『カールじいさんの空飛ぶ家』   

PIXARの最新作。原題はシンプルに『UP』。
78歳のじじいが主人公とのことで、ディズニー、つか長編アニメとしては珍しいな、と思っていたら、『クリスマス・キャロル』が一足先に上映されていて、今年の冬のディズニーはじじい2連発なのだった。
『クリスマス・キャロル』は最新の技術によるホラー系ゲームのような超絶リアルの映像でお子様達を恐怖のズンドコ節にしているらしいが、こちらの試写会はあまりお子様の姿はなかった。大人が楽しめる作品という感じか。

予告CMなどでは、泣けることを売りにしているような感じがあるのだが、大泣きするような作品ではなかった。
最初の15分ほどで、カールとエリーの出会いから、結婚、そしてエリーの死まで一気に語られる(回想シーンとして入るのではなく、話が時系列になっているのだ)。
モノローグも入らずカールはほとんど喋らないが、効果的なカットをうまくつなげているので、エリーがカールにとって大切な人であったことがよく伝わり、じんわりくる。後ろの席の人は早くも鼻水をすする音を立て始めた。

しかしカールじいさんが独り身になったとたん、話の雰囲気はぱきっと変わり、家の立ち退きを迫る工事人達との賑やかなやりとり、そしてじいさんがすっかり頑固じじいになってしまっていることが嫌みなく提示される。
じいさんはでかい滝の近くに隠居してエリーを思ってしんみりしていたいのだが、
図らずも空の旅のパートナーになった少年ラッセルと、目がいっちゃってるでかい鳥ケヴィンがそうはさせてくれない。
ラッセルはどうやらジジョーある家庭のようだし、そんなこと言ったらケヴィンも母子家庭ぽいのだが、話はそっちの方には深入りしない。
だってケヴィンを狙うじじいで(なぜかスゴイ金持ちの)冒険家マンツ出現。感傷に浸っている暇はない。
家が飛び、家を引っ張ってみんなが走り、でかい飛行船でアクションに、高性能バウリンガル装備の、人語を解する犬たちも登場。盛りだくさんで大忙し。
犬たちは非常に「犬らしい」振る舞いをする。犬を飼ったことある人も楽しめるんじゃないかと思う。

スピーディながら、押さえるべきところはびしっと決めるストーリー展開、これだけ盛りだくさんで100分を切る情報処理の確かさは感動の一言に尽きる。
(欲を言えば、スタッフロールの後かなんかにマンツのその後をオチ的にちょっと提示して欲しかった)。

絵としては、雲の表現も美しいが、家の中の小物や調度品の存在感の良さが特に印象に残った。
特に説明はなされていないのに、1つ1つの物が何かエリーとの思い出にまつわる品であろうことが感じられる存在感をもっている。作品の公式ページでは、主要なキャラクターに「カールじいさんの家」が入っているが、それも頷ける。

近年のPIXARのうちで一番の出来かも。


カールじいさんの空飛ぶ家 [DVD]




・・・と、文句のつけようのない作品ではあるのだが、ちょっとだけ妙に引っかかる感じが残る。

それは何かとよーく考えてみるに、どうも、最初のエリーとの過去を語るシーンが良すぎてそこで満足してしまい、ラッセルやケヴィンなどの新しいお友達を受け付けにくい心もちになるようだ。
新しい人生のスタートの話なのに、これはちょっとまずい。
じいさんはラッセルや犬たちと飛行船にくらす新しい人生に入り「Adventure Book」は新しい2冊目に入る。
それは素晴らしいことだと分かってはいるが、しかし始まったばかりのいろいろ波乱もありそうな人生に比べ、王道の泣き要素をもつ第1の人生の方が客としては引きつけられてしまう。

宮崎駿が、追憶のシーンだけで満足してしまった、とのコメントをしていたが、それは同時にこの作品の問題点をも指摘していたのだ。

PIXARはディズニーに買収され、おかげで作る予定の無かった『TOY STORY3』は来年公開される。キャラクター商品展開ができるTOY STORYをデイズニーは作って欲しいのだ。
そんな新しい人生に入ったPIXARが、新しいスタートを切りきっていない作品を作るってことは・・・

なーんて考え出すときな臭い気分になってしまうので、そこはあっさり割り切って楽しみましょう。
それも大人の楽しみ方。
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by k_penguin | 2009-11-27 14:23 | エンタ系 | Trackback | Comments(10)

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Commented by smashige at 2009-11-29 19:07
そういえば宮崎駿以外のアニメって、ほとんど見てないですねー。。
って、そんな人結構多そうな気がしますが。。
原題は「UP」ですか。あちらの方は何ともシンプルな題名をつけるものですね。。
ホームページをチェックしましたが、それプラス白ペンギンさんのお話で十分満足してしまいました。。

最近、ボクは宝島社からシャーロックホームズのグラナダTV版がDVDブックとして毎月出ているのにはまっています。
昔、NHKで吹き替えでやっていたやつです。今回の宝島社のやつはNHK版を取り除くことで、2話1050円という低価格を実現していて、吹き替えというのが嫌いなボクとしてはとっても有り難いです。
Commented by k_penguin at 2009-11-29 19:31
そういえば、ジブリ以外の日本のアニメって、「オタク向け」のイメージがありますし、
ディズニー始め外国アニメは「子供向け」のイメージがありますよね。
まだまだアニメは一般的ではないのかも知れません。

シャーロックホームズは、あまり記憶にないです^-^;
最近はBSでときどき刑事コロンボ見ています。
昔は何の疑問も抱かなかったけど、刑事訴訟法かじっちゃった今見ると、
・・・コロンボの捜査って、無茶苦茶。

でも、キャラクターはやっぱり魅力的なんだな。
 
Commented by smashige at 2009-11-29 22:36
ああ、コロンボ、懐かしいっすねー!
ピーターフォーク、良かったなー!
宝島さん、次はコロンボしてくれないかなー。。
ボクも子供の頃大好きで、よく見ていました。
本も買いましたよ。あー懐かし。
Commented by k_penguin at 2009-11-30 01:18
あ、ワタシも本買ったことあります。
ピーターフォーク自身が演出している後期は、ちょっと「コロンボ・オン・ステージ」的なとこがあるけど、
それでも犯人の前に唐突に登場するとわくわくしますね。
いいキャラクターです。
Commented by パール at 2009-11-30 19:13 x
カール爺さんから随分と懐かしい流れになってますね。
私はTVで見る分には吹き替えに抵抗がないので、
ホームズの吹き替えの露口茂さんの低い声が
なんかいいなぁと思っていました。
コロンボのパターンは
古畑任三郎に受け継がれていますよね。
古畑も毎週楽しみにしていたのを思い出しました。
Commented by k_penguin at 2009-11-30 23:58
古畑任三郎も人気ありましたね。
ドラマをほとんど観ないワタシは、かなり遅くなってから、再放送でいくつか見ただけですけど、
ゲスト・スターが犯人をどう演ずるかが楽しみの1つでした。
コロンボのゲスト・スターは知らない人ばかりだから気にしなかったけど、
アメリカではみんな古畑見るみたいな感じでコロンボを見ていたのかな・・・。
Commented by smashige at 2009-12-02 10:24
ああ、古畑任三郎ですねー。。
いくつか続けてみたけど、スマップとかイチローとかのスペシャルはなぜか見る気がしなかったなー。。なんでだろ?

ホームズの話、露口茂さんの吹き替えは僕も実は、当時大好きで、今回宝島の奴で見るまでは吹き替えの方が絶対面白いと思っていたのですが、宝島で字幕の奴を一度見ると戻れなくなりました。
やっぱり本物のジェレミー・ブレットの声で観るのが最近はいいと思っています。
Commented by k_penguin at 2009-12-03 21:34
海外ドラマはほとんど吹き替え版から入るから、馴染みがあるのは吹き替えの方だけど、
口の動きと声が一致する本物は「あー、これが本物なんだ」っていう安心感もありますねえ。
コロンボと言えばやはり思い出すのは小池朝雄さんの声ですものね。

小池朝雄さんは、ラジオで朗読した『我が名はアラム』(サローヤン)が良い感じで、
録音したテープを昔よく聞きました。
アルメニア移民のいたずらな少年と、それを取り巻く人情味といたずら心ある親戚のおっさん達の話ですが、声と小説の世界の雰囲気があっていましたね。
Commented by smashige at 2009-12-04 09:30
コロンボの吹き替えもいい味出してましたね。
コロンボの方は実際の声は聞いたことないなー。。(^^;
ラジオですか。うちはテレビがないのでラジオ生活ですが、朗読とかをよくやっている「ラジオ深夜便」の時間は寝ているしなー。
第一、うちの方はAMラジオが入りにくい地形のようで、あんまりきれいに入らないのが残念です。。
Commented by k_penguin at 2009-12-04 20:48
私の母も基本、ラジオ生活です。
地デジ対応のテレビも買ったのですが、なぜかNHKとNHK教育が入らない。

おかげで正月に実家に戻ると必然的にワタシもラジオを聞く羽目になるのですが、
喋りだけで伝えなくてはならないので、テレビよりもトークのクオリティが高いですね。

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