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『みんな昔はリーだった~EXIT FROM THE DRAGON~』

大王(後藤ひろひと)の急遽決まった新作。場所はPARCO劇場。12月16日14時開演。
渋谷で土曜のマチネーって、加藤和彦の歌にあったような気がするオサレな響きのシチュエーションだが、やってみると別にオサレな出来事があるわけではなかった。あたりまえだが
・・・あーそうさ。あたりまえさ。


さすが大王だけあって、『ダブリンの鐘つきカビ人間』ほどの号泣までには至らないが、やはりハンカチは持ったほうがいい。
笑って泣ける。大阪の基本。基本を押さえているものはやはり安心してみられるから良い。
心の中にいつまでもいる熱くて、繊細で、残酷で、おバカな「男の子」達のためのお話、という感じ。

堀内健が主役というふれこみであったようだが、「主役の1人」と形容した方が正しいと思う。台詞回しがやや平板でブルース・リーの物まねはあまり似ていないが、孤独に弱いお調子者というキャラははまり役なので一通りこなせていると思った。
竹下宏太郎がGJ。



さて、今になって思うのは、妙にレビューが書きにくい作品だということ。
ブルース・リーが好きで、淡い思いを抱くマドンナがいて、ケンカして、友達になって、別れがあって、そして時を経た再会。
でも、これを若くてバカだった頃のノスタルジックなお話、とまとめ上げて良いのだろうか、という気がどうしてもする。
と、いうのは、特に前半部分が王立劇場vol.5『The Worst of・・・』の最後の作品『森くん』を思わせて、これは「いじめ」っていう観点からとらえるべきなんではなかろうか、と考えちゃうからだ。

話の構成にも謎がある。
職業不明のおじさん(板尾創路)が甥っ子に語る真偽不明の気配がする昔話の形をとっているはずなのに、途中から語り手はその話の登場人物、ブルース・リーに夢中な中学生4人組の1人桑島(伊藤正之)に勝手にバトンタッチして、しかも途中にブルース・リーの「新作DVD」鑑賞会兼同窓会を勝手に自宅で開催される現在の桑島のシーンが入る。
つまりこの話がおじさんの創作なのか、桑島の回想なのかが分からないのだ。
おかげで話に入り込みづらい。

で、なぜ2視点使ったのかと考えたのだが、これをいじめっていう観点から観れば、傍観者的いじめ陣営側視点といじめられ側視点に分けたと理解できる。
いじめをとらえるのには、この2視点から見るのが一番全体を把握しやすいからだ。
弱いからいじめられる男の子と、弱いから止められない男の子。自分が弱い人間であることに気がついた二人(自分の弱さに気がつかないよっとは、大きくなっても昔のままだ)。
強くなりたい。そう、あのブルース・リーのように!(よっとはスタローンに乗り換えるが)
と、いうあたりで、話は、少年の輝くものへの単純で強いあこがれへとまとまってゆく(いじめについては、まあ、また後日ってことで。ほら、いろいろ、難しいしね)。
大人になって、みんなりーにはなれなかった。いや、もしかして、ならなかったのかもしれない。
取ろうと思えば棒を使ってとれる木の上のハンカチを、そのままにしておくように。

なお、2視点使ったおかげで話に入り込みづらくなる、という不具合は、デ・ニーロ用務員(後藤ひろひと)登場で、「まあ、そのへんどーでもいーや」的空気になって、後はなぜか気にならなくなる。・・・なぜなのか、まったく理由はないのだが。
話の構成の謎は最後に明かされるのだが、もう少し話をブラッシュ・アップすればもっとラストの感動が上がったと思う。
Commented by ぶう at 2006-12-24 23:55 x
こんばんは。
世間では今日は「クリスマスイブ」とか言う日らしいですが・・・

『みんな昔はリーだった~EXIT FROM THE DRAGON~』行かれましたか。
けっこう「大王」おさえていらっしゃるようで、ライブレビュー嬉しく、楽しく読ませてもらってます(コバ・・・ナントカの時と違いコメントお優しいので?)

私は、これからなので「力強くネタバレ」は楽しみに閉まっておきますね。

しかし、「NEXT」。オークション華やかですナァ・・・
全席、半分以上オークションに流れている感じがします。
って、チケット争奪、敗戦者のやっかみですが・・・
Commented by ぶう at 2006-12-25 00:24 x
ははは・・・
「TEXT」でしたねぇ・・・
最初に、公演名を見た時と同じ間違いをしてしまいました・・・
ちなみに次に浮かんだのが「非常口」(EXIT)でした。
Commented by k_penguin at 2006-12-25 01:26
ぶうさん、お久しぶりです。

>コバ・・・ナントカの時と違いコメントお優しいので?
大王は誰かさんと違い、基本的に安心して観られますからねえ。
でも、実はこのレビュー、「力強くネタバレ」部分にちょっと苦言が入っています。
観劇後のお楽しみ(?)にして下さい。

「TEXT」
私も「TEXT」という公演名を見たとき、最初に「NEXT」、一拍おいて、「EXIT」を連想しました。
公演名だけで内容を即断してはいけないと思うのですが、前向きなイメージがあるので、とりあえず、「ALICE」のような目には遭わずにすみそうだ、と読んでいます。

オークションはすごいですねえ。
出始めだから高騰しているだけかも、とも思いますが、
ずっとこの調子かもしれないという気もします。
何にせよ、2回以上観ないと理解しにくい、というのはやめて欲しいんですがね。
・・・はっ、また文句を言ってしまった。

ちなみに私は、45分間リロードを繰り返して、銀河劇場を1枚とりました。
by k_penguin | 2006-12-18 14:03 | エンタ系2(ライブレビュー) | Trackback | Comments(3)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin