美少女の美術史

「美少女」って聞いただけで、どこからかすっ飛んできて、
「自分にとっての美少女は」で、徹夜で語る自信があります!と、聞かれもしないのに豪語するやつは多い。
タイトルに「美少女」というキーワードを入れるということは、そういう連中を相手にする覚悟があるということで、つまり、この展覧会が相応の強者によって相応の気合いが入れられて企画されているということだ。
だから、ネットでこの展覧会の告知を見ただけで、これは行きたい。と思った。
少女のイメージをめぐる110作家300点の展覧会というところにも気合いが端的に表れていて、いやそもそも「大量の美少女」なんて、それだけでご飯3杯いけるではありませんか。

ところが場所をチェックしたら、青森と静岡と島根とかで、
なんだよ東京でやんねーのかよチッ。がっかりだよ!
 と、言いすてておいての
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静岡県立美術館。
ああ、東海地方ですんで良かった。

東京から静岡まで新幹線で、それから東海道線の草薙で降りるのだけど、最初から観光気分なので、先に隣の清水まで行って、清水港市場で美味しいかき揚げどんぶりを食べてきた。
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既にゴキゲンになって美術館に入ると、巨大な風船少女がどーんといる。
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タカノ綾《精霊船にのって》

展示は、江戸時代から現代までの少女をめぐる文化、つまり、少女「が」楽しむ文化と、少女「を」楽しむ文化の両方の紹介を大体時代を追った形で紹介している。
普通、少女文化というと、「子供」というモラトリアムな時期が社会に定着する明治以降なのだが、江戸時代の浮世絵から始めるあたりも気合いが入っている。
少女が楽しむ文化の方は、昔のすごろく、着せ替え人形遊びから、少女マンガの付録まで、それも1970年代までだ。陸奥A子とか水森亜土とかいがらしゆみことか、と、名前を挙げれば、わかる方も多いかと思う。現代だったらアイカツとかも入るんだろう。松本かつぢのデザインが洗練されているのに驚いた。
少女を楽しむ方は日本画、洋画からフィギュア、アニメ、インスタレーションまで、枚挙にいとまが無い。過去の物は、少女のどのような点にポイントが置かれた作品なのか、を通して時代が感じられる。現代に近づくほど、少女性が少女それ自体と切り離され、イメージとなってそれ独自にテーマとされてゆくようになるのがわかる。《リボンの騎士》や《ひみつのアッコちゃん》は本来少女マンガであり、少女が楽しむ物に分類されるはずなのだが、初音ミク、ミンキーモモ、クリィミーマミなどと同じ部屋に分類されている。アニメ化されることで、両方の性質を持つようになったんだね。
フィギュアとなると、ふつーにAmazonで売ってるものがガラスケースの中に収まっているが、それでも芸術品としての隙が無いとこなんかはさすがだ。きっと十何年たてば、立派に美術品として通用すると思う。

ああっ女神さまっ ベルダンディー with ホーリーベル (1/10スケール PVC製塗装済み完成品)


劇場版マクロスF~イツワリノウタヒメ~ シェリル・ノーム (1/7スケール PVC製塗装済み完成品)

現代美術はカイカイキキ系の作品が多いんじゃないか、会田誠は入れた方が、とかちょっと思ったけど、最近の作品についてはいろいろ大人のジジョーもあるだろうし、「萌え」を正面からアートのテーマとして取り上げているとこと言えば、まあ、カイカイキキになるだろうし、まあいいや。

この展覧会のために作られた新作アニメ《女生徒》は良かった。
太宰の原作をアニメにしたものだけど、女学生のうつろう、ひねくれた気分をひらひらと綴りながら、年を取ってしまった自分から見ると、
ああ、こんなのあったよな~、とか、こういう気分は間違ってなかったんだな~、とか思ったりした。
横浜トリエンナーレ2014を見たときも思ったけど、
年を取ると、ちゃんと論理的に構成された意見とか、とりあえず大勢がいう意見とか、そういう「強い」意見をどうしても重視してしまって、移ろいやすい気分とか、ちゃんとした文章にならない言葉の断片とか、そういう物を無視してしまうようにいつの間にかなっていたけど、弱いもの、はかないものでも、間違ってないものって、あるんだな~。

そんな風にしみじみしながらエントランスに降りてみて、あらためてでっかい少女風船をながめると
でかいんだけど、頼りなげにふるふる震えていて、針でつついたら一瞬で大破するであろう風船と少女という存在、そして、少女というはかなくて弱い意識なのに、これだけでかいって、とても不思議だなって思った。


常設展示
画材という観点から西洋絵画を紹介したものが面白かった。
説明に気合いが感じられて、
企画で見せるぞっていう方針の美術館なんだな
って思った。
若冲の《樹花鳥獣図屏風》を所蔵しているんだけど、見られなかったのが残念だった。
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by k_penguin | 2014-10-05 23:32 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)
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法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


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