「名和晃平―シンセシス」「フレデリック・バック展」

東京都現代美術館(Mot)2本立て。
Motは毎年この時期にジブリ関係の展覧会をやって客を集めるのだが、今年は「コクリコ坂から」ではなく、ジブリからソフトを出す「木を植えた男」のフレデリック・バック展だ。
「木を植えた男」は原作もアニメも有名な作品だが、コクリコ坂よりは一般の知名度は低く、夏休みのかき入れ時にふさわしいのかな?とちょっと思うのだが、
しかしまあ、俺的にはどうでも良かった。
俺のメインは名和晃平の方で、フレデリック・バックはついでに過ぎなかったからだ。

名和晃平は日曜美術館で、細胞分裂したような鹿を見て興味を持った。
いがらしみきおのホラーっぽい短編に「みんなサイボー」っていうのがあって、
人間は細胞で出来ているって習った小学生カズキくんは、周囲の大人達がだんだん細胞の塊に見えてきて、その人が考えてることも、本当はその人自身じゃなくて、細胞が考えているのかも知れない、とか考えはじめて・・・って話なんだけど、
細胞の塊としてのニンゲンの画が、細胞というよりおにぎりみたいな感じで、どーもイマイチ「細胞に支配されてるニンゲン感」がなくて、話は良いだけに残念つーか、もったいないなあ、と思ったことがあった(いがらしの画は愚直すぎるところがある)。
で、名和晃平のPixCellシリーズを見て、
 あ、これじゃん。このイメージに置き換えて読めばいいんじゃん。
とか思って、で、見に行ってみたのだった。

実体と映像の境界あたりとか、無機物と有機物の境界あたりとか、なんか、そーゆー揺れをきれいにそつなく見せる作品が多かった。
なんか、そつがなさすぎる気すらして、その辺小谷元彦に似てるところがある。
いがらしの作品では、細胞はニンゲンとは別個独自の考える存在で有機的なものだけど、ここでは無機的なイメージ。
サイボーもこもこの鹿とか、カビが生えた仏像とか、本来だったら気持ち悪くて生理的に目を背けてしまうような物を、素材をうまく使って口当たりよく仕上げてる。
毛皮を使ったPixCellのexeシリーズなんか、溶けかかってる動物みたいできもかったけど、きれいなガラスのビーズに覆われてる細部を見れば「きれー」で済むし。
それと同時に何かごまかされてる様な気もするのは、俺がいがらしの細胞のイメージを持ったままこの展覧会を見たせいかなあ?

最後の「LIQUID」は面白かった。シリコンオイルを発光させた液体から絶え間なく泡が湧き出ている作品。
無機的な外観なのに、ぽこぽこふつふつプツプツごにょごにょと、ずーっと囁くような音が聞こえてまるで発酵してるよう。
もやしもんみたいで、かわいかった。



次はフレデリック・バック展。
入り口でコクリコ坂の色紙プレゼントをしていたが、ことわる。

最初の部屋でいきなりメインの「木を植えた男」の映像展示。しかもほぼ全部上映。
1人で木を植えて歩いて、荒れ地を緑の森に変えた羊飼いの男の話(実話に基づく)で、さぞや苦労に苦労を重ねた重い話かと思いきや、
10万個ドングリ埋めて樹になるのは1万本だ、と言ってはいるけど、割とさくさくわさわさ木が生えるイメージ。
別にただドングリ埋めただけじゃなくって、苗床作ったり、土地にあわせた樹木を選んだり、長い時間かけた試行錯誤を繰り返したはずだと思うけど、あまりその辺の描写は無くって、いいとこどりみたいなのがなあ・・・。
画や技術はすばらしいと思うけど。

「木を植えた男」を見てしまったので、後はざっと流し見。展示物は多くて流し見でも大変なほど。
フレデリック・バックは1924年生まれなので、今まで書いた画の量はものすごいのだ。
世界のあちこちの少数民族の暮らしを紹介する作品も多く、「自然と寄り添う暮らし」が好きで、一貫して反物質主義、エコ賞賛。ちなみに白イルカ(ベルーガ)の乱獲を告発する作品もあるぞ。

・・・いや、いーんだけどさ。エコ。
でも、今や日本では、現実の選択として、原発とかどうしようって話になってるわけじゃん。
そこで、ただきれいな自然見せて、「ほら、こんなきれいな自然を守らなきゃ」って言われても、もうすでに日本じゃ放射能漏れてるしね。
感情に訴える表現としては優れてるけど、現実的解決を図る意識としては現実認識が古い、という気がする。


会場から出たロビーに、ヤノベケンジの「ロッキング・マンモス」があった。
車の部品や甲冑などで作られた巨大マンモスは、フレデリック・バックのアニメで工業化とか物質主義とかの象徴として描かれそうな姿だったが、
その背中にはゆりかごがついていて、赤ちゃんをあやすモビールもついているのだった。

・・・御年87歳のフレデリック・バックとちがって、俺たち既に、こーゆーもんと一緒に育ってきてるもんなあ・・・。

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いがらしみきおモダンホラー傑作集ガンジョリ (ビッグコミックススペシャル)(「みんなサイボー」収録)



I【アイ】 第1集 (IKKI COMIX)(いがらしの新作。面白かったので、ついで)
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by k_penguin | 2011-07-27 00:39 | エンタ系 | Trackback | Comments(0)
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法律事務所勤務。現代アート、NHK教育幼児番組、お笑いが好きな50代。


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