あさのあつこで小林さんを読む

あさのあつこのことは『バッテリー』とか書いた作家ってことくらいしか知らない。
だからあさのあつこが書いた朝日新聞11月14日夕刊「こころ」のページのコラム「生きるレッスン」の文章に目がとまったのは、ひとえにその冒頭の文に目が引かれたからだ。
 一人でいるのがとても辛(つら)いくせに、他人が疎ましくてならない。

おやおや『うるう』のキャッチコピーとそっくりではないか。その続きは?
そんな時期が、わりに長くつづいた。十代の後半から、二十代にかけての頃だったと思う(今でも、 ちょっと残っています)

俺はそのコラムを読んだ。それから記事を切り抜いてその後2週間のうちに何度か目を通した。
何故、「十代の後半から、二十代にかけて」言うことを、もう40になろうというおっさんがぬけぬけと言っているのか。何故ぬけぬけと言わざるをえないのか。
俺はそれが知りたかったのだ。

「孤独を楽しむ」と題されたこのコラムは「こころ」のページとして優等生的なコラムだった。
「一人でいるのがとても辛いくせに、他人が疎ましくてならない」自分を
「覚悟がなかったのだなと、思う。」と、すっぱり斬っている。
そう、たしかに小林さんの作品に出てくる人たちには覚悟がない。『TAKE OFF』の3人も、『TRIUMPH』の夏歩香も、『ロールシャッハ』の4人も、みな覚悟がなく、ただ好き嫌いと話の成り行きにそって生きている。
『THE SPOT』うるう人が失恋したのも、一人で恋愛気分に浸っている間に相手の方が、生き方の覚悟を決めてしまったからに過ぎない。

では、「覚悟」はどのようにして身に付くものなのか。
それについてのコラムの答えは意外なことに、
孤独を楽しむこと、だった。
「人と群れているとき、曖昧にしてしまう自分という存在」を、孤独のなかで自分と向かい合い自分自身を明確にとらえることで、「誰かと本気で繋がっていける。」。

これは一見妙だった。
あの小林さんに自分と向き合う時間が足りないとは思えなかったから。
しかしまた納得する部分もあった。
彼の作品は、確かに掘り下げが足りないのだ。
最初から「余る」ように運命づけられているという「うるう人」の設定にせよ、さしたる理由ぬきで「向いてないんですよ」で処理される「丸の人」にせよ、主人公はそういう存在だから、という当然のような決めつけでそれ以上の掘り下げがなされていない。
そして小林さんの文にはときどき主語が混乱したり主語が行方不明になる、という癖がある。たしかに彼は他人にものを主張できるほどには自分を把握していないのだ。

「臆病であったり、狡猾であったり、卑小であったり、決して美しいばかりではない。でも、自分だ。」
あさのあつこはそう書き、
「孤独であること、一人であること、一人でいることから目を背けないで欲しい。」
と、書いている。
まことにごもっともその通り、とは思うのだが。
しかし。
目を背けないことが難しい特別な事情がある場合もある、かもしれない。
そんなことを俺は思った。


臆病、狡猾、卑小。そのレベルならまだいい。でも、もっと恐ろしいものが潜んでいたら。
もっと見たくないもの、認めたくない恐ろしいものを自分の中に感じてしまったら。
それでもなお孤独を楽しめと言えるだろうか。
俺がこのコラムを優等生的と評する由縁だ。
世の中にはいろんな人がいるのだ。

・・・とは言っても客からすれば、
もっと掘ってもらいたい、というのも正直なところだし。
やはり小林さんにはもう少し頑張って方法を探してもらいたい、
と、客として無責任に思う俺なのだった。

それに、もしかしたら、
見たくないがゆえに勝手に恐ろしいと思いこんでしまっている面もあるかも知れないしね。

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by k_penguin | 2011-12-01 00:01 | エンタ系 | Trackback | Comments(13)  

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Commented by 清宮 at 2011-12-01 12:17 x
こんにちは。賢太郎さんを検索したら、このブログを見つけたので、少しだけ読ませていただきました^^
とっても分かりやすく興味深い文章で、とても面白かったです。
私は、今回のうるうのキャッチコピーは、賢太郎さんにぴったりだなぁとおもいました。
私の願望も入っているのですが、やっぱり賢太郎さんには、自分よりも自分を分かってくれる人が必要なんじゃないかな、と思いました。
それが片桐仁さんだともっといいなと思ったり。
うるうのチケットを取り損ねた私ですが、賢太郎さんという人を考えるときに、またこのブログを覗かせていただきたいと思います^^
Commented by k_penguin at 2011-12-01 18:44
清宮さん初めまして。
記事を楽しんでいただけたようで、嬉しいです。
うるうのキャッチコピーは、今の小林さん的ですね。
小林さんは『THE SPOT』の公演中「うるう人」のラストで泣いたり泣かなかったりして
どちらにするか最後まで決めかねていたようですので、
そのあたりからの着想かなあ、と、思います。

小林さん関係の記事は小林さんタグにまとめてあります。
片桐さんとの関係についてのものもありますので、
よろしければどうぞ。
コメント欄での多くの方のご意見も面白いです。
Commented by k_penguin at 2011-12-16 21:06
「大人のための児童文学」と言われると
『TRIUMPH』を「ファンタジー」と銘打ってたのを思い出すw
Commented by k_penguin at 2011-12-21 21:14
うるう見てきました。
えーと、残念ですが、良かったです。
深読み的には。

風邪引いてて熱があるので、記事は後になりますが、
とにかく、相方の話じゃなかったのが
嬉しかったです。

ただ、深読みしない場合、
うるうと少年が何故「友達」になれないのか
納得いけるかな?という気もします。
Commented by ぽんたろう at 2011-12-21 21:19 x
観てきました。
初日は初日で面白いものだなーと思いました。
k_penguinさんの感想(ツッコミ)を早く読みたいです(笑)

Commented by ぽんたろう at 2011-12-21 22:20 x
>うるうと少年が何故「友達」になれないのか

私もそこは腑に落ちませんでした。

でも、一人芝居とはいえ、少年を自分から抱き寄せたことはよかったです。


風邪、お大事にしてください。
Commented by k_penguin at 2011-12-21 22:20
ワタシはワタシで、
これ、一般的にどう受け止められるの?
と、とまどってます。

ラスト、あれで納得しますか?
Commented by ぽんたろう at 2011-12-21 22:32 x
これで終わりなの?感はありましたw
カウントを見逃すと、さらに納得できないのでは、と。
2・3階席の人はちゃんと見えたのかしら?
Commented by k_penguin at 2011-12-21 22:39
あー、やっぱ、そうですよねえ。
年だって、外見の年が同じになっただけだもんねえ。
少年と彼との、特別な繋がりが見えないと
やっぱ説得力無いですよね・・・。

ぽんたろうさんありがとうございます
記事書く参考になります。
Commented by tomoco at 2011-12-21 23:50 x
こんばんは。お久しぶりです。
私も初日観劇して参りましたー!

いつも絵面から入る私は、
セットと小道具と色調が今回も素晴らしくて
良かったわ〜というのが一番の感想でした。
ますます手に取ってじっくり観たい小道具たち!

ラストシーン、ぎりっぎりを狙って
ちゃんと伝わる方向に転んでいるように感じました。
今回は「え?どーゆーこと?」とまではならないんじゃないかな。
アンケートには「少年が森に通い詰めた本当の理由は何ですか?」と書いてきました。質問してもしょうがないんですけど・・・。そこが分からないと・・・。
Commented by k_penguin at 2011-12-22 00:36
tomocoさんこんばんは。
(うう・・・寝なきゃいけないのに眠れない・・・)

>少年が森に通い詰めた本当の理由
 確かに、そこ薄いですよね。少年の心理描写はほとんどない。
まあ、好きだからなんだろうけど、なんだか当然のように気楽に通ってきます。
どのような性質の「好き」なのかが見えない。
そしてうるうの方も問いつめたりしない。

やっぱり記事でその辺のこと深読みしようと思います。
伏せてるフリップを1枚表にすることになるけど
まあ、あくまで「深読み」ですから・・・
Commented by tomoco at 2011-12-22 00:57 x
深読み記事、楽しみにしています!

あの歌が頭の中でループしていることと思いますが
お身体に障りますから、お休みになって下さいね。
私は明日絶対仕事中に口ずさんじゃうだろうなぁ。
Commented by k_penguin at 2011-12-22 22:32
ありがとうございます。
>あの歌
 いや、なぜだかわからないけど、一晩中うなされるみたいに頭の中を駆けめぐっていたのは
ハートキャッチプリキュアのEDテーマでした。

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