『THE SPOT』-『うるう』 話の話

小林賢太郎の作品にテーマはない。
「ない」と小林さん自身が作品中で言っているのだから確かなんだろう。
『THE SPOT』も『うるう』も、夢の話を聞かされているようで、
話している当人は盛り上がってるんだけど、聞かされている方はわけわかんない。
という感じ。
夢を見た本人からすれば、さっき見たTVの情報が混じってるなあ、とか、出てきたこれはあの人のことなんだろうなあ、とか、自分にはこういう願望があるんだ、げ、生々しい!とか、何かがわかるんだろうけど、
聞かされている者にとってはさっぱりだ。

その意味で、彼の作品にテーマはないが、「気づいて欲しいこと」はあるといえる。
テーマの様に声高ではないが、夢がささやきかけるようにそれは囁く。
生々しい欲も含まれているそれはまさに「内臓」といえる。
内臓を内臓のまま出してしまうと、余りの生々しさにドン引きくらうので、
「キャベツにトマトを仕込んでおいてから、それを切って、げ!キャベツに内臓が!って。 キャベツに内臓なんか無いのに」
囁く心には気づいて欲しいが、生々しい欲だとは思って欲しくない、ビミョーな乙女心、いやバニー心。

だから、彼の作品を見るときは、他人の夢をのぞき見している、と思うとわかりやすい。
ストーリーの首尾一貫とか世界観の設定の厳密さとかは余り重視されない。
むしろ考えないで感じた方が早かったりする。
"Don't think.Feeeel!"と言うわけだ。
そういう点では詩に似ている。
これが小林さんの作品の基本的構造だ。





それにしても、最近の小林さんの「夢」には面白味がなかった。
さして強い感情が含まれているわけでもなかった。
そのときどきのうつろう心がうつろうままにファジーに描写されていたのだが、
基本的に俺、他人が日々何思ってるかとかどーでもいーしね。

大体「うつろう心」といえば聞こえは良いが、
それはいわば「テーマを持つことができない僕の自分探し」のわけで、それはもう霧の中をただうろうろしているだけのようなものだ。
答えは見つからず、ただ焦りと悲しみ、自暴自棄な投げやりな態度、自己嫌悪、そういう、落ち着きどころをなくした生の感情が日々去来するだけ。

小林さんがそうなってしまうのは、マターリヲチャの俺に言わせれば仕方がないことで、
それは、彼に責任の概念が欠けているからである(これについては以前述べた)。
無責任なのではなく、何らかの事情で「責任」という概念を心が受け付けないらしいのだが、
それではいわば部品が1つ欠けた機械で測量しながら進んでいるようなもので、いくら進んでも霧の中から出られなくて当たり前なのだ。

考えてみて欲しい。
「責任」の概念がない以上、1度失敗すると「責任をとることでチャラにする」という解決が取れない。
「媚びへつらって許してもらう」か「相手の上位に立ってねじ伏せる」か「何も無かったことにする」か、そのいずれかをとらなくてはならない。
(彼の作品のすべてがこれらの3つのどれかを解決方法として選択している)
そして、この3つのどれをとっても、完全な解決にはならず、一生失敗をひきずらなくてはならない。

生きれば生きるほど解決不能の引きずる重荷は増えるばかり。
それを「無かったことにする」ために、小林さんはまた新しい物語を作らなくてはならない。
夢が心を映し出す鏡なら、夢を自分でコントロールすることで、心を変えることが出来るはずだから。
「うるうびと」『KKTV3』『うるう』には、このような作品の新しい役割が感じとれる。

しかし、鏡に細工をしても実体は変えられない。それは無理のしすぎ。


小林さんは別に助けて欲しいわけではない。
「苦労している僕」に気がついて欲しいがそれは助けて欲しいからではない。
「苦労している僕」に気がついてもらって、元気を得て、また苦労したいだけだ。
いやまさに「御苦労なことで」としか言いようがない。

やり方が悪いことはもちろん知っているのだろう。
内臓があるキャベツとかマヨネーズに見せかけた蟹(これはKKTVのソフトより)とかに自分の苦労を喩えているのだから。
でもやり方を正す気がないのだ。何でだか知らんけど。
その姿は見方によっては命をかけた表現行為だし、見方によっては自殺行為。

ま、とにかく俺が知りたいのはそんなことじゃない。
彼が何を頑張ろうと、なに考えていようとどうでもよい。結婚だろうと離婚だろうと再婚だろうと、勝手にすればいい。
俺が知りたいのは、やり方を変えない理由、つまり「責任」の概念が消えたその場所。ひみつぼの中味。それだけ。
それこそが問題の中枢だ。

…後はほんとにどうでも良いんだよ~…。
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by k_penguin | 2012-02-11 22:34 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)
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法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


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