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「松井冬子展 -世界中の子と友達になれる-」

日曜朝10時。
寝不足だったが俺は少し無理をして横浜まで足をのばし、横浜美術館の開館時間にチケット売り場にやってきた。
列の後ろでは女性2人が
「作者本人のメディア露出多いよねー。作品売りたいのか本人売りたいのかわかんない。」「あんな美人なのに、描く画がねー。確実にファンにメンヘラ多いし。」等々と遠慮無く、俺の心情を代弁してくれていた。
松井冬子に関しては、俺の中で不完全な情報と噂話が先行していて、完全に俺はびびっていた。
作品にそれなりの興味は持っていたが、挙動不審な黒服ゴスロリな人達がいっぱい居たらどうしよう、とか思って東京の画廊での展覧会には行けなかった。
以前NHKでやった松井さんの特集で、(上野千鶴子と対談したもの。NHKからDVDが出てた。そつがないなNHK)松井さんが、内臓の描写が多いその画に不快感を示す男性が多いことについて、「ざまあみろと思う」と言ったのも一因だ。
こちらが見るかどうか決める前に向こうからお断り、と言われたのだ。そりゃ展覧会に行く気は失せる。
でも今回は作品をまとめてみる良い機会だ。「内臓」には最近縁があるし、直接作品を見て考えてみたい。
公立の大きな横浜美術館なら黒いゴスロリな人達も目立たないだろう。きっと大丈夫。

3月から公開される映像作品に合わせて行くことにしたのだが、わざと早めの時間帯に来たのは、
今日午後4時からの作者挨拶-サイン会の整理券が午後1時から配られるので、その前に退散するつもりだったからだ。だって黒いゴスロリな人達がいっぱいry

さて、チケットを手にした俺の周囲には、若い年代の客が比較的多かったが、特に黒いゴスロリな人は見あたらなかった。
事前知識は皆一通り持っているらしく、別に気味悪がるでもなし、大量のマウスが描かれた《短時間の強力な蘇生術を行うについてとくに必要とされるもの》の前で、「ほらチュー太郎よ、チュー太郎w」など、笑いあっている。
ただ、画の前での無駄話が他の展覧会より多い。何だかわざと軽い雰囲気にしようとしているよう。

さて当の作品なのだが、見づらいものが多い。
ぼやっとしているようでよく見ると細い髪の毛の塊、というような作品も多いのでどうしても作品に顔を近づけることになるのだが、ガラスに阻まれる。額装のものは良いのだが、掛け軸タイプのものが辛い。
絹本という繊細な作品なので作品保護の必要が高いのは分かるのだが、読書の時だけ眼鏡を使う老眼の俺は遠近で物の見方が違う。そんな俺にはまことに中途半端な距離に作品がおかれているのだ。
また、見えたとしても何が描かれているのかわからなくて、結局そばの作者自身による解説を読んで初めて分かったりする。
この解説文なのだが、これが作品理解の助けになる。
絵だけですべてが分かることがベストなのだろうが、複雑な上に、作者個人的なシンボルが多用されているので難解なのだ。
もうてっとり早く文章で説明できるとこは説明してしまえ、という姿勢は潔い。

《夜盲症》は良い。
遠くから見た印象と近くで見た印象にぶれがなく、抽象的な「ぼやっ」と精密な「ぎっちり」のバランスが気持ちいい。

見終わって、自分の心的な傷を客観的に把握しようと務めるプロとしての姿勢はすごい、と思った。
割と普通に良いじゃん、と思った。

すべて見終わってロビーに降りたのは1時15分前。
整理券待ちらしい人たちがあちこちにいたが、別に黒いゴスロリな人達ではなかった。
なんだ。これなら午後1時前に来て整理券をもらい、それから観覧してカタログに松井さんのサインをもらい、それを家の鴻池朋子のサイン本の隣に並べてみてもよかったのにな。
と、いうわけで、割と普通(良い意味で)な展覧会でした。



痛みが美に変わる時~画家・松井冬子の世界~ [DVD]


ショップには松井冬子Tシャツや松井冬子一筆箋が!
《夜盲症》のクリアフォルダがないのが残念だったなー。
「松井冬子展 -世界中の子と友達になれる-」_c0030037_23465514.jpg

by k_penguin | 2012-03-06 00:10 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)

法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


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