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小林賢太郎ライブポツネン2006『○maru』

ポツネンの続編のタイトルが「○」と知って最初に想像したことは「虚」という意味だ。
俺は、小林賢太郎の本質は「虚」である、という印象を持っている。彼は自他共に認める嘘つきだからだ。「嘘」という字は虚に口がついたものだ。
また、コバケンは舞台の最後の作品に、次の舞台の方向性を示すことが多い。前回のライブの最後の作品からみて、自分自身の本質に切り込むのではないか、と、期待できた。
しかしまあ、勝手に期待をして、勝手にがっかりする結果になってはつまらない。
とにかく、何も考えずに見ることだ。

東京グローブ座は一度行ってみたかった劇場だ。前庭の宮脇愛子の立体作品「うつろひ」をゆっくり味わってみたかったからだ。
男女比は3対7と見た。男女とも何か美術系が多い。




最初は、雑多で短いコントが相次いでとまどった。唐突に一発芸やったりして、流れをつかみづらいし、テクニックが先行する型が多くて食い足りない感がしていた。
ただ、前回問題があった(2割の客が寝てしまう)「テーブルコント」は大幅に改善されている。
大体、「Hand Maim」のような生身の人間と、映像とがからむものっていうのは、東京オペラシティのICCで体験型インスタレーションをよくやったので(岩井俊雄の作品とか)、見るものじゃなくて、やるもの、と思っていたが、今回は見ても楽しく仕上がっている。
「アナグラムの穴」もストーリー性が出ていて面白かった。
相変わらず大笑いできるようなものはないが、今回のライブは前回と異なり「コント」という文字は入っていないので、前回言った「これはコントではない」という批判は当たらない。
田舎の実家の納戸で子供の頃のおもちゃ箱をひっくり返してしまったような感じ。
何か子供の頃、こーゆー1人遊びしたなー、という気がするものを大仕掛けで完成度高くしたっつーか。喩えてみれば、ピタゴラ装置。「ピタゴラスイッチ」劇場版、といったとこか。
これはこれで、大きなお子さま大喜び、といった感じになったところで最後の白い○の作品。

いやー、今回は泣けた。
前回の例のお好み焼きの話は、悲しいけど泣けない(つまりカタルシスを与えることを拒否している)、という点が良くなかったが、今回は泣けたので良かった。本当にほっとした。
変な言い方だが、最後死んで良かったと思った。
これで彼は新しいスタートがきれる、と。
また、期待通り、彼自身の本質にずばりと切り込んでいたのも嬉しかった。
彼は何を隠すために嘘をつき続けていたのか。
パントマイム、マジック、言葉の論理操作。すべて無いものを有るように見せかけ、有るものを無いように見せかける技術。
彼には才能がなかったのだ。全ての技術は、それを隠すためのものだったのだ。
今回の作品のほとんどが技術先行型だった理由が分かったような気がした(オープニングの作品群とこの作品は対応関係にある)。
しかし、表現を諦めたとき、表現者は死んでしまう。表現者は表現している間だけ生きていられるものだから。
そして、全てを覆う白い雪の上に、白い○は完成する。
○はそこに何もないことではない。印を付けるべき何かが存在していたということだ。
今はもう確かめられない何かを前に、○をつけた人間の意思だけがそこに残り、涙を流す。

総合得点、○。
小林賢太郎ライブポツネン2006『○maru』_c0030037_012266.jpg

「うつろひ」とまるい月
Tracked from ペンギンはブログを見ない at 2006-03-22 00:18
タイトル : ポツネン「○maru」その2(2/1) それが何だか分か..
小林賢太郎へのダメ出しが難しいのは、「作るものが何に分類されるものかよく分からない。」という点にある。それが何だか分からないから、良し悪しの判定基準が分からないのだ。ダメ出しを繰り返しても、何か真芯をとらえていないという気がする。 彼が作る物がコントであるとするなら、「笑えるかどうか」だけが問題で、作品のテーマ性とかは関係ない。シティボーイズの舞台に「テーマが分からない」というダメ出しをするのは、ずれているということだ。 そしてコントとして判定すれば、コバケンの作品には大笑いはないし、笑うというよ...... more
Commented by ぶう at 2006-03-25 20:55 x
はじめまして。ぶうと申します。ラーメンズを検索していて貴方のブログにたどり着きました。「○maru」感想を読ませていただいて・・・泣きました。ラーメンズが大好きですが、どこが好きなのか、何故こんなに惹かれるのか分からずに自分自身の気持ちをずっと探していました。貴方の「彼には才能がなかったのだ。」に泣けました。私が小林賢太郎という人に惹かれたのはそこだったんだと思いました。難しいことは良く分からないので貴方の文章を飲み込むのに何度も読んでいます。その度に泣いています。「ダメ出し」に悲しいのか、嬉しいのか、切ないのか分からずに泣いています。もっと沢山貴方の文章が読みたいです。・・・長々と意味不明なことを失礼しました。ご迷惑でなければまたコメントさせてください。
Commented by k_penguin at 2006-03-25 22:19
ぶうさんありがとうございます。
ラーメンズ、KKPについては、「エンタ系」のカテゴリに入っています。
去年の8月あたりからはまりだして(意外と最近)、ダメ出しが徐々に難解になっていってます。

「○maru」については「彼には才能がなかったのだ。」と書いておいて、「で、才能って、何さ?」と思ったので、追加のダメ出しを書きました。このダメ出しについては、このブログで出した記事の約3倍量の文章が非公開のローカルな日記に書いてあります。
いやー、苦労したした。
文章が難しくなってしまっているのは気が付いているのですが、余り他人の内面に踏み込むようなことを書くのは失礼なので、わざと説明してないところもあります。
小林賢太郎は悲しい人だし、すごく誠実な人だと思います。誠実でなければ他人の心を揺さぶりませんもん。
嘘つきなのにねえ。

よろしければコメントまたどぞー。
Commented at 2007-09-18 17:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by k_penguin at 2007-09-18 20:14
非公開コメントさん、コメントありがとうございます。

「○maru」についての追加記事が
http://shiropenk.exblog.jp/3688164
http://shiropenk.exblog.jp/3688230

ライブポツネン全体についての総まとめが
http://shiropenk.exblog.jp/3923611
です。

他のライブについても、
トラックバックをたどっていけば
追加評論が見られるようになっています。

ただ、「丸の人」については記事中でネタバレしていますので、
がんばって最後まで見てから読んだ方がよいかと思います。
では今後もよろしくー。
Commented by 非公開コメント記載者 at 2007-09-18 21:59 x
こんにちは。早速のレスをありがとうございます。

おっと。上記アドレスにて既に全て公開済みだったのですね。
失礼をいたしました。そして、ありがとうございます。

はい、頑張ってみますー(笑)
by k_penguin | 2006-03-15 00:07 | エンタ系2(ライブレビュー) | Trackback(1) | Comments(5)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


by k_penguin