Piper 『THE LEFT STUFF』

『ひーはー』『ペントラーペントラーペントラー』と似たパターンの舞台が続いたPiperの今回は、「かつてない観客参加型コメディ」だそうだ。
参加型と言っても、たいしたものではないだろうと高をくくっていたら、出演者の相武紗季がTVで、ストーリー展開をどうするかを客の多数決で決めたりするのだと言っていて、かなり本格的な感じなので驚いた。

本多劇場の白衣を着たスタッフが説明するところによると(大王の芝居はロビーからもう作品世界に入っている)、NEOという組織の行う「実験」に観客は参加してもらうのだそうで、実験を承諾する観客は舞台の上に置かれたボードに署名をするのだそうだ。
実験内容を知らされていないのに承諾も何もないが、本多劇場の舞台に立つ機会はそう無いのであがらせてもらって署名した。

署名すると参加気分が盛り上がる。何が起こるんだろう?
やがて出てきた司会進行役の大王によると、これから登場する7人のうちから、未知の海底資源を調査するための調査員を1人選ぶそうで、そのための「実験」を客の協力の下で行うのだそうだ。
その調査員とやらにどのような能力が必要とされるのか、全く説明がされていないのが「?」だったが、始まってみれば何のことはない。
実験の名目で7人をいじり倒すだけの話なのだ。

実験内容の一部を客からのお題で決めたり(当然即興になる)、話の展開を二択で選んだりする。
ストーリー的にもアドリブが多いようで、扉の影で舞台を伺う大王がくすくす笑い出したりしていた。
ラストも2種類あって、無作為に選ばれた客と後藤ひろひとのじゃんけんで決めていた。




こう書くと面白そうだし、実際に笑えるんだけど、「選択する」という初めての作業についてはとまどうことがあった。
大体、選択を決定するための情報が客に与えられないまま選択を迫られることが多い。
「『朝食で全員普通のパンだけど一人だけにこっそりジャムパンを与える』と『全員牛乳だけど一人にだけこっそりコーヒー牛乳を与える』
さあどちらにしますか?!」
   と、いきなり言われても困ってしまう。
 
作る側は多分「客をストーリー展開に参加させる」ことだけを考えているので、こちらは気分で選べばいいんだろうけど、それにしても何か選択の決め手になる基準が欲しい。
たとえば「カレーを一口食べたら、ジャムの味がするのとコーヒー牛乳の味がするのとどっちがより嫌か?」
と言ったような、すごくどうでもいいこと。
要するに、選択する過程でも楽しく悩みたいのだ。

話は横道にそれるけど、最近、NHK教育の『ハーバート白熱教室 サンデル教授のJUSTICE』にちょっとはまっている。
政治哲学の講義なのだが、学生との対話を多く用いる形式で、そこでは観客である学生に質問を投げかけ選択をさせることが多い。
「あなたは狭いトンネルを運転していて、作業員が道路の目の前に落ちてきたとする。車を止める時間はない。直進すれば、作業員に衝突して殺すことになるが、急ハンドルを切り対向車線に突っ込めば、スクールバスに衝突し、少なくとも5人の子供を殺すことになる。何が正しい行いなのか?」
といった調子。
別に自分が選択したからと言って講義内容が変わるわけではないのだけれど、
選択することについては、悩む要点がはっきりしている分こちらの方が方がPiperよりも面白かった。

『THE LEFT STUFF』に話を戻して。

選択は強制ではないし、一般の観客として楽しむ分には別に差し障りはない。
お客が出したお題が良ければ盛り上がるし、しょぼければしょぽいなりに出演者渾身のフォローを楽しめる。
俺が見たときは「以下の三つの音楽ジャンルのうちでどれが最も優れているかを決めなさい」というテーマで七人全員が討論させられていた。
音楽ジャンルは客から募集するのだが、それが「レゲエ、演歌、ヨーデル」にきまり、まず「そもそもヨーデルは音楽ジャンルといえるのか?」で一悶着があって大笑いだった。

役者さん達の良い仕事見せていただいて、なかなか満足の舞台だった。帰りに協賛企業の新発売のガムもらったし。

ただ、他の公演がどんな状況だったのかが気になってしまうなあ~・・・。




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by k_penguin | 2010-04-16 22:01 | エンタ系2(ライブレビュー) | Trackback | Comments(6)
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Commented by ふわ at 2010-04-18 22:40 x
お久しぶりです。
なるほどー、他の公演はそんな風だったのかー。
本日、夜公演を観てきたのですが、朝食は「一人だけコーヒー牛乳」で、選ばれた人は腹筋さん。
グループ分けのお題は「ワンワン」「にゃんにゃん」など、繰り返す日本語で、「ゾクゾク」「ツルツル」「ひそひそ」の3組に分かれました。
大変面白かったのが、一人取り残された山内さん(これも、客席によって選ばれた)に質問するために選ばれた人。
群馬から来た女性で、満を持してという感じで挙手し、実に見事な盛り上げ方をしてくれました。
最後のじゃんけんは、ご本人曰く「たった2回だけ」という大王の負け。ラストもそれに添っての幕切れになりました。(多分、シメのセリフが変わったんだと思います)
「レゲエ」「演歌」「ヨーデル」のディスカッションも聞きたかったなぁ。
Commented by k_penguin at 2010-04-18 23:10
ふわさん、お久しぶりです。
この作品は他の公演が気になっちゃいますね。
DVD予約しなかったこと、ちょっと後悔しています・・・。
全公演の中で、より抜きに面白く出来たところだけをつぎはぎにしてくれたら、
絶対買うんだけどなあ。

ワタシが見たときも起きたら一人なのは山内さんでした。
でも、質問相手に選ばれたお客さんは、すごく元気よく手を挙げていた割にあがり倒していました。
朝食はコーヒー牛乳で、竹下宏太郎さんでした。

大王負けバージョンは気になりますねー。
ワタシの時は勝ちバージョンだったのですが、どんでん返しの後
「さんざん人を笑いものにしておいて、都合が悪くなると焼き払おうとする」
みたいなこと言われちゃいましたよ。
Commented by ふわ at 2010-04-20 17:09 x
あ、そのどんでん返しが気になります。
火焔放射であっさり全部灰に、とはならないんですね。(そりゃ、そうか)
大王が負けた回は、メンバーが扉から全員逃亡するところで終わり、その後旅支度をした大王が現れ、「私は『責任者』としか書かなかったから良いけど、署名をした皆さん、彼らの復讐に気をつけて」みたいなことを言って終わりでした。
多分、どんな選択をしても大筋は変わらないんだと思いますが、台本がほぼ白紙状態の部分があるわけだから、大変なことだと思いました。
蓮舫のごとき流ちょうさで、一人取り残された山内さんを翻弄した女性(from群馬)が、わが家では一番人気でした。
いや、申し訳ないけど、インパクトは一番でしたもの。
観客参加型だと、こうやって素人さんの方が印象強くなってしまうことも、あるんですねー。
Commented by k_penguin at 2010-04-20 21:39
>署名をした皆さん、彼らの復讐に気をつけて」みたいなことを言って終わり
 うそ~ん、マジ?!

私が見た回は、全員焼死・・・と、見せかけて、
実は7人(+責任者)の方が研究者で、
マジックミラーと見せかけた素通しのガラスの向こうで演技しつつ、客を観察していた、
というオチ。
7人は白衣を着て再度あらわれ、大王とともに
観察結果を学者的に語り合い、7人をもてあそんだ客の悪口を言い、
結局、馬鹿を集めても馬鹿なことしかやらない、みたいな内容のない結論に。

実は客の方が観察されていた、というオチは同じだと思っていたのに、
これは意外。

群馬の女性、見たかったなあー。
けっこう回によって当たりはずれ、ありそうですね。
Commented by ふわ at 2010-04-20 23:37 x
きゃー!
そっちの結末の方が、ちょっとヒネリが効いてて、良いじゃないですか!
こっちは妙にあっさりした印象でした。
こりゃーやっぱり群馬の彼女のGJが光るわけだなー。
じゃんけんが強いという大王なので、火焔放射のラストの方が、メインのオチなんでしょうね。
本当の最後は、いつものように歌で終わったんですが、その前のとりあえず「お話はこれでオシマイ」の暗転で、全く拍手がおこらずにちょっと不思議でした。
もしかしたら、そちらのラストを知っている人が「まさかこれで終わりじゃないだろう」と拍手しなかったのが影響してるのかしら。
DVDは、色々なパターンの場面が特典映像として入ってるみたいです。
でも、時間が無くて会場予約が出来なかった。
予約しなくても、手に入れられるかなー。
Commented by k_penguin at 2010-04-21 00:30
確かにワタシが観た方が、大王らしい結末ですね。
でも、客の悪口をぐちぐち言われたので、結構むっとしました(別に焼き払うこと決めたのは多数決じゃないのに)。
でも、みんなが歌って踊れば、なんとなく「ま、いっか。笑ったもんな。」という気分になれます。それが大王。

DVD、会場予約特典のタンブラーが別に欲しくなかったからスルーしちゃったんだけど、
こうなってくると気になりますねえ。
ネット予約くらい出来るだろうと思うのですが・・・。