋常ではない。
「あいうえお作文」なら普通だが、「あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねの(中略)わをん作文」となれば、尋常ではないことが少しは分かっていただけると思う。
もちろん笑えるのだが、しゃべりのスピードが速く、なんだか強制的に脳トレをさせられているような気分でもある。
また、前のコントで言ったことのいくつかが、後のコントの前フリになっているものがあって、これは、その言葉をちゃんと覚えていなければ、後のコントがわかりにくい。
後ろの席の兄ちゃんが隣に「ね?何の条例!?何の条例!?」と必死でわめいていた(わめかなければ笑い声にかき消されるため)。
DVDで観るのであれば、音声がずっとクリアだし、理解しにくいところは繰り返して聞けるけれど、舞台では一発勝負。
前衛的な作品で拍手のタイミングがつかみにくいのに、客が妙な感じにテンション上がっているから、変なところで拍手やウケが起きて台詞が聞き取りにくくなったりする。
きつい。

しかも、キツイわりには、何というか、生肉を噛んでいるような妙な感覚が残る。
これをさせて、それであなたは何を言いたいの?という苛立つ感覚。
だってこれは舞台であって、ニンテンドーDSLiteのゲームじゃないからね。脳トレだけで終了というわけにはいかない。
同じやりとりが繰り返されることが多く、デジャヴュ感が苛立ちに拍車をかける。
オチの度に「ホゥ~」と言う隣の客が何かむかつく。「ホゥ~」というほどには斬新なオチじゃないしい。

 それまでの大騒ぎとはうって変わった静かな最後の作品で、それまでの脳トレが総てこの作品のための前フリであったことがわかる(この意味でこの舞台は「○maru」に似ている)。
脳トレは脳トレ。一人遊びで何も伝わらない。金村は去り、常磐(名前を音読みしてみよう)は生活を続ける。
伝わらなければ、それは何もないということなのか。
誰にも認識できない透明人間は、居ないことと同じなのか。
肯定と否定の間で震える心をそのまま無心にすくい上げ、まっすぐこちらに差し出した作品。
やはり小林賢太郎の作品は美しくて悲しかった。


・・・えー、頭が疲れてもいいから笑いたいという方にはお勧めです。
笑って癒されたいと思っている方には勧めません。


なお、後に追加の評論を書くかもしれません。
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by k_penguin | 2007-02-10 20:05 | エンタ系2(ライブレビュー) | Trackback(1) | Comments(13)
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Tracked from ペンギンはブログを見ない at 2007-02-17 16:01
タイトル : 『TEXT』Act.2 透明人間は要らないか(金村視点)
*はじめに* この記事は、ラーメンズ#16『TEXT』の最後の話についての一解釈を述べるものです。 通常のライブレビューと違いますので、ライブやDVDを見るかどうか決める参考になるようなものではありません。 あらかじめご承知おきを。まず、この話を宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』と比較することから入ろうとしたが、それは止めた。 作者も明らかに『銀河鉄道の夜』を意識しているのだが、これをやると逆にすごくわかりにくくなってしまうのだ。 理由は、まず大体『銀河鉄道の夜』自体が未完の作品であり、解釈もいろい...... more
Commented by ぶう at 2007-02-11 20:24 x
こんばんは。
「TEXT」レビューお待ちしておりました。

>肯定と否定の間で震える心をそのまま無心にすくい上げ、まっすぐこちらに差し出した作品。

珍しく、優しいお言葉で締めくくられて。ほほぉ~・・・と思っていたら

>なお、後に追加の評論を書くかもしれません。
・・・た、楽しみ~
k_penguin 氏の、ツッコミがないとかえって不安になってしまう
(ツッコミを入れる価値もないと思われてしまう舞台)
今日この頃です(笑


Commented by ぶう at 2007-02-11 20:25 x
>前のコントで言ったことのいくつかがー
私は、初日含め3回観ましたが、1回目は流れについて行くのに必死で
2回目、3回目で「あぁこれは、次の前フリ。あっ!今のは最後に繋がるのね」・・・ノミコミ悪すぎですかねぇ。
しかし、恥ずかしながら私は「銀河鉄道・・・」を読んだことがありません。
「純文学」?と言うものが得意でなく「夏目漱石」「太宰治」・・・みな途中で投げてしまいました。
淡々と繰り返しながら進んでいく日常or非日常。オチのない(ワカラナイ)ラスト。頭の中に映像が浮かんでこないのです。
「TEXT」を観てから急いで「銀河鉄道・・・」読みましたがやっぱりよくワカラナイ・・・
・・・と言うことは、本当は「ラーメンズ(小林賢太郎)」も苦手じゃないとオカシイデスネェ・・・
また、何故「ラーメンズ」にこんなにも魅かれるのか自問自答の日々です。

ちなみに「銀河鉄道999」は大好きです。(違う?)
Commented by せっきー。 at 2007-02-11 21:25 x
追記、楽しみにしております。

公式コメントがやっと更新されていました。
彼の笑い声が聞こえてくるようです。
仁さんのコメントが素敵すぎます。
よ〜く読んでみてください。
こんなところにも抜かりない彼等。
ぶうさんが惹かれるのはこういうところなんじゃないかしら?
Commented by k_penguin at 2007-02-11 21:43
ぶうさん、お久しぶりです。

もう3回も観ましたか、いいなあ。
やっぱり2回以上観ないとわかりにくいんですよねー。他の舞台ではこんなことないんだけどなあ。
ま、今回は事前の備えはありますけどね。

>k_penguin 氏の、ツッコミ
うーん、実は、今回の舞台、今までのような「良くない」という印象はなかったんですね(何の条例が出たかくらいは言って欲しい、というような表現上の文句はありますが)。
「○maru」が「ぎりぎりアウト」なら、こちらは「ぎりぎりセーフ」判定かな、と。
ま、観た後、一晩布団にくるまって泣きましたけどね。

だから今回は、どう評論を書こうかなって考え中です。
多分、私がこれだけ泣いたのに、最後の話が「悲しい話」とはとらえられていないらしいのが問題点、なんでしょうねえ。

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」がベースなのは確かですが、ジョバンニとカムパネルラの関係性さえつかんでいれば十分だと思います。
これとの比較という視点からも書いてみようかな、と思っています。
多分、最後の作品のために銀河劇場で上演したんでしょうね。
モノレールに乗って銀河劇場で観るのが一番ふさわしいかと思いました。

ワタシはりんかい線ですが。
Commented by k_penguin at 2007-02-11 21:55
せっきー。 さん、情報ありがとうございます。
トップページがまだ更新されていないのに、よく見つけましたねえ。
でも、片桐さんはわかりやすすぎですよ。
あと「昨日」を漢字にしちゃダメじゃん。

公演はホントに盛り上がってました。
私が言ったときはアンコールが1回多かったようで、楽屋からピンクのゴムサンダルを履いた片桐さんと、タオルを首に引っかけた小林さんが舞台にUターンして、
「言うこと何もねーよ」って顔していました。
Commented by ぶう at 2007-02-12 00:17 x
>他の舞台ではこんなことないんだけどなあ。
そーなんですよねぇ。他のは大体1回観ると、満足できるのに・・・
『みんなも昔はリーだったー』なんかも、大笑いして「楽しいお芝居だったぁ」と思いましたが、もう一回観ようとは考えなかったです。
(板尾さんは、使われ方がもったいなかったと思いますが・・・
「たっけさん」。立ち振る舞いが美しい。流石です)

>これとの比較という視点からも書いてみようかな、と思っています。
おおぉ~。ますます楽しみぃ~であります。
「銀河鉄道の夜」では、『僕たち一緒に行こうねえ』と言うのは、ジョバンニの方ですね・・・
では「TEXT」で夢を見ているのは誰(どっち)・・・?
その他、色々k_penguin 氏の見解気長にお待ちしております。





Commented by ぶう at 2007-02-12 00:18 x
そーそー
>1階席前半には妙にうわついた熱気がある。
私も感じました。やはり、べらぼーなお値段のお席ゆえテンションも上げざるを得ないでしょう。
上から(2階)見ながら、正規の値段でチケットを手に入れた人が何人いるんだろう・・・などと考えていました。
(私は、オークションに関しては「否」ではありませんが・・・)

せっきー。さん。
>抜かりない彼等。
はい!そんな彼等に「ゾクゾク」します!


Commented by k_penguin at 2007-02-12 00:55
大王
リーは、もう1度やれば完成度が上がると思います。
ワタシ的には、テレビのままのノリのホリケンがちょっと・・・といった感じ。
そーだ、『The Worst Of・・・』、勢いでDVD予約したんだった。
もう届く頃だと思うんですが・・・来るんだろーな、ちゃんと!

「TEXT」
客席のテンションは、なんか独特ですね。
ライブポツネンの時はここまでではなかったと思いましたが。

なんか、なるべくなら2回観たくないんですよね。
・・・ほら、そういうのって、まるでファンみたいじゃん?(何かに見栄を張っている)
Commented by ちょっと心外なので at 2007-02-14 10:58 x
>ぶう様
私、ローソンの先行発売でチケットを3回取り、すべて1階席前方(1回は最前列)でした。プレリザーブ手数料もなく5,000円ぽっきりの正規の値段しか払ってません。私の友人達(両手で足りないくらいの数)も同じような状況です。前方に座っている人間はオークションを利用したとは思わないでくださいね。
>k_penguin様
お邪魔しました。免罪符的に書くのではなく、本当に追記期待しています。
Commented by k_penguin at 2007-02-14 12:57
ちょっと心外なので さん、コメント、ありがとうございます。
チケットに関しては一言もの申したい方もいらっしゃるかと思います。
オークションの流れは私も眺めていましたが、1月中旬に瞬間的に値が下がっただけで、後は大体、E列より前は1万越えと言ったところでしょうか。
ぶうさんも「正規の値段でチケットを手に入れた人が何人」かは居ることはご存じですし、ちょっと心外なのでさんも、お高い値を払っても観たかった方がいらっしゃることはご存じと思います。
この辺は「お一人様1公演のみ4枚まで、を考える」
http://shiropenk.exblog.jp/5285054
が関連エントリになります。

ところで、ふと思ったのですが、何列から前が「前の方」なんですかねえ。
私はH列を目安にしてるんですが・・・。

>追記期待しています。
ありがとうございます。
小林賢太郎の評論は時間がかかるので、気長に待って下さい。
Commented by ぶう at 2007-02-15 23:03 x
>ちょっと心外なので さま
そーですね。ごめんなさい。
貴方のように観たい人全部が正規の金額でチケットが取れると良いですね。
貴方の沢山のご友人にも大変失礼しました。

ただ、私は高い金額で手に入れた席がいけないとは思っていないのですよ。それでも観たいと言う気持ちは良く分かります。
あぁ、こんなことを書くとまた心外に思われてしまいますね。

ちなみに私は、ローソンでチケット発券した時、F列より前なら「やった!前の方だ!」と思います。
Commented by takano at 2007-02-16 18:54 x
はじめまして。
"TEXT" のレビュー、とても面白く読ませて頂きました。

>伝わらなければ、それは何もないということなのか。
話が古くなるのですが、私は「零の箱式」版のタカシと父さんを見た時も、ラストで似たような苦しい感じがしたのを思い出します。
k_penguinさんのように、うまい言葉が見つからないのがもどかしいのですが、ラーメンズのコントには通底音のように、薄ぼんやりしたがらんどうの所があって、それがほんの時々、ポッカリ口を開いて見せるような不思議オーラ?がある気がしています。笑いの合間に、ふっと不安を誘う感じ。それって何なんだろう?とよく思います。

『銀河鉄道の夜』は決定稿がないそうですね。バージョンによっては、ジョバンニとカンパネルラは友人ですらなく、全部がジョバンニの夢だった、という話もあるとか(涙)。
追加の評論、お待ちしております。
Commented by k_penguin at 2007-02-16 20:03
>ぶうさん
>F列より前なら「やった!前の方だ!」と思います。

H列のワタシよりもキビシイですねえ。
あまり前すぎると、舞台全体が見渡しにくくなるので、
私はE列からH列をベストとしています。

takanoさん、はじめまして。
>笑いの合間に、ふっと不安を誘う感じ。

私はそこが小林賢太郎の悪い点だと思っています。
今回の作品でも、「誤植のない新聞」と言われたとき、不意に
「それって、何も書いてない新聞なんじゃないの?」と、不安になりました。
真っ白な新聞持ってるし。

>バージョンによっては、ジョバンニとカンパネルラは友人ですらなく、全部がジョバンニの夢だった、という話もあるとか(涙)

あ、それ、あるんですか。
そう考えた方が、この話を理解するには楽です。
この話は「金村視点」と「常盤視点」で、別の話になり、最後で2つの話が融合するのではないか、と考えています。
ちょうど「ばくはちゃん」の話とかのように。
それでいけたら、その形式で追加の評論を書きます。


法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


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