素人にダメ出し   

10日の朝日新聞に立川事件(自衛隊のイラク派遣に反対するビラを立川市の防衛庁官舎に配った行為が住居侵入に問われて逮捕・起訴)など、一連の政治的なビラまきと住居、建造物侵入罪での起訴に関する記事があって、まあ、それ自体はいいんだけど、この場合の違憲審査基準に簡単に「明白かつ現在の危険」を使うって、どーよ。
そりゃ、使っちゃいけないってゆう法律はないし、新聞記者には新聞記者の立場があるし、いーけどさ。

一応公平を期すために情報を付け足しておくね。
「明白かつ現在の危険」は、表現行為が重大な害悪を引き起こす蓋然性が明白であり、かつ、害悪発生が時間的に切迫しているという要件が欠けている場合には、表現行為の規制を違憲とするという基準。一言で言えば、むちゃくちゃ厳しい基準。
原語は”Clear and present danger”。トム・クランシーの「今そこにある危機」(ハリソン・フォード主演で映画化)の原題も実はこれ。
本来、扇動罪のような違法行為を扇動する言論活動の、内容についての直接規制の場合の基準。
検察幹部によれば、今回は内容に着目した規制ではなく、態様についてのものであるから、「明白かつ現在の危険」を使うのは不適当。少なくとも、態様規制ではなく、内容に着目した規制であるとの主張をしてからこの基準を使うべき。

さて、ダメ出し終わったから、ここから感想ね。
なかなか示唆に富む記事ではある。
検察幹部の言葉によれば、
「ビラだけ配っているうちはいいが、立ち入りを繰り返すと、「今度は何をするかわからない」という不安感がある。」
住居侵入罪の保護法益について新住居権説を前提としていると思うのだが、「不安感」で、処罰するのって、俺は好きくない。
それにこれって、行為の主観を重視しすぎてないか?
同じ行為でも「ビラ配りの意思であれば良いが、自衛官工作の意思じゃダメ。いやどんな工作か知らんけどさ。」という感じでは内心を処罰することになるのではないか。

しかし、その一方で、プライバシーや安全に対する一般の意識の変化、及び、インターネットの普及による、無視できない表現の自由のあり方の変化も感じる。
ビラまきというのは、いままでマスコミで情報発信できない人達による重要な表現手段、といわれてきた。
しかし、ネットにより、個人でも情報発信は可能となった。マスコミ並は無理だけど、ビラまき並ならできる。
そりゃ、サイト作っても、クリックしなけりゃ見られないから、玄関先まで行ってビラをまく、という方法もまだ意味はある。でも、意味合いは変わってきていると思う。

プライバシー、個人情報、そして著作権に対する今の保護の流れに対して俺は批判的なのだが(こういうものは、いろいろ難癖をつけ、無用な紛争を起こす原因となりやすい)、ともかく、時代の流れは流れだ。
利益衡量のあり方が変わっていくのかもしれない。
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by k_penguin | 2006-01-10 17:45 | 裁判(判決評) | Trackback(1) | Comments(4)

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Tracked from 元検弁護士のつぶやき at 2006-05-18 00:39
タイトル : 立川自衛隊官舎ビラ撒き事件について
共謀罪法案を考える前提として... more
Commented by うぐぅ at 2006-09-22 06:19 x
新住居権説では、住民の意思が重視されるわけで、ビラを拒否する看板の設置(表玄関、裏口の二ヶ所)、警察への通報(以上、管理人)、投函者への撤去要求と投函中止勧告(一部住人)これだけやっても足りないのなら、何処までやったらお帰り頂けるのでしょうか?住人が、明確に「やめろ」と言っても住居に立ち入って良いというのであれば、住居で住人の意思を無視して良くなりませんか?

一体、住居とは誰のための空間だったのだろうか・・・。
Commented by k_penguin at 2006-09-22 10:13
新住居権説自体を否定しているわけではありません。
住人全員の意思に反するのであれば、理論的に住居侵入は成立します。

私が批判しているのは、「ビラだけ配っているうちはいい」という一方で、住人の「不安感」を理由に住居侵入を認める態度です。
あくまでも(自衛隊のイラク派遣に反対する)ビラ配りはイヤ、という意思を保護の対象とするべきです。

うぐぅさんは、看板の設置や投函者への撤去要求、投函中止勧告等があることをもって、有効な住民側の拒絶の意思表示があったと考えているようですね。
私はこの事件については、新聞記事を読んだ程度で、経緯をあまり詳しく調べていません。

有効な住民側の拒絶の意思表示があったかどうかについては、それが住人全員の意思といえるかを葛飾事件判決の基準にあてはめて考えて見るのがいいんじゃないかと思いますが、
看板の記載内容や、撤去要求、投函中止勧告に対する投函者の対応の態様、一部の住民で行われたことが、住民総意のものと見なすことができる事情があるか、なども知った上で、有効かどうかの判断をしたいと思います。
Commented by うぐぅ at 2006-09-26 09:16 x
住民全員の意思とは随分と厳しい基準ですね。そもそも、住居侵入事例では法廷で住人全員の意思確認を行った上で犯罪認定が行われているのでしょうか? k_penguinさんの見解ですと、マンション侵入事例の大半が犯罪不成立になります。住居のプライバシー性は最低限しか保障されないことになります。
Commented by k_penguin at 2006-09-26 10:04
>住民全員の意思とは随分と厳しい基準ですね。
いや、この基準は葛飾事件判決の基準です。
理事会で採決されればそれが住民全員の意思になります。
いちいち法廷で全員の意思を確認する必要はありません。

>k_penguinさんの見解ですと、マンション侵入事例の大半が犯罪不成立になります。
マンションの共有部分への侵入と、個人の部屋への侵入を同視していませんか。
共有部分だけの侵入であれば、個人の部屋に入るよりも住居侵入は成立しにくくなって当然だと思います。

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