『TAKE OFF』Take3 篠田はフライヤーを供出したのか

こんばんは。
ここ1ヶ月、ほとんど社会性が無くなってしまっているブログに顔をしかめている白片吟K氏です。
『TAKE OFF』なんですが、こーゆー解り辛い作品を無理に理解してやる義理も筋合いもない、と知ってはいるのですが、何となくムキになっています。


Take2で示したが、篠田がフライヤーに対する独占欲に支配されている状態から、フライヤーの幸せを考えるという成長をとげたということ、そしてそれはあびると織部が自転車とスクーターを供出したように、フライヤーを供出する、という形で示されている、という推測については、大まかには間違っていないと俺は思っている。
が、当該エントリーには反対するコメントもつかず、賛成するコメントもつかず、という状態だ。
無理もない。フライヤーはモノであって人じゃないからだ。
フライヤーの幸せって、フライヤーに意思がない以上、人間の側が勝手に決めるだけだし。それって結局篠田の一人芝居。
しかし、この点をクリアすれば、この話は一通り筋が通り、そしてそれは、初見の印象よりかすごくましである、とはいえると思う。
とゆーわけで、前置きが長くなったが、篠田はフライヤーを供出したのかについて、考察、検証する。



まず、フライヤーを供出したと推測される根拠。
あびると織部が出していて篠田が出していないことは話の構造的にバランスを欠く。供出した、と考える方が整合性がある。
小林賢太郎はこーゆーバランスにはこだわる人だ。
また、離陸のシーンでも篠田はフライヤーを「3人の持ち物の寄せ集め」と言っている。

「物事の前進のためにはある程度の悪が必要」なので、あびるはその犠牲のもとに金属パイプを出し、織部はエンジンを出す。両方「飛行機を飛ばすために必要なもの」と明言されている。つまり、フライヤーがコレクションアイテムに止まるのなら必要のないものだ。
篠田は、「航空力学」を提供している。これも「飛行機を飛ばすために必要なもの」だと明言されている。
ただ、それは篠田の犠牲を伴っていない。
「物事の前進のためにはある程度の悪が必要」であれば、彼はまた別のものを提供しなければならないはずだ。
篠田が独占欲を捨て、フライヤーを差し出すことにより、「仲間が3人」そろう。これも「離陸のために必要」と繰り返し明言されているアイテムだ。

ただ、これだけではフライヤーを供出したと積極的に裏付ける証拠にならない。
篠田は他の2人と違い、フライヤーと明確な会話をしていないからだ。
「飛行機は飾るものじゃなくて飛ばすもの」
篠田が自分に言っているともとれるし、フライヤーに言い聞かせているともとれる。
自分の元から旅立ちなさい、と促す言葉は全てこのような性質を持つだろう。
ここでエンジン音で良いからフライヤーがしゃべってくれたら、会話が成立した、と見なすことができるのであるが、それがないので、確信には至らない。

ただ、もし、フライヤーが人間だったら。
人間であるフライヤーが篠田に旅立ちなさいと言われたら、何と言うだろうか。
私はやはり、何も言わないと思う。
何も言わないで、黙って旅立つと思う。

ところで、あびると織部の場合、自転車またはスクーターがしたお願いはフライヤー離陸の時にかなえられている。
自転車は「僕の一部を身につけて」と言ったのであびるはナットのペンダントをもらう。
スクーターは「母さんを頼む」と言ったので、軽トラが息子を乗せてやってきた(運転しているのは母親なのだろう)。
そして、これと同時に、離陸に必要な向かい風が吹き始める。
順番は、軽トラ→風→ナットのペンダント、だ。
普通、プレゼントは出発の前に済ませるものだ。だとすると、後2者の順番は逆だ。
ここの順番が逆であることをもって、フライヤーと篠田は会話をし、フライヤーは「僕は旅立ちたい」と伝えた、と見るのは、うがちすぎだろうか。

まあ、うがちすぎでも、その方が良いと思うので、そーゆーことにしとく。
バニー兄さんはつくづく舞台の上で嘘がつけない人だと思う。

ついでだからダメだしの話を追加しておく。

俺が問題視しているのは、この篠田の裏切りのシーンよりも、篠田に図面を提示するシーンで、フライヤー作りの動機が明示されていないことだ。
これは、確信犯でやっていることだと思う。
意図はまだよく分からないが、「友情とか熱い台詞とかvsお金とか必要悪とか」という成長物の定型を壊したいという作者の意図は感じられるので、その辺が絡んでいるのかも。現実、いちいち動機言う奴いないしな。
しかし、このシーンが壊れていると、フライヤーが何故原寸大模型ではダメで、飛ぶようにしつらえなければならないのかが分からない。
はっきり言って、芝居の間中ずっとそれで頭を悩ませていて、笑うか眉間にしわを寄せて考えているかどっちか、という状態が続いた。
図面のシーンがスルーできれば、篠田の裏切りのシーンまでは話がもつ。
バニー兄さんだから、最後の方が壊れることはもう想定の範囲内。
しかし、それに加えて、最初まで壊れられては、精神的肉体的に中年の俺にはとてもじゃない、ついていけない(俺はコバケンより年上だ)。

もうこの際、ダメ出しとかいわないから。
土下座して頼むから。
ここは直して。お願いm(_ _)m

TAKE4はここ。

*追記 27日*
書き忘れてたけど、離陸の前夜、篠田は、あびると織部に、1度だって謝っていない。「ごめんなさい」も「許して」も言っていない。
仲間であれば、裏切っておいて、謝らない人をまた仲間として受け入れたりするか?
要するに、3人はその程度の間柄ってわけだ。
この話では、人と人の結びつきよりも、物と人の結びつきの方が重視されている。


*追記2 8月16日*
* 図面のシーンについて
作者本人は、この話をストレートに作ったつもりらしい。
それであの散らかりよう、ということは、ストレートというよりむしろ、思いつきで作った、ということだ。
とにかく、あまり考えないで作ったということを前提にすれば、あのシーンで飛行機作りの動機が明示されない理由は、「作者本人の頭の中でそれがすでに決定事項となっていたから。」ということになる。
自分がよく了解していることはつい説明をとばしてしまう。ありがちな間違いだが同人誌レベルの間違いだ。
今まで彼にこのレベルの間違いは無かったのだが。

* 篠田の動機
独占欲、と考えるのも単純にすぎる、と思うようになった。
独占欲だけなら、単に自分で借りた倉庫に持って行き、自分だけのコレクションにするために盗み出すはずだからだ。
ストレートに見れば、あのシーンは「お金のようだけど、お金じゃないよ。」と言っている。
お金じゃない(ホントは独占欲)なら、初めから金の話なんてしなければいいはずだ。
そこをあえて言っているということは、つまり、「ホントはお金じゃないよ。」と言いたかったということだ。
金じゃないと言いたいがために、わざわざ売り飛ばしたのだ。
いくら何でも、独占欲を主張したいだけで、このような持って回った、僻み根性丸出しな言い方はしないだろう。
やっぱり独占欲では無理が生じる。愛でなければリクツが通らない。
愛と独占欲は似ているけれどやっぱり違う。
愛だからこそ僻み根性が出るし、愛だからこそ相手の幸せを願う。
飛行機マニアは飛行機が好きだけど、やっぱり普段は飛行機の幸せを考えたりはしない。
それを考えるのは、ボーイング747が引退するときだけだ。


*追記3 9月23日*
結局良くなかった点は、篠田が自分に嘘をついてしまった点にあると思う。
裏切りがばれるクライマックスでは、「本当のこと」を言わなければならない。それがお約束。
なのに、変に中途半端な設定をしてしまったのが良くなかったと思う。
篠田は、正直な望みを言わなければならなかった。

「フライヤーに乗るのは僕だ。僕が乗って、一緒に落ちる」と。

だって12秒だよ。高い崖から落ちれば、12秒くらい滞空できる。
どうせ壊れてしまう点でもフライトと同じでしょ。
他の人を乗せたくない。これは、僕のフライヤー。
一緒に飛んで、一緒に死ぬ。
篠田はそう言って、織部さんにひっぱたかれればよかったのだ。

お前なんかどうでもいい。死にたければ死ねばいい。
でも、それではフライヤーが可哀想。
フライヤーは飛ぶためにあるのであって、落ちるためにあるんじゃない。

離陸するのに必要なもの。
鉄パイプ、エンジン、そして何より、
飛びたいという心。
それがあれば、仲間は後からついてくる。

これが正解だと思う。
どう思う、バニー?
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by k_penguin | 2006-06-25 22:19 | エンタ系 | Comments(0)