『THE SPOT』その4 東京延期千秋楽

『THE SPOT』その2 王様編、うるう人編
『THE SPOT』その3 医者編 縦のものを横にする

『THE SPOT』を前に観たのはもう5ヶ月以上前で、これまでの記事はそのとき観たものに基づいて書いた。
今回は、気がついた変更点を中心に書く。

全体的にすっきりしていて、流れが良く観やすかった。
観ていて引っかかるノイズな情報が格段に減っている。おかげでようやく、作品全体のイメージがつかめたような気がする。
この作品は、個々の話をレイヤーを重ねるように重ねて、すべてを透かして観るものだ。
という気がした(その意味で象のシルエットはこの作品それ自体の構造を表す)。

ただ、「深読み」的にやりがいがあるのは、
ひっかかるところが多くツッコミどころが多い方以前のものの方だが。

王様編

なぜ象が欲しいのかについて、象は「かっけえ」から良い。とは言っているが、「友達になれそうだから」という理由がメインになっている。
そして、友達のしるしにリンゴをあげたい、という。
後半、物産展のガジェットを並べ、ポツネン氏にライトアップしてもらった後、
王様は、せっかくの物産展でも、見に来る国民が私1人しかいない。とがっかりするところ、ポツネン氏、
「王様、1番大きなお土産を忘れてますよ、あなたが1番欲しい物」
そして象のシルエットライトアップ。
王様、象のシルエットにリンゴをあげる(=友達ができる)。

王様の孤独が強調されたので、象には社会的な成功という意味合いはほとんど無くなり友人という意味が強くなっている。

ただ最大の矛盾点、「見る物は当てには出来ない」はずなのに
象は「遠くのピラミッドと近くの生八つ橋」と同じ原理で出来ている虚像である。
というのは変わらない。
「友人」というキーワードを重ねると、うるう人の「土でできた親友」と同じものとであると思われる。


うるう人編

土で作った家族と親友。親友の方は崩れるのだが、家族の方が崩れたのかそうでないのかが今まで分からなかった。
今回は家族も親友に次いで崩れたのがはっきり分かった。
(今までよくわからなかったのは、上手の方を向いた状態で家族と親友を横に並べて作っていたからなんだけど、今回は、家族は客席側に、親友は上手側にと方向を変えて作ったので、マイムのみで両方が崩れたと分かった)

ラスト眠るときは泣いてない。



「象」と「土でできた親友」が同じものだって、割とあっさり書いたけど、
それで良いのか?って思われるかも知れないけど、
そう考えるのが1番ぴったりはまるのだ。
1坪王国は1坪の土地に掘られた深い穴の底にある、と考えると、いろいろイメージがぴったりくる。
王様は旅行する。でも行く国は決して「日本」ではない。
なぜなら穴から出られない以上本当の旅行も出来ないからだ。彼がした旅行は「部屋から出ない世界旅行」(KKTV2)である。
その旅行は『THE SPOT』の他の演目を指しているらしいが、それらは1坪王国の国技「男子自由形」のようである。
つまり、「部屋から出ないで旅行」という「男子自由形」をやったのだ。
結局部屋(穴?)から出ていないんだから、「体験したもの」は収集できない。自分の内側から自分が「見る物」しか収集できない。
それからできる「象」は当然、虚像にしかならない。

オープニングの井戸とけん玉の話からすれば、
象の構成アイテムである井戸とけん玉をうまく使えば穴から出られるらしいし、将来的に穴から出たいという気も一応あるようだが、
使い方がよく分からないため(と、ゴムパッキンの不具合のせいで)今んとこそれは「象」をやっている。

そんなかんじ?


医者編

あまり変わってないから前の記事で良いんじゃないかなと思う。

俺的には
なぜ自販機に硬貨を入れようと思ったのか、その動機がはっきりしないあたりが気になる。
そもそも自販機に硬貨を入れたことから、逃げ出す羽目になり、雪の中灯台のてっぺんから滑り落ちる羽目になったのだ。この諸悪の根源の動機は重要だ。
彼は当たり前みたいに硬貨を自販機に入れるのだが、それは
ジュースが欲しかったのか、それとも
拾った物がお金なのかどうか確かめようと思ったのか
その辺がはっきりしない。

今回は、自販機からおつりが際限なく出てくるとき、人が集まってきたらしく、
周囲の人に誤魔化すようなへつらうような謝るような仕草をしていた(前回観たときはそれはなかった)。
彼は何を誤魔化したいのか。
他人の目を気にしてるけど、出てくるお釣りはポケットにつっこんでいる。
どうも、自販機を壊してしまったことを気にしている、という感じではないのだが・・・。

深読みをしている側から言わせてもらえば、

・・・どうも君、途中で話をすり替えてない?


でも、違う話が混ざって「馴染んで」しまったとしても、
それは仕方がないのだ。
赤い壷の中のことだから。
秘密の重さに耐えられないのは、秘密を抱えている本人その人なのだから。

まあ、絶対受けるコントの書き方、とか、人気漫画の最終回とか、
俺にとって価値はないんだけどさ。


あ、そうそう、
グレーの紗幕の向こう側は、今回の座席位置からはあまり見えなくて、ときどき誰かが歩いている気配がする程度にしか感じなかった。
その程度で良い、という意図だったんだなって思った。
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by k_penguin | 2011-08-16 00:24 | エンタ系 | Trackback | Comments(13)
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Commented by K☆SAKABE at 2011-08-16 14:07 x
penguinさん、お疲れ様です。

そうでしたか。
シンプルにねぇ。
私はてっきり、時間かけて考えすぎてつまんない考え落ちになってやしないかと心配していたのですが・・・

記事を拝見した限りでは、前回(私の場合昨年ですが)よりも、より穴ッポコ感が強調されてるようですね。
SPOT(焦点)がより絞り込まれたというか。
これまで以上に「ポツネンとした」感じでしょうか。
作者の意図した孤独とか孤立感が伝わったと理解するべき・・・?

それと「うるう人」、「後藤(ゴドー)を待ちながら」とリンクさせて深読み(座興程度にね)するとちょっと面白そうなんですが・・・
Commented by k_penguin at 2011-08-16 15:49
穴ッポコ感が強調されたというより、穴ッポコ以外の要素が削除された、という感じです。
シナリオ(言葉)というより、動き主体で、
とにかく動きがきれいなので、それに見入ってるうちにするっと全部見れてしまうから、何となく全部受け入れてしまう。
そんな感じ。

SPOTシリーズに関しては、穴から出ることがメインテーマだと思っていたので、
あんまり穴ッポコを強調しすぎる解釈は避けていたのですが、ここに至って
「もう出る見込みなしってことでファイナルアンサー」としました。
(出る気はあるんだけどね。一応)
小林さん的には、穴から出るとか出ないとかいうことよりも
自分の現状を自分で表現することで自分に納得させることが重要なんだと思うので、
きれいに公演がまとまった、というだけでオケなはずです。
(深読み的には削除してしまった部分をなぜ削除したのかも気になるところですが、・・・まあ、寂しい寂しい言うとったからそれ中心にしたんだろ。ってことで)

うるう人vs後藤
 お、SAKABEさん何かあるんですか?
なんかあるなら聞かせてください。
ワタシとしては、うるう人の方が孤独が抽象的だと思います。
Commented by K☆SAKABE at 2011-08-16 23:40 x
>うるう人の方が孤独が抽象的
そこなんですよ。
だから妄想が無限に膨らむんですよ。
結局妄想なんですけどね。

人形にまぎれて気づかれなかった後藤は、人形となじんでいた・・・
なんて風にね。
でも待ってるのは後藤じゃないし、うるう人も「待つ」というニュアンスではない。
じゃあ「受け入れる」なら・・・

ここんとこの暑さで今一つ頭が働かないんですが、考え始めるとちょっと面白い。
Commented by k_penguin at 2011-08-17 00:04
あ、後藤の方を膨らますんですか。岡田や長谷川じゃなくて。
後藤に関して膨らます人、割と多いなあ。
ワタシは、人形愛があるだけの普通の人だと思うんですが。

うるう人と後藤をいうなら、(土)人形つながり。ってことですか?
人形が後藤なりうるう人なりを受け入れるんですか?
それとも主体と客体は逆ですか?
Commented by tomoco at 2011-08-19 01:38 x
あちこちにコメント失礼します。

実はお仕事に絡めて仙台公演も観て参りました。
キャラクターひとつひとつを大事に愛しそうに演じられていて
とても良い千秋楽でした。
penguinさんが書かれた「この作品は、個々の話をレイヤーを重ねるように重ねて、すべてを透かして観るものだ。」
に、とっても納得です。
すべてが一坪の穴の中でのお話というのも。

ところでポツネンさんと王様の関係って?
ポツネンさんは王様よりも外側から全部を見ていますよね。
でも始まりの井戸とけん玉であたふたするのはポツネンさんだから・・・
ポツネンさんも穴の中にいるということかしら。
穴から出る方法を知っている、
もしくはもう少しで分かりそうなのに
王様の虚像の象をつくるほうに手を貸すのですよね。
ポツネンさん、まだ穴から出たくないのかぁ。
Commented by tomoco at 2011-08-19 01:58 x
仙台千秋楽のカーテンコールでは
象に王冠をかぶせて、鼻先にキスまでしていました。
鼻先といってもシルエットのほうではなく
井戸のポンプのハンドル部分に。
美しいシーンですっかり感動してしまいました。
でもでも、
長く一緒に旅をしてきた共演者の象をねぎらって
キスをしたのは小林さんです。
もうカーテンコールに入っていますから。
虚像の象を最後まで象として扱っていたところをみると
やはり小林さんもまだ穴から出たくないのですね
と思ってしまいます。
小道具に愛着以上の愛情をもって接する気持ちから
出たものだとも思いますが。
私はその姿勢が好きなので、感動してしまったわけです。
Commented by k_penguin at 2011-08-19 21:44
>ポツネンさんと王様の関係
 よくわからないですね。
象構成アイテムについての王様の言葉とポツネン氏の言葉を比較すれば、何か分かるかと思い考えてみましたが、
やっぱりわかりませんでした。
ポツネン氏は客目線ですね。
それからすれば、王様とポツネン氏はコンビ「穴の底」のボケとツッコミ、といったところでしょうかね。
ツッコミはボケよりも客寄りの存在だけど、ボケに手を貸すのが仕事ですから。

>ポツネンさん、まだ穴から出たくないのかぁ。
 作品に全体的に安定した印象があることから、
外に出たくない、外が怖い。というよりも
居心地が良いからもう少しここでぬくぬく休みたい。
という気持ちだと感じました。
…今が震災の後でなければ、小1時間説教するとこなんですが…。


>象に王冠をかぶせて、鼻先にキス

 おお!完璧じゃないっすか!
シルエットの象にシルエットの小林さんがキスしたわけでしょ。
小林さんのシルエットは、うるう人ですから、
うるう人が象にキスするの画ですよ。
穴の底に新しい友達が登場したわけです。

tomocoさん、良い情報をありがとうございます。
Commented by tomoco at 2011-08-20 00:02 x
そっかーーー!!
>うるう人が象にキスするの画
>穴の底に新しい友達が登場
penguinさん、ありがとうございます。
いつもぼやっとした感想を置いていくばかりの私に
的確な答えを与えてくださって感謝しています。

この結論って、小林さんが意図した物語の結末
と考えていいのでしょうか。
シルエットの象にシルエットの小林さんがキスというシーンは
THE SPOTの台本にはないものだから・・・
半歩ぐらい先の展開を目撃してしまったのかしら。
あ、でも一番欲しがっていた象を手に入れて
リンゴを渡す(=友達になる)のが台本にあるラストシーンだから
キスもその表現の繰り返しと考えればいいのですね。
Commented by tomoco at 2011-08-20 00:05 x
新しい友達。
ちょっと気になります。
現実世界の誰なの?という意味の興味ではありませんが。

あの象、すごく愛されてるなぁと感じていたので。
カーテンコールでは象への拍手も求めていたし
象もアンケート楽しみって言ってますといって会話してみたり、
仙台では最後に「僕は象を連れて東京に帰ります」とも。

お気に入りを集めて作った象。
それぞれのガジェットの本来の姿は放っておいて
自分の好きなように組み合わせて作り出した、完璧な友達。
あらま。。。
以前こちらに、人間関係において相手のパーソナリティを云々、
というような内容のお話があったのを思い出しました。
相手が自分とは違う、人間の友達だったら
あんなにスマートにキスなんてできないんだろうなぁ。
Commented by k_penguin at 2011-08-20 01:34
>この結論って、小林さんが意図した物語の結末

小林さんの「意図」というより、
あの舞台は小林さんの精神世界そのものですから、
小林さんがそこで自然に振る舞えば自然と物語になるように出来ているのだと思います。

うるう人=王様、と考えてはじめて
キスはリンゴを渡すのと同じ意味になるわけですが、
同時にうるう人は穴の底で新しい友達をこしらえた、という、
うるう人の話の続きになりますね。
(SPOTではうるう人は象も作ってたし)

象が何なのかは、今んとこよく分かりませんが、
「何か」ではあると思います。
ま、パーツは全部「自分」だから、自分に関する何かだとは思いますが。
Commented at 2011-10-12 00:11 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by k_penguin at 2011-10-12 00:23
非公開コメントさん、どうもです。
KKPの新作「うるう」について触れてなかったのは、単に公式HP見てなかったからです(^-^;
何で今日はうるう人で検索かける人が多いんだ?とか思ってました。

「うるう」って、なんかタイトルからしてまた暗そうな話だなあ。
やれやれ。また笑えない話かあ。
でもきっと、美しく作りますよ。
やれやれ。
Commented by k_penguin at 2011-10-13 01:27
「うるう」のキャッチコピーをやっと今日見ました(多分ブラウザがキャッシュ使って表示してるんだと思う)。
寒いぼ出ました。
自分大好き感が・・・(;´Д`)

3年前から作りはじめていた、という点にちょっと興味を持ちまして2008年を調べてみたら、
TAKEOFF2007が終わった後、DROP、TRIUMPHと、まるっきり見失っている頃で、
 この頃「うるうった」のではないか、
などとワタシは考えます。
(一応フリップ伏せた言い方しますが)